キャリアインタビュー 第4弾!

2023年3月24日

JICAで働くスタッフは、そもそもなぜJICAに入り、どのようにして現在に至り、何を思って働いているのでしょうか?将来国際協力を目指す方への参考に、インターンの猪原が突撃インタビューして参りました!今回は第4弾です。JICA東京を出て、お話を伺ったのはJICA筑波次長の柴田さん。
舞台監督の夢をあきらめ、「ODAの舞台監督になりたい!」と志した柴田さん。 国際協力への興味のきっかけと、アフリカ地域での活躍ぶりとは…?

~大学での学びとJICAに入構するまで~

◆なぜJICAに入構されたのでしょうか?

高校2年の冬休みに見た新聞記事がきっかけでした。地球温暖化で海水面が上がって、東京が水没しかけている様子を描いた合成写真を見て、衝撃を受けました。気候変動が人類を脅かす深刻な問題であるなら、それについて学び、取り組みたいと思いました。
大学は教養学部で、気候変動や途上国の環境問題について勉強していました。「地球温暖化を止めるにはCO2排出を減らす必要があり、そのために開発を抑制しなければならない。けれども、途上国では貧困が深刻な問題で、CO2を排出してでも社会経済開発を進めないといけない。先進国から途上国に対して、『貧乏なままでいいからCO2を減らして』とは言えないよね」という問題意識を持つようになりました。そして、貧困解決ができなければ気候変動も止められないと思い、開発協力と政府開発援助に関心を持つようになりました。その一方で、高校の頃から演劇に興味を持っていたので、大学では学生劇団の舞台監督としての活動に没頭していました。芸術的才能が無く舞台監督の夢はあきらめましたが、「ODAの舞台監督になります」と採用面接で述べて、JICAに入りました。

~JICA入構後のキャリアについて~

グランドキャニオンにて。留学中にアメリカ大陸を車で横断!

◆JICA入構後はどのような業務に携われましたか?

主にフランス語圏アフリカと環境管理の2つに関わり、自分の専門分野としてきました。JICA入構からこれまでの29年間で、アフリカ31か国、世界78か国を訪れています。
最初の部署でフランス語圏アフリカへの専門家派遣を担当したのがスタートでしたが、大学時代に学んだことを基礎に、入構5年目にJICAの長期研修制度を利用し、アメリカの大学院で環境政策と環境経済学を2年間勉強し修士を取りました。

大学院を卒業し、帰国して約一か月後にモロッコ事務所に赴任することになり、30歳の誕生日に勤務がスタートしました。当時、フランス語は自己紹介程度しかできなかったのですが、3年間個人教授を受け続けて、帰国後に準1級を取得するほどになりました。もちろんフランス語だけではなく、現地のプロジェクトの実施管理や専門家の支援に従事し、交渉や問題解決の経験も積みました。

アフリカのきれいな街プラットフォーム設立会合でのプレゼンの様子(モザンビーク・マプト)

コンゴ民主共和国でエボラ検査キットを贈呈!
お相手は、野口英世アフリカ賞受賞者のムエンベ教授

   
その後、新設されたJICAのアフリカ部の初代スタッフとして約3年間勤務し、緒方貞子理事長のイニシアティブで始まった平和構築・復興支援の一つである、チャドのダルフール難民キャンプホストコミュニティ支援を担当しましたが、治安悪化で事業撤退という苦い経験もしました。
実はこの頃、同様に緒方理事長の旗振りで始まったコンゴ民主共和国での事業が発展し、現地に事務所を開設することになりました。そのため、2007年にアフリカ部の事務所立ち上げ調査団の一員として約10日間現地に滞在し、事務所の物件や備品の準備や、レストランなど生活環境の情報収集をした経験もあります。

アフリカ部の後、地球環境部の担当者、立ち上げに関わったコンゴ民主共和国事務所の所員、セネガル事務所の次長を務めた後で、地球環境部環境管理グループの課長に就任しました。この時、アフリカと環境がクロスする取り組みとして、2016年にナイロビで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD6)で、アフリカのごみ問題とSDGsのアドボカシーを行うサイドイベントを開催しました。すると、UNEP(国連環境計画)やUN-Habitat(国連人間居住計画)、日本の環境副大臣、横浜市長が参加され、日本政府としてもこの問題に取り組む機運が高まり、アフリカ諸国とこれら機関がごみ問題の知見共有、人材育成、資金動員に取り組む「アフリカのきれいな街プラットフォーム」(ACCP)の2017年4月設立に携わることができました。

その後、縁の深いコンゴ民主共和国の事務所長に就任し、エボラやコロナの流行にも翻弄された激動の4年勤務ののち昨年5月に帰国し、現在(2023年3月)はJICA筑波の次長を務めています。

~日々の業務において、心掛けていること~

日々の業務において心掛けられていることはありますか?

啓発書「7つの習慣」が勧めるように自分の長期目標を持つのはいいことですが、それだけに縛られず、自分が置かれた状況を楽しむようにしています。そして自分の原点を忘れずに、良い波が来たら逃さずつかんで頑張ることが大切だと思います。たくさんの困難を切り抜けて成果を実現した後には、大きな喜びがあります。
また、人間関係はとても重要です。共に働くメンバーが安心感を持って挑戦できるようなチームを作らないといけないと思います。途上国で勤務するときも、信頼関係の構築は一番最初にしなければならないことです。固定観念を持ったり、日本の方針や経験を押し付けたりするのではなく、相手の話を聞き、何を求めているのか理解することが大切です。


報告者より…
今回は、JICA筑波の柴田次長へのインタビューでした。「良い波が来たときに逃さずつかんで頑張る」・・・紛争後の復興支援が上手くいかなかったり、アフリカ地域を中心に様々な経験をされたりした柴田課長ならではの言葉だったように思います。
アフリカ地域への支援だけでなく、TICAD6などで世界・日本への働きかけをしたり、立ち上げに携わったコンゴ民主共和国事務所の所長を務めたりする等、様々な場所で大活躍されていました。まさに「ODAの舞台監督」として、現地の状況を判断して実現するために、一つ一つの仕事への向き合い方や信念のようなものが感じられる、とても引きこまれるお話でした。

市民参加協力第二課 猪原彩美(インターン)