シンガポールでインド太平洋の平和と開発に関する研究プロジェクトの成果を報告

2024.04.25

2024年2月7~8日にかけて、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の高原明生シニア・リサーチ・アドバイザー(東京大学教授)、北野尚宏客員研究員(早稲田大学教授)、志賀裕朗客員研究員(横浜国立大学教授)、麻田玲客員研究員(山口大学講師)、折田朋美上席研究員、今井夏子リサーチ・オフィサーが、シンガポールで研究プロジェクト「インド太平洋の平和と開発の新ダイナミクス-途上国の中国への対処-」の研究成果を発表しました。

シンガポール国立大学南アジア研究所との共催ワークショップで研究成果を発表

2021年7月から開始したこの研究プロジェクトでは、フィリピン、ラオス、バングラデシュ、スリランカ、ウズベキスタン、セルビア、ザンビアを事例としてとりあげ、中国の台頭に伴い地政学的な重要性を高めるインド太平洋諸国の、中国をはじめとした対大国政策における自律性に着目して分析しています。

7日のシンガポール国立大学南アジア研究所(NUS-ISAS)との共催ワークショップでは、共同研究者であるマレーシア国民大学のチェン・チュイー・クイック教授も加わり、研究成果を発表しました。NUS-ISASからは2人の研究者が南アジアにおける地政学的な安全保障の動向について報告し、議論しました。会場では約20人が参加し、「事例国は中国との関係を戦略的に構築しているのか」 、「中国の経済力が低迷し始める中、中国の小国に対するアプローチは変化しているのか」といった質問が投げかけられ、活発な意見交換を行いました。また、8日には、南洋工科大学ラジャナトゥナム国際問題研究所とシンガポール国立大学東アジア研究所を訪問し、研究成果を発表しました。

高原シニア・リサーチ・アドバイザーは、研究対象の各国の対中国政策における自律性の態様を、国内政治、経済、平和と開発、グローバルな国際関係、地域レベルの国際関係の5つ観点から分析するための「5要因モデル」についてを解説し、北野客員研究員は最新の中国援助推計について、志賀客員研究員は開発協力大綱の改定と政府安全保障能力強化支援(OSA)の最新動向について報告しました。続いて、麻田客員研究員はスリランカで実施した対中認識調査の結果について、今井リサーチ・オフィサーはバングラデシュを事例としたメディア分析の結果を報告しました。

これらの報告会において、参加者からは、「小国側は大国との関係を長期的かつ戦略的に構築しているのか、それとも経済的な機会を見据えて、その都度判断し、適切なパートナーを選んでいるのか?」といった質問や、「連結性は経済と安全保障に直接関わるため、東南アジア諸国や南アジア諸国は地域内だけではなく国際社会との連結性強化も狙っている。域内諸国間での地政学も重要」といった意見も出されました。

本研究プロジェクトの成果は、海外の研究分担者7人が執筆した事例論文と、高原シニア・リサーチ・アドバイザー他、JICA緒方研究所の4人が執筆した論文の合計12本からなるジャーナル特集号(Journal of Contemporary East Asia Studies )として公開されています。ぜひご覧ください。

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