大野シニア・リサーチ・アドバイザーが韓国で共創や日本の開発協力の役割について発表
2026.08.20
JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の大野泉 シニア・リサーチ・アドバイザー(政策研究大学院大学名誉教授)は、韓国で開催された学会やセミナーに参加し、知識共創の重要性や日本の開発協力が果たす役割について発表しました。
2026年6月24日には、「Global Transformations and the Way Forward: Implementing Korea’s Fourth Basic Plan for International Development Cooperation」をテーマに掲げた韓国国際開発学会(Korea Association of International Development and Cooperation: KAIDEC)夏季大会(韓国・釜山市の東西大学で開催)に参加。大野シニア・リサーチ・アドバイザーは、韓国開発研究院(Korean Development Institute : KDI)によるセッション「Mutual Gains in Development in Cooperation and Strategic Economic Partnerships」に登壇しました。
韓国国際開発学会でのセッションに登壇したJICA緒方研究所の大野泉シニア・リサーチ・アドバイザー(左から2人目)
「Japanese Development Cooperation in a Changing World: Toward Co-Creative Partnerships in a Multiplex World」と題して発表した大野シニア・リサーチ・アドバイザーは、世界は地政学的分断やグローバルサウスの台頭、主要援助国の支援縮小などを背景に、多様な価値観が共存する「マルチプレックスな世界」へ移行していると説明。その中で日本の開発協力は、自助努力、人間の安全保障、質の高い成長、パートナーシップとキャパシティ・ディベロップメントといった基本理念を維持しつつ、変化する国際環境への適応を進めていることを示しました。
2023年に改定された開発協力大綱では、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序(Free and Open Indo Pacific: FOIP)の推進、グローバルサウスとの共創、民間資金の動員が重視されており、特にODAを触媒として民間投資やブレンデッド・ファイナンスを促進し、グリーントランスフォーメーションやデジタル化、安全保障分野での協力を拡大していることを説明しました。最近の動向として、「進化したFOIP」やイラン紛争によるエネルギー危機への対応、ODAとは別枠の政府安全保障能力強化支援(Official Security Assistance: OSA) にも言及しました。そして今後に向けて、援助から共創への転換、官民や国際機関、グローバルサウスといった多様なアクター間の連携、インパクトをどうスケールアップしていくかという「how」に着目した開発協力アプローチの重要性を挙げました。
同セッションでは、ドイツ開発・サステナビリティ研究所(German Institute of Development and Sustainability: IDOS )のNiels Keijzer氏やKDIのLah Junghyun氏も登壇し、それぞれ、ドイツ政府が進める開発協力改革や、韓国の第4次国際開発協力戦略(2026-2030)について発表しました。それに続き、IDOSのStephan Klingebiel氏がモデレーターを務めるディスカッションが行われ、開発協力に対する国民の理解促進、現地の主体性や能力強化の重要性、民間連携と公益のバランスの在り方など、開発協力機関が直面している課題について意見が交わされました。その中では、2023年に改定された日本の開発協力大綱において、「共創」が強調された背景について、参加者から質問が寄せられました。これに対し、大野シニア・リサーチ・アドバイザーからは、「新興国との知識共創」研究会 での議論も踏まえ、日本自身も人口減少や高齢化などの社会課題に直面する中、開発途上国を含む他国の経験から学ぶことも重要であり、今後の開発協力においては、開発途上国との対等なパートナーシップと学び合いがより重視されるべきであるという考えを述べました。
翌6月25日には、KDIがIDOSと共催したセミナー「Exploring the Role and Responsibilities of Middle Powers in the Future Global Development Agenda」に参加しました(韓国・世宗市にあるKDI本部で開催)。
韓国開発研究院およびドイツ開発・サステナビリティ研究所による共同セミナーに参加
大野シニア・リサーチ・アドバイザーは「Japan’s Role and Strategy in the New Era of Development Cooperation」と題し、地政学的分断や欧米主要ドナーの援助縮小が進む中、日本が新時代の開発協力で果たすべき役割を論じました。開発協力の在り方を巡る国際的な議論や、新興開発パートナーとの知識共創の仕組みづくりにおいて、日本はこれまで培ってきた主要援助国としての実績、援助受け入れ国と供与国の双方を経験した経験、アジアの視点、そして新興開発パートナーとの信頼関係を生かし、未来の開発協力の方向づけを主導すべきだと主張しました。
自立発展を目指すキャパシティ・ディベロップメント、人間の安全保障、長期的な経済構造転換を重視してきた日本型アプローチを改めて評価しつつ、経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development: OECD)開発援助委員会(Development Assistance Committee: DAC)加盟国と非加盟国の隔たりを越え、多様な主体が対等に学び合う「知識共創」の仕組みを構築する必要性を提起しました。また、新興開発パートナーも含む包摂的な国際開発アーキテクチャーの形成に向け、ミドルパワーが結束し、 韓国・ドイツ・日本の連携にも期待を寄せました。
さらに、大野シニア・リサーチ・アドバイザーが参画するJICA緒方研究所の「新興国との知識共創」研究会 によるポリシー・ノートNo.21「包摂的な国際開発アーキテクチャーに向けた知識共創の提案 ―新興開発パートナーと日本の役割― 」の問題意識や提言の概要も紹介しました。
今後の国際開発アーキテクチャーの在り方に関しては、IDOSのKlingebiel氏からは、規範や実現可能な目標を共有し、イシューによって柔軟かつ多元的に連携する「同志国による国際協調(Like-Minded Internationalism)」という考え方も提案されました。
今回の議論を通じて、開発協力を巡る国際環境が大きく変化する中、新興開発パートナーとの知識共創や多様な主体の連携を基盤とした新たな国際開発協力の在り方の重要性が改めて確認されました。JICA緒方研究所は、今後も国内外の研究機関との連携を深めながら、こうした課題に関する研究と対話を促進していきます。
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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