シリーズ「日本の開発協力史を問いなおす」7 『開発協力のつくられ方—自立と依存の生態史』
JICA緒方研究所について
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多くの国が他国のために開発協力を行うのはなぜか。本書では、この“不思議”の答えを開発協力のプロセスの中に見いだそうとし、日本を事例に開発協力のつくられ方に着目しています。日本政府、相手国政府、現場の3つの焦点から開発協力の歴史を振り返り、開発協力をめぐる象徴的な出来事を「自立と依存」の視角からとらえようと試みています。
第1部では、戦後賠償からODAへの移行期にあたる1950年代から1965年前後に戦後日本を東南アジアに押し出した力、フィリピン、インドネシア、タイを例にした受け入れ側の体制などを読み解きます。第2部では、1960年代後半から1989年前後にかけてなぜ日本が「援助大国化」できたのか、それが東南アジア諸国に与えた影響、そして同時期に集中したODA批判を分析。第3部では、中国の台頭と日本のプレゼンスの低下が始まる1990年代以降、援助の目的を模索し、自助努力から「人間の安全保障」に至る変化を遂げていった日本の援助理念の根底にあるものを考察しています。さらに、著者はかつて批判にさらされたODAの現場に20~30年の時間を経て足を運び、当時反対派だった現地の人々の声にも耳を傾け、「問題案件」のその後に迫ります。
「援助とは何なのだろう」。これは、JICA長期専門家としてタイのスマトラ沖地震の被災地を回った著者の脳裏に浮かんだ問いでした。ニーズがある人々に必要な物資を届けるという援助のイメージとは裏腹に、援助しようとする国や組織との関係性や状況によって、援助が“つくられている”実態を目の当たりにしたからだといいます。人や組織の相互関係が開発事業の成否を左右するのはもちろん、人々を特定の行動に促す目に見えない“圧力”が重要ではないか。著者は同書を通して、開発協力を取り巻く歴史の大きなうねりを感じながら、開発協力のつくられ方を解き明かそうとしています。
本書は、JICA緒方貞子平和開発研究所の研究プロジェクト「日本の開発協力の歴史」の成果として発刊された書籍シリーズ「日本の開発協力史を問いなおす」(全7巻)の第7巻です。
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