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人間の安全保障学会第15回学術研究大会でJICA緒方研究所の研究成果を発表

2026.01.30

2025年11月8、9日に、「Disasters and Human Security」をテーマに掲げた人間の安全保障学会第15回学術研究大会 が金沢大学で開催されました。JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)からは、峯陽一 研究所長が基調講演を行ったほか、マリアム・アルクバチ 研究員が発表を行いました。

【プレナリーセッション】「Making Local Indicators to Measure Human Security and SDGs: From Miyagi and Aichi to Ishikawa」

「Creating Human Security Indicators to Realize a Society Where No One is Left Behind」と題した基調講演を行った峯研究所長は、人間の安全保障指標作成プロジェクトについて説明。同プロジェクトに参加する高須幸雄国連事務総長特別顧問(人間の安全保障担当)と峯研究所長が代表を務めるNGO「人間の安全保障フォーラム」の取り組みの成果として、書籍『全国データ SDGsと日本:誰も取り残されないための人間の安全保障指標 』と『SDGsと地域社会:あなたのまちで人間の安全保障指標をつくろう! 宮城モデルから全国へ 』が出版され、その英語版をJICA緒方研究所が制作したことも紹介しました。

また、武藤亜子 専任研究員のモデレーションのもと、東北学院大学の山崎真帆准教授、名城大学の宮下大夢准教授、特定非営利活動法人ウィメンズ・アイの石本めぐみ代表理事が発表。日本国内の人間の安全保障の実情を文脈に即して確実に捉えようとする場合、国レベルの共通指標だけでは不十分であることや、指標の作成は通過点であり、指標を作成することで改善すべき領域が明らかになり、活動の焦点が絞れることを示しました。指標を使って宮城県や愛知県の市町村レベルの課題を紹介した後、金沢大学の奥田恒准教授、JICA北陸の富田洋行前所長のコメントを受けて、能登半島地震からの復興を目指す石川県の地域社会の課題にまで議論を広げました。

写真:JICA緒方研究所の武藤亜子専任研究員がモデレーターを務め、人間の安全保障指標について議論したプレナリーセッション

JICA緒方研究所の武藤亜子専任研究員がモデレーターを務め、人間の安全保障指標について議論したプレナリーセッション

写真:基調講演を行ったJICA緒方研究所の峯陽一研究所長

基調講演を行ったJICA緒方研究所の峯陽一研究所長

【セッション】 「Post-Conflict and Disaster Reconstruction」

アルクバチ研究員は、「Women, War, and the Everyday Work of Peace in Yemen」と題し、紛争下のイエメンにおける女性たちの日常的な平和構築活動について発表を行いました。インタビューや現地の女性たちの語りをもとに、制度崩壊の中で女性たちが地域社会の平和と人間の安全保障を支える3つの実践方法を紹介しました。

1)保護としてのケア(Care as Protection)
女性たちは、介護や調停、近隣支援、小規模な生計活動など、日常的なケアを通じて家族や地域を守っています。特に母親たちは、子どもに「平和は家庭から始まる」と教え、思いやりや忍耐、共存の価値を伝えています。アデンでは、香や美容サービスなどの商いを始めた女性もおり、「家族を支える役割ができた」と語っています。こうした活動は、家庭の生計維持にとどまらず、地域の安定にもつながっています。

2)エンパワメントとしての信仰(Faith as Empowerment)
多くの女性は信仰を力の源とし、イスラームの教えを平和と共生のために再解釈しています。女性の説教師(ダーイーヤ)は、「女性への暴力はイスラームの教えに反する」と説き、宗教的価値をもとに共存や尊厳の尊重を訴えています。また、「女性が社会で働くことを禁じる宗教的根拠はない」と語る女性も多く、信仰は女性たちの道徳的支えであり、平和活動を続ける力となっています。

3)連帯としての共同責任(Collective Responsibility as Solidarity)
家族、地域社会、宗教指導者が協力し、女性の平和活動を支えています。ハドラマウトでは、女性団体が連携して長期間閉鎖されていた空港の再開を求めた例があります。また、「誘拐被害者の母親の会」は、拘束された家族の解放を訴える活動を続けており、悲しみを力に変えています。さらに、多くの女性は、兄弟や夫、父親など男性の家族からの支援も得るようになり、女性の平和構築活動への理解が広がっています。

アルクバチ研究員は、これらの実践を「モラル・レジリエンス(moral resilience)」と位置づけ、制度が機能しない状況においても、尊厳と社会的つながりを維持する女性たちの倫理的な生存と静かな抵抗の形であると強調しました。

写真:発表したJICA緒方研究所のマリアム・アルクバチ研究員

発表したJICA緒方研究所のマリアム・アルクバチ研究員

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