JICA緒方研究所ナレッジフォーラム 「日本の開発協力の歴史と未来」(国際協力70周年記念事業)開催
2024.11.25
日本が開発途上国に対する政府開発援助(Official Development Assistance: ODA)を開始してから2024年で70周年を迎えます。その記念事業として、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、2024年10月21日にナレッジフォーラム「日本の開発協力の歴史と未来」を開催しました。
開会のあいさつに立った田中明彦JICA理事長は、歴史家E ・H カーの言葉「歴史は、現在と過去のあいだの終わりのない対話である」を引きつつ、歴史を紐解くことの重要性を強調。「日本の開発協力がパートナー国の自助努力と人材育成を重視したことは、諸外国からの信頼を得ることにつながり、それが日本の国際的な影響力の基盤となっている」と歴史を振り返りました。
また、2023年に改定された開発協力大綱では、人々が恐怖や欠乏から免れ、尊厳を持って生きられる状態をめざす「人間の安全保障」という考え方が日本の開発協力の根本にある理念として位置づけられ、またさまざまなアクターが解決策を共に創る「共創」という考え方が導入されていることを紹介。「これらは開発途上国の人たちの声をよく聞き、その意思を尊重するという点で、『信頼』、『自助努力』、『人づくり』といった日本の国際協力の良き伝統の延長線上にある」と述べました。
開会のあいさつに立った田中明彦JICA理事長
基調講演では、国際大学の加藤宏
副学長(JICA緒方研究所シニア・リサーチ・アドバイザー)が、日本の開発協力の歴史と未来について、日本の国益と国際公共益に着目しながら考察しました。
国際大学の加藤宏副学長が基調講演
開発協力が果たした日本の国益への貢献として、戦後の賠償やアジア諸国との関係修復、高度経済成長期の後押し、1970年代の資源・食料確保、80年代以降の貿易摩擦による対米関係の調整手段、90年代の先進国としての責任遂行、2000年代の日本経済社会の活性化などを挙げました。さらに、日本社会と人材が世界に出ていく機会の提供や対日理解の改善など、重要な外交手段として有効に機能してきたとし、開発協力は「未来への投資」だと総括。ただし、開発協力の成果と有効性についての検証と説明は不可欠であり、歴史研究の重要性を指摘しました。
また、国際公共益への貢献として、開発協力と民間の活動によってアジアの成長に大きく寄与したとし、円借款を中心としたインフラ支援、援助・投資・貿易が三位一体となった民間連携、政策と結びついた援助モデルをつくってきた日本の強みを評価しました。ポストSDGsなどの新しい枠組みが議論される中で、日本は主導的な立場になれるとし、「有効な開発協力のモデルの探求と、政策と結びついた方法論の深化が望まれる」と期待を寄せました。
JICA緒方研究所の宮原千絵
副所長がモデレーターを務めたパネルディスカッションでは、研究プロジェクト「日本の開発協力の歴史
」の成果をまとめた書籍シリーズ『日本の開発協力史を問いなおす
』の著者やJICAの実務者が今後の開発協力の在り方をさまざまな視点から議論しました。
モデレーターを務めたJICA緒方研究所の宮原千絵副所長
『国際教育協力の系譜—越境する理念・政策・実践
』を執筆した早稲田大学の黒田一雄
教授(JICA緒方研究所客員研究員)は、日本の国際教育協力が外交関係の改善や平和への貢献を目的とした政治的な営みであり、グローバルガバナンスから影響を受けたり与えたりした相互作用の関係だったことを同書の執筆を通じて発見したと説明。「これからの日本の国際協力は、国際社会に規範を提示するなど、グローバルガバナンス構築に貢献し、国際公共財の提供者を目指すべき」と提言しました。
『開発協力のつくられ方—自立と依存の生態史
』を執筆した東京大学の佐藤仁
教授(JICA緒方研究所客員研究員)は、同書で80年代に問題があるとされた協力のその後をフォローしたところ、問題にされ続けたものはほとんどなかったと述べ、時代の変化とともに開発協力の見られ方や実態、評価が変わると指摘。「戦後経済復興や安全保障政策の一部とされてきた開発協力を、これからは国民運動の一部として活性化していく必要があるのではないか」と論じました。
『開発協力のオーラル・ヒストリー—危機を超えて
』を執筆したJICA緒方研究所の峯陽一
研究所長は、「現地のカウンターパートの語りにより日本の開発協力の歴史を再構成したオーラル・ヒストリーの手法に大きな手ごたえを感じており、これからも継続していきたい。オーラル・ヒストリーの試みは 、プロジェクト・ヒストリーシリーズ
とセットで、教材として教育現場で活用できるのではないか」と提案しました。また、「日本の開発協力において、“自助努力支援”という経験の蓄積は消すべきではない」と強く訴えました。
JICAガバナンス・平和構築部の岩間望審議役は、現場で開発協力に取り組んできた実務者の視点から、相手国の歴史や課題の経緯を理解し、日本の国益と被援助国の国益、国際益の重なる領域を探し、公的支援が必要な形で介入してソーシャルイノベーションに取り組んでいくことの必要性を指摘。また、開発機関として培った信頼やネットワークを生かし、これまで必ずしも開発と直接関係してこなかった専門機関や市民社会・財団といったパートナーと連携を深め、新たな共創の領域を広げていくこと、並行して、今回の歴史研究の成果も踏まえ、信頼の蓄積に地道に取り組んでいくことの重要性に言及しました。
『国際教育協力の系譜—越境する理念・政策・実践』を執筆した早稲田大学の黒田一雄教授
『開発協力のつくられ方—自立と依存の生態史』を執筆した東京大学の佐藤仁教授
『開発協力のオーラル・ヒストリー—危機を超えて』を執筆したJICA緒方研究所の峯陽一研究所長
実務者の視点から議論したJICAガバナンス・平和構築部の岩間望審議役
後半の議論の中では活発な意見交換がなされ、特に、開発協力を国益と国際公共益を統合する観点から捉え直す必要があること、世界的もしくは地域的なプラットフォームを形成し日本が牽引するためにも国際アジェンダに資する研究を行い発信すること、若い世代に対して成長産業である国際協力の姿を伝えていく必要があることなどが指摘されました。
本フォーラムの動画は、以下からご覧になれます。
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
scroll