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EADI/IOB総会2026でラウンドテーブル「Circuits of Sustainability – the art of glocal connection in Japan’s Development Cooperation and beyond」を開催

2026.09.16

2026年7月1日、ベルギー・アントワープでEuropean Association of Development Research and Training Institutes(EADI) / Institute of Development Policy (IOB) 総会2026が開催されました。 EADIは、欧州委員会や各国の開発機関とも連携している欧州で最も権威ある開発研究ネットワークで、100を超える研究機関が加盟しています。今次の総会は、開発研究・政策コミュニティーが結集する3年に一度のフラッグシップ会議です。

この会議の中で韓国の西江(ソガン)大学のキム・ソヤン教授が企画・提案したラウンドテーブル「Circuits of Sustainability – the art of glocal connection in Japan’s Development Cooperation and beyond」は、世界的にODAに対する支持が低下する中、ドナー国における国内課題と開発途上国の開発ニーズとをつなげることでいかに持続可能な開発協力の回路構築が可能なのかを、日本の事例を入り口に問題提起するものでした。JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)からは折田朋美 主席研究員と佐藤寛 客員研究員が報告を行い、会場・オンラインあわせて約30人が参加しました。

写真:ラウンドテーブルの登壇者

ラウンドテーブルの登壇者

開発協力の循環型モデルとは

まず、本ラウンドテーブルの問題意識をキム教授が提示しました。世界的に援助疲れやドナー国の内向きな志向が指摘される中、開発協力の持続可能性をいかに確保するかが重要な課題となっており、そのためには開発協力に対する国内の政治的・社会的支持基盤を強化する必要があると考えられるとしました。この問題を考える際の一つの出発点として、日本がこれまで進めてきた「国内と世界をつなぐ循環型の開発協力」に着目し、開発協力を人材・知識・資源が多方向に循環する「サーキット(回路)」として再構成できるのか、という問いかけを行いました。

写真:西江大学のキム・ソヤン教授がラウンドテーブルの問題意識を提示

西江大学のキム・ソヤン教授がラウンドテーブルの問題意識を提示

国内事業が生み出す「グローカルなつながり」

これを受けて折田主席研究員は、JICAの国内拠点の存在とその活動意義、日本国内と開発途上国のつながりの事例を紹介しました。特に日本のODAの特徴の一つである「国内事業」に焦点を当て、研修員受け入れ、市民参加協力、開発教育、自治体・大学・民間企業との連携など、多様なアクターとの広範で具体的な活動を通じて、日本国内と開発途上国との間で人材や知識、価値が循環していることを説明。さらに、国内15拠点のネットワークや国際協力推進員の活動、地域との連携事例を取り上げながら、こうした「グローカルなつながり」が開発協力への理解促進や担い手育成につながり、それがよりよい開発協力と、ひいては日本の開発協力の持続性を支える基盤となっている可能性について論じました。また、「JICA市民参加協力事業を中心とした国内事業の地域の国際化・活性化への貢献度にかかる調査」 にも言及しながら、海外協力隊経験者による地域活性化や、JICA留学生と日本企業との連携などの事例を通じて、開発途上国の開発協力が日本国内の課題解決とどのように結びついてきたのか説明しました。

写真:オンライン登壇したJICA緒方研究所の折田朋美主席研究員

オンライン登壇したJICA緒方研究所の折田朋美主席研究員

開発協力を「循環」の視点から捉え直す

次いで佐藤客員研究員は、日本の社会的背景との関連でJICA国内拠点の存在意義について説明し、日本の開発協力が国内社会との接点をどのように形成してきたのかを歴史的な視点から整理しました。その上で、開発協力を「リターン(還元)」ではなく「サーキット(循環)」として捉える視点を提示しました。また、開発協力を通じて形成される信頼や評判(レピュテーション)が日本社会にもたらす価値に着目し、JICA緒方研究所で実施している研究プロジェクト「ODAレピュテーションの実証研究-信頼構築に対するODA効果可視化の試み- 」の取り組みを紹介しました。

写真:JICA緒方研究所の佐藤寛客員研究員による発表

JICA緒方研究所の佐藤寛客員研究員による発表

新たな開発協力の在り方を展望

これらを受けてキム教授は、こうした日本の取り組みを相対化しながら、開発協力における「グローカル」なつながりを再構想する上での意義を指摘しました。特に各ドナー社会において多様な形で表出しているODAの存在危機については、援助予算削減という事象のみから捉えるのではなく、各国の開発協力政策をそれぞれの国内社会や国内事情にしっかりと根差したものとして理解することの重要性を強調しました。あわせて、日本の事例を援助する側・される側という関係性を超えた文脈などに位置づけて考察することの必要性を指摘しました。

キム教授からは、こうした議論を積み重ねることによって、従来の先進国・開発途上国といった単線的 (linear)な発展感や、他国の利益が自国の不利益になるといったゼロサム的なナショナリズム(zero-sum nationalism)に左右されがちな開発協力の世界観を超え、協力国間のみならず、それぞれの社会や周辺国の多様なアクターを結ぶ多方向的なネットワークを構築していくことの重要性が示されました。キム教授は、それを、ポジティブサム(positive-sum)な世界観に基づく「サステナビリティーの循環回路」として位置づけ、その可能性を展望しました。

これに対してドイツ開発・持続可能性研究所(German Institute of Development and Sustainability: IDOS) のNiels Keijzer上席研究員や英国ケンブリッジ大学のEmma Mawdsley教授らがコメントし、従来の「援助する側・される側」という単線的でゼロサム的なナショナリズムに立脚した枠組みを超えた、国内外の多様な主体が相互に学び合い、価値を共創する新たな開発協力の在り方について議論が行われました。また、日本がこれまで培ってきた国内外をつなぐ取り組みを踏まえながら、人材・知識・資源が循環する開発協力モデルの可能性について考察を深めました。

ODI Global のShiela Page上級研究員やIscte-University Institute of Lisbon のLuis Mah教授などから質問とコメントがあり、フロアからも活発な議論が行われました。特に、近年欧米の開発研究では一つの主流となっている脱植民地主義的な思考枠組み―植民地主義の歴史を背景とする力関係を問い直す視点― と、こうした「国内と世界をつなぐ循環型の開発協力」の在り方、そしてそれが持つ政治経済的な力学関係については、引き続き意見交換が必要だという認識が共有されました。

本ラウンドテーブルを通じて、日本の開発協力を新たな視点から捉え直し、その可能性と課題を国際的な研究・政策コミュニティーとともに検討することができました。

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