【実施報告】2020年度 教師国内研修 第3回研修

2020年10月13日

 9月6日(日)、教師国内研修の第3回研修を実施しました。第2回研修で、SDGsについての理解を深めた研修参加者10名は、今回初めての対面研修でJICA横浜に集合しました。広い部屋で十分な間隔をとりながら行った研修は、オンラインとは一味違う雰囲気となりました。

【多文化共生について考える】

 まず、参加者が考える「多文化共生」の理想の姿と、その理想に対する児童生徒の現状を話す時間を取りました。多文化共生の理想イメージとして「ありのままを受け止める」「40名全員に個性がありそれを認め合える」「自分だけを当たり前と考えない」などが挙がりました。また児童生徒の現状として「人と比べて上下(優劣)を気にする」「多文化共生を体験する機会が少ない」「自分と仲の良い限られた交友関係を築く生徒が多い」などが挙がりました。また、話し合いを進める中で、「外国につながりを持つ児童・生徒への支援だけではなく、保護者への支援も必要なのではないか」などの意見も挙げられました。

【海外移住資料館見学】

【画像】 次に、日系人や日本人移住者について理解を深めるため、JICA横浜施設内の海外移住資料館を見学しました。研修参加者が事前に考えてきた「日系人、日本人移住者に関して知りたいことや疑問」の回答になるものを探求し、様々な気づきを得たようでした。例えば、移住した背景、移住先での待遇、地域や教育のありかたなどを学んだ参加者は、これらは実際に教室で外国につながる児童・生徒を受け入れる際の参考になるのでは、と気づきを共有していました。

【当事者の声を実際に聞く】

 午後のセッションでは、日系人2名をゲストとしてお迎えし、インタビュー形式で当事者の生の声を聞きました。小学5年生や中学1年生の時にブラジルから日本に移住してきたというゲストから、当時のカルチャーショック経験、学校や日常生活で感じていた気持ちをお話いただきました。
 インタビューでは、参加者から「当時、学校(教師・友達)からしてほしかった支援は何かあるか」という質問があり、ゲストからは「外国につながりを持つ児童生徒だけで集ってしまうと、その中でだけコミュニティを築いてしまいがちになるので、その他の児童生徒とも交流できる機会があると良かったと思う」というお話がありました。
また、「自分と同じルーツを持つ子どもたちに伝えたいことはあるか」という質問に対しては、「祖父母が経験した移住当時のエピソードを積極的に知るようにして欲しい。そして自分のルーツを知って、自分が誰なのかを自信をもって言えるようになるといいな、と思う」といった質疑応答を交わしていました。
 研修参加者は、当事者である方々からのお話を直接聞くことができ、ゲスト2名がどのように困難を乗り越えてきたのかについて理解を深めたようでした。また、実際に学校現場で必要な支援や保護者への支援などについて多くの気づきを得たようでした。

【国際理解教育/開発教育について知りたいこと】

参加者から出された意見のまとめ
左は多文化共生の理想と児童生徒の現状
右は国際理解教育/開発教育について知りたいこと・深めたいこと、困っていること

 次に、研修を通して学んでいくことになる「国際理解教育/開発教育」について、参加者が知りたいことや深めたいこと、または困っていることなどを共有しました。例えば「教科との連携・関連付け」「どう当事者意識を持たせるのか」「様々な手法・実践例が知りたい」などがあり、今後の研修で習得すべき具体的なトピックが整理されました。

【ワークショップ体験】

 最後に、研修のアウトプットとして参加者全員で作成するワークショップ(注1)のヒントにしていただくために、参加型学習教材の一例として「バーンガ」(注2)という異文化体験ゲームを体験しました。コロナ禍の中でそれぞれに距離をとっての体験となりましたが、学習者の気づきを引き出すようなワークショップを実際に体験したことで、参加者の中にイメージが沸いたようでした。

 今回の教師国内研修の中では初めての対面研修でしたが、直接に顔を合わせることでよりチームワークを高めたようでした。今後の研修では、日系社会へのフィールドワーク、日系人が多く在籍する学校、ブラジルにいる日系人などへのオンラインインタビューなどを行い、「多文化共生~困難を豊かさに変えるプロセス~」という研修テーマについて理解を深めていく予定です。

(注1)「ワークショップ」:ここでは参加型学習や体験型学習を促す教材・素材・アクティビティのことをいっています。

【教師国内研修とは】

 教師国内研修は、これまでJICA横浜にて実施していた、教師海外研修の代替研修として本年度新たに実施されることとなった研修です。国際理解教育や開発教育に熱心に取り組んでいる小・中・高の教員のみなさんを対象に、web交流、インタビュー、フィールドワーク等を通して、日本人移民や日系人のことを知り、日本に暮らす日系人や外国人の皆さんの現状・課題を学び、その経験をそれぞれの教育現場で、児童・生徒の皆さんに伝え広げていただくことを目的として実施しています。