『The Last Mile in Ending Extreme Poverty』
極度の貧困(1日1.25ドル未満で暮らす生活)のなかで生活する人々の割合は、1820年時点では世界人口の80%を占めていましたが、いまや20%を下回っています。極度の貧困を2030年までに解消するという目標は、達成可能のようにも思われます。
しかし、この残り20%を世界からなくすという最後の課題(the last mile)を解決するには、経済成長のみならず、平和と雇用、レジリエンス(強じんさ、回復力)が必要であることを、本書は述べています。
2015年9月、国連は2030年を目標年とする「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択し、その目標には「極度の貧困(1日1.25ドル未満で暮らす生活)の撲滅」が明記される見通しです。本書は、SDGsへ向けた大詰めの議論が進むなか、2015年7月20日に刊行されました。本書は、JICA研究所とアメリカ・ブルッキングス研究所の共同研究から生まれ、JICAの加藤宏理事とブルッキングス研究所の研究員2名が編者を務めました。JICAからは加藤理事をはじめ、JICA研究所の細野昭雄シニア・リサーチ・アドバイザー、峯陽一客員研究員、島田剛招聘研究員、室谷龍太郎職員氏が寄稿しています。
この25年間、極度の貧困の解消は、世界中で急速に進みました。しかし、完全に撲滅するにはなお、多くの課題に直面しています。紛争は複雑化・長期化し、不況にもかかわらず構造改革は進まず、気候変動による自然災害が増加しています。
編者は、冒頭、次のように述べています。「当然のことながら、経済成長はこれまで、貧困を大幅に削減するための原動力になってきました。すなわち貧困対策の推進は、成長の追求と同義だったのです。しかし本書では、多くの最貧国で今日、迅速かつ持続的な貧困対策を推進するうえで必要な経済成長以外の3つの要素に焦点を当てています。平和、雇用、そしてレジリエンスです」
scroll