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JICA緒方研究所・国際開発学会「開発途上国における働きかたの質」研究部会・共催セミナー「アフリカにおける零細企業のインフォーマリティとダイナミズム:従来の政策は正しかったのか?」開催

2026.02.12

2025年11月11日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は国際開発学会「開発途上国における働きかたの質」研究部会 との共催で、オンラインセミナー「アフリカにおける零細企業のインフォーマリティとダイナミズム:従来の政策は正しかったのか?」を開催しました。JICA緒方研究所の研究プロジェクト「ケニア国ナイロビ市内のスラム地域等の若者に関する研究:社会・経済的孤立および差別に対するコミュニティを超えた収入創出促進政策の効果 」にも関連するテーマとなりました。

冒頭、同研究部会代表である京都大学・神戸大学の高橋基樹名誉教授が開会のあいさつを述べ、「今まで国際開発研究の中で、労働や働き方という問題はあまり注目を浴びてこなかった。経済学の従来の枠組みを超えないと、労働者の気持ちは分からないし、政策をつくっていけないと考え、この研究部会を立ち上げた」と経緯を紹介しました。

インフォーマル企業のダイナミックさを生かす政策を

基調講演では、米デューク大学グローバル問題研究室の日野博之客員研究員(元JICA専門家:ケニア共和国首相府経済アドバイザー)が「Informality and Microenterprise Dynamics in Africa: Rethinking Development Policy」と題して発表。廃棄物集積場で金属くずを集める子どもたちの写真を表示しながら、政府に登録していない「インフォーマル」な仕事でもサプライチェーンの一端を担っている現実を示しつつ、マイクロファイナンス機関によるガーナ、ケニア、ナイジェリアの零細事業者への調査を基にした研究について紹介しました。

同研究は、制度からの自由(Freedom)、人とのつながり(Trust)、コミュニティ内での社会的認知(Social recognition)、リスク回避(Risk management)の4要素を数値化し、事業者のインフォーマル志向とインフォーマルな事業形態が企業の生産性や売上などの成果とどのような相関関係があるか分析したものです。日野客員研究員は、「インフォーマル企業は元来適応力が高く、ダイナミックであり、生産的な相乗効果が存在する。政府はインフォーマルセクターをフォーマル化させたいが、例えば強制的に職場を移動させてフォーマル化したとしても望むような成果にはならない。インフォーマル企業の行動をよく観察し、把握した上で、対象を絞り、エビデンスに基づく政策策定が重要だ」と述べました。

続いて、共同研究者である神戸大学経済経営研究所の濱口伸明教授が補足説明を行いました。同研究では、従来のようなインフォーマルとフォーマルの比較ではなく、対象のほぼ全員がインフォーマルセクターであること、インフォーマル企業の中も多様でコンティニュアムであること、事業者のマインドセットとビジネス手法という2方面からインフォーマリティを捉え、ビジネス成果への直接・間接の影響を検出したことを説明。「インフォーマルなマインドを持った事業者はビジネス手法もインフォーマルだ、という一般化に基づいたフォーマル化政策は成功しない。労働生産性などのそれぞれの要素の相関関係を細かく見る必要がある」と述べました。

写真:米デューク大学グローバル問題研究室の日野博之客員研究員が基調講演

米デューク大学グローバル問題研究室の日野博之客員研究員が基調講演

写真:共同研究者として神戸大学経済経営研究所の濱口伸明教授が補足説明

共同研究者として神戸大学経済経営研究所の濱口伸明教授が補足説明

インフォーマリティをめぐる新しい未来を目指して

続いて、JICA緒方研究所の荒井真希子 研究員がモデレーターを務めたディスカッションが行われました。

まず高橋名誉教授は、「ケニア・ナイロビのソファー製造業者の集積地で調査をすると、彼らは新しいデザインの発明を仲間から隠さず共有していた。“ブラザーフッド”や“フレンドシップ”を重視し、コミュニティ内での社会認知を重視する傾向が見られたため、そういった観点も加えたら新しいデータがとれるのではないか」と述べました。

次にJICAタンザニア事務所駐在経験があるJICA緒方研究所の阿久津謙太郎 研究員は、「“インフォーマリティは企業業績への制約要因となるからこそフォーマル化が必要”という一般的な認識に対して、実証的な疑義を示した意義ある研究だ。アフリカ各国でJICAが実施している産業開発支援に新たな視点をもたらす」とコメント。その上で、産業開発支援への活用の観点から、事業者のインフォーマルなマインドセットをより簡便に測る方法や、雇用・経済不安が一因となって現在アフリカ各国で広がっているZ世代の抗議行動に関し、どのような対応があり得るかという政策的含意についても質問しました。

写真:コメントした京都大学・神戸大学の高橋基樹名誉教授

コメントした京都大学・神戸大学の高橋基樹名誉教授

写真:コメントしたJICA緒方研究所の阿久津謙太郎研究員

コメントしたJICA緒方研究所の阿久津謙太郎研究員

JICA緒方研究所の峯陽一 研究所長は、「インフォーマリティが収益をもたらすメカニズムをシンプルに言うと何か?キーワードは『自由』だと思ったがどうか?」と問いかけました。

日野客員研究員は、「インフォーマリティの“自由になりたい”という気持ちを受け入れる必要があるのではないか。インフォーマルという形態はよくない、フォーマルのほうがいい、という従来のバイアスもあり、今までは制度に押し込めるアプローチが行われてきた。それを考え直す必要がある」と応じました。

写真:質問を投げかけたJICA緒方研究所の峯陽一研究所長

質問を投げかけたJICA緒方研究所の峯陽一研究所長

写真:司会・モデレーターを務めたJICA緒方研究所の荒井研究員

司会・モデレーターを務めたJICA緒方研究所の荒井研究員

質疑応答では、研究対象となった3ヵ国を選んだ理由、「信頼」の測り方、フォーマル化を拒む事業主からの国や政府への信頼度、JICAを含めた援助機関への示唆など、さまざまな質問が寄せられました。

最後に、峯研究所長が閉会あいさつで今後の議論の発展への期待を述べ、セミナーを締めくくりました。

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