No.185 Currency Choice in Domestic Transactions by Cambodian Households: The Importance of Transaction Size and Network Externalities
JICA緒方研究所について
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ドル化した経済では、金融部門や企業部門での金融ドル化が観察される場合が多いが、実物ドル化や決済ドル化が家計部門に及んでいる場合もしばしば観察される。日常的な取引の際、家計が自国通貨に代えて外国通貨を使用している。
本稿は、家計による取引通貨の選択に影響を与える要因について、全国的に実施されたカンボジアの家計調査データを使って分析を行った。調査では、各家計に対して所有財産(6種類:土地/家屋、家具/家電、バイク/自動車、業務用及び個人用の機器、家畜/家禽、農業用及び個人事業用の資材/在庫)の現在価格、当該財産を売却する際の代金希望受取通貨(自国通貨か外国通貨)について聞き取りを行っており、そのデータを利用した。
分析の結果、全ての財産種類において取引額が大きくなるほど外国通貨をより選ぶ傾向があることが分かった。ただし、銀行口座を保有する場合は、取引額の影響は緩和された。自国通貨利用に伴う取引費用が銀行口座サービスの利用によって縮減されるためと考えられる。このほか、支出全体の中で外国通貨での支出割合の高い家計ほど外国通貨をより希望する傾向がみられ、また、通貨利用のネットワーク外部性、すなわち支出に外国通貨をより多く使うコミューンに居住する家計ほど外国通貨をより希望する傾向も確認された。いずれも財産種類に関係なく共通に見られた。
家計部門の自国通貨利用促進のためには、自国通貨利用に伴う取引費用を外国通貨に対して相対的に引き下げることが重要と考えられる。
キーワード: ドル化、通貨選択、取引費用、家計調査データ
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