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田中研究員が世界ラテンアメリカ学会と日本移民学会で南米への日本人移住について研究成果を発表

2026.08.12

JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)で研究プロジェクト「ブラジルへの工業移住に関する研究 」に携わる田中秀一 研究員は、世界ラテンアメリカ学会と日本移民学会で研究成果を発表しました。

南米への日本人移住は国際協力だったのか?移住者の視点から問い直す

2026年5月29日にフランス・パリで開催された世界ラテンアメリカ学会2026年度大会では、「Migration as International Cooperation? Rhetoric in Japan's Emigration Policy and the Migrants' Reactions」と題して発表。戦後日本の南米移住政策において、1960年代以降に日本政府が掲げた「移住は国際協力」という理念を、移住者自身はどのように受け止めていたのかを検証した結果を示しました。

まずパラグアイやボリビアなどへの農業移住者については、当初は現地開発への貢献を志向する声もありましたが、入植地選定や支援体制の不備による苦難から日本政府への不信や反発が強まったことや、その後、各入植地で農業が軌道に乗り、現地の経済発展に貢献したものの、それは国際協力というより生存と自立の結果だったことを示しました。また、ブラジルへ渡った工業移住者への聞き取り調査によると、移住理由は知人の影響、キャリア上の閉塞感、海外への憧れや冒険心といった個人的要因が中心であり、自らを国際協力の担い手と認識してはいなかったことが分かりました。田中研究員は農業移住者と工業移住者を比較しつつ、両者の場合とも、国家が描いた「国際協力」としての移住政策と、日本人移住者が実際に抱いていた実利的・個人的な動機との間には大きな隔たりが存在したことを明らかにしました。

その一方で、移住者たちはそれぞれの目標や生活のために努力した結果として、現地の農業生産や工業の発展を支える役割も果たしていました。本研究は、人々の移動がどのように現地社会の発展につながるのかを考える上で、新たな視点を提供するものです。

世界ラテンアメリカ学会で発表したJICA緒方研究所の田中秀一研究員(右端)

世界ラテンアメリカ学会で発表したJICA緒方研究所の田中秀一研究員(右端)

工業移住者のライフストーリーから見えてきたもの

2026年7月4、5日に立命館大学で開催された日本移民学会第36回年次大会では、「地球の反対側で腕を試す:ブラジルへ渡った日本人技術者たちのライフストーリー」と題して発表。1961年に導入された「工業移住制度」でブラジルへ渡った日本人技術者の移住動機について、24人への半構造化インタビューの分析結果を共有しました。

当時、高度経済成長期だった日本では技術者不足で需要が高かったにもかかわらず、多くの若者がブラジル移住を選択した背景には、知人や家族、教師などから移住の成功話を聞くといった周囲の影響があったこと、学歴主義などで日本でのキャリアへの限界を感じたこと、世界への強い憧れがあったこと、さらには故郷からの脱出願望やオイルショックの不安など、多様な要因があったことを示しました。工業移住者に共通していたのは好奇心やチャレンジ精神であり、必ずしも最初からブラジルを目指していたわけではなく、海外で自らの可能性を試したいという思いが移住を後押ししていたこと、また妻の後押しが移住決断に大きく影響した事例も確認され、工業移住制度が当時の日本の社会・経済情勢や若者文化を反映するものだったと述べました。田中研究員は、今回のインタビュー対象者が工業移住者の中でも定着やキャリア形成が比較的順調であったグループであることから、工業移住全体の真相を探るためには、より大きなサンプルを抽出する必要があると今後の課題も挙げました。

写真:日本移民学会第36回年次大会で発表したJICA緒方研究所の田中秀一研究員

日本移民学会第36回年次大会で発表したJICA緒方研究所の田中秀一研究員

また、JICAによる海外移住事業について知りたい方は以下からご覧ください。

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