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No.25 Promoting livelihood diversification among rural farming households in Kenya: What role does farm forestry Farmer Field School play?

  • #ディスカッション・ペーパー

ファーマー・フィールド・スクール(FFS)は、参加者がフィールドでの試行錯誤を通じて新たな農業知識を獲得し、多様で変化する諸条件のもとで適応的な意思決定ができるようにする農業普及アプローチである。FFSに期待される効果のひとつは農村世帯の生計多様化であり、これは気候変動の影響に対する世帯のレジリエンス強化に繋がる重要な要因と考えられている。本研究では、2017年から2020年にかけてケニアの乾燥・半乾燥地(ASAL)地域にある2つの郡で実施された農林業FFSプログラムを事例として、農林業FFSプログラムが農村世帯の生計多様化に及ぼす効果、および、生計多様化と気候変動の影響による経済的損失との関係を分析した。近年、ケニアのASAL地域の農村世帯は、気候変動によって悪化してきた度重なる旱魃に見舞われている。本研究では、FFSプログラムの卒業生と非卒業生を含む344戸への世帯調査、キーパーソンへのインタビュー、およびフォーカスグループディスカッションにより情報収集を行った。収集データは、定性分析するとともに、傾向スコアマッチング分析によって定量分析し、世帯におけるFFS卒業生の有無と生計多様化の関係を評価した。また、世帯の生計多様化と気候変動影響による損失との関係を重回帰分析によって分析した。傾向スコア分析の結果、FFS卒業生のいる世帯は、もし仮にFFS卒業生がいなかったとした場合の仮想的ケースと比較して、収入の種類や販売する農林畜産物の種類において多様化が進んでいることが示された。さらに重回帰分析の結果、世帯が扱う農林畜産物の多様性は、最近発生した旱魃や作物病虫害による損失と逆相関していることが示された。これらの結果は、農林業FFSが世帯の生計多様化を促し、旱魃や作物病虫害という気候変動の脅威に対する世帯のレジリエンスを高めるのに有益であることを示唆している。

キーワード:ファーマー・フィールド・スクール、生計多様化、干ばつ、ショックに対する家計の脆弱性、傾向スコア法

著者
佐藤 一朗、 久保 英之、 Josiah Mwangi Ateka、 Robert Mbeche、 望月 彩葉
発行年月
2024年9月
言語
英語
ページ
40
関連地域
  • #アフリカ
開発課題
  • #農業開発・農村開発
  • #自然環境保全
  • #気候変動対策
研究領域
地球環境