Laos-China Infrastructure Cooperation: Legitimation and the Limits of Host-country Agency
本論文では、一帯一路構想のもと、インフラの連結性強化のために中国からの協力を受け入れたラオスの主体性の役割と限界を考察しています。フィールドワークによる観察、半構造化インタビュー、学術文献に基づき、同国の一帯一路構想に対する主体性には能動的な要素と受動的な要素の両方が混在し、一貫していないことが明らかとなりました。具体的には、ラオスはビエンチャン・ボーテン間の鉄道やその他の開発事業において中国との連携を積極的に開始したものの、交渉や実施の段階では消極的かつ黙従的な態度をとりました。ラオス政府は、中国との事業から得られる利益をより高めるため、現実的な事業形成を試みていますが、実際の進捗状況や成果を判断するのは時期尚早と言えます。こうした主体性の在り方は、国内および国外の動向によって生じていると考えられます。国内的には、小国であるラオスが一帯一路構想を受け入れたのは、国内のエリート層が自らのパフォーマンスを正当性するために推し進めた結果であり、一党独裁の政治体制と社会的な主体性が不十分なため、事業の方向性を修正する能力が制限されているのが現状です。国外的には、中国に代わるインフラ構築のパートナーが不在であるため、ラオスの開発に向けた選択肢はさらに限られたものとなっています。今後を見据えると、国外のパートナーがどのような役割を果たしていくのかが重要と言えるでしょう。
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