No.8 Deposit Dollarization and Financial Inclusion: Evidence from a Household Survey in Cambodia
JICA緒方研究所について
JICA緒方研究所について
預金のドル化は、開発途上国で長く継続して見られる現象である。 本稿では、2017 年にカンボジア国立銀行 (NBC) と JICA 研究所 (当時) によって実施されたカンボジアの家計調査のデータを使用して、家計の自国通貨と外国通貨それぞれに対する預金行動の要因を考察した。本稿では、途上国でのドル化の重要な側面として、自国通貨預金と外国通貨預金の選択と金融アクセスとの相関関係を考慮した預金の通貨選択の実証アプローチを開発し、金融のドル化の説明によく使用されるポートフォリオ選択モデルが、カンボジアの家計のデータに適合するかどうかを検証した。その結果、ポートフォリオ選択モデルがカンボジアの預金通貨の選択をうまく説明しきれないことを確認した。しかし、家計のインフレ率と為替レートに対する期待、および現地通貨の減価予想と預金の通貨選択の間には相関があることがわかった。これは、安定したインフレ率は、現地通貨での預金行動を促進することを示唆している。
さらに、所得水準の上昇は、自国通貨と外国通貨の両方の通貨での預金行動の増加と関連しているが、収入の増加の限界効果は、農村地域あるいは低所得世帯の自国通貨の預金行動に対してより大きくなっていることがわかった。この結果は、農村地域の経済発展を促進することによる金融包摂が、現地通貨での預金の促進を促進することを示唆している。さらに、中央および東ヨーロッパ諸国からの先行研究の結果とは対照的に、カンボジアでは若年齢のコホートは年配のコホートよりも現地通貨の預金をもっている可能性が低いことがわかった。したがって、自国通貨を促進するには、自国通貨を使用することの重要性に対する若者の認識を促進することを目的とした政策が重要であると考えられる。
キーワード:ドル化、金融包摂、外国通貨預金、家計行動、二項プロビットモデル
scroll