教育

JICAの事例紹介

子どもの学びの改善

ミャンマー 初等教育カリキュラム改訂プロジェクト(CREATE)-小学校全10科目の教科書と教師用指導書の開発を支援

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新カリキュラムは児童の好奇心を育てる

これまでミャンマーでは児童中心型教育が促進されてきました。しかし、ほとんどの教科では約20年前に軍事政権下で編纂された教科書に基づいて授業が実施されています。学力試験でも「どれだけ暗記したか」が問われ、子どもの主体的な学びが促される学習環境ではありませんでした。2011年の民政移管に伴い、教育省はカリキュラム、教科書、教員養成・現職教員研修、学力試験(アセスメント)等の制度の包括的改革に着手しました。そこで、JICAは小学校の全学年(1~5年生)、全10科目(ミャンマー語、英語、算数、理科、社会、体育、道徳・公民、ライフスキル、音楽、図工)の教科書と教師用指導書の開発と、全国の現職教員を対象とした導入研修や教員養成課程の研修を組み合わせた総合的な取り組みを支援しています。

JICAの協力により開発された小学1年生の教科書と教師用指導書は、2017年6月の新学期に全国の児童130万人、担任教師6万人に配布されました。今後、2021年までに、小学校全5学年の教科書と教師用指導書を開発する予定です。新しい教科書により、主体的に考え問題を解決する力を全国の児童が身に付けていくことが期待されます。

アフリカ 広域協力 「みんなの学校(School for All)プロジェクト」-教員・保護者・地域住民の協働による子どもの学びの改善、アフリカの「学習の危機」に立ち向かう「みんなの学校」

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学校改善に係る住民集会

2004年にニジェールで開始した「みんなの学校」プロジェクトは、教員・保護者・地域住民の協働により子どもの学びの改善を目指しています。まず、教員・保護者・地域住民が住民集会を開いて匿名選挙を実施し、地域に開かれ、教育改善へのリーダーシップのある学校運営委員会を設立します。次に、人々が子どもの学びの現状をもとに効果的な対応策を議論、活動計画を立案し、教員・保護者・地域住民が自ら様々な教育改善活動を実施します。「みんなの学校」の取組みはニジェール全国1万8千校に普及し、今ではアフリカ(注)の計約4万校に拡がっています。

サブサハラアフリカ地域は、学校に通っていても10歳前後までに基礎的な読み書き・計算ができない子どもが約6割(約9,000万人)を占める「学習の危機」(Learning Crisis)に直面しています(UNESCO、2013/14)。今後、急速な人口増加が見込まれる同地域では、教育の質の低下、留年・退学者の増加が進むこと等が懸念されており、読み書き・計算の習得等、子どもの学びの改善を広範囲に進めるための支援が求められています。

「みんなの学校」プロジェクトは、現在ニジェールとマダガスカルにおいて、国際機関やインドのNGOと連携しながら、教員・保護者・地域住民の協働を通じて子ども達の読み書き・計算能力を向上するための手法(良質な教材、ファシリテーターによる学習指導、補習活動を組み合わせたもの)の開発・普及に取り組んでいます。この手法は開発段階で読み書き・計算能力の向上に成果を上げました。ニジェール国内では3,500校・30万人が算数ドリルを用いた補習活動を始めています。今後更なる普及・発展が期待されます。

(注)セネガル、ブルキナファソ、マリ、コートジボワール、マダガスカル

エジプト・日本教育パートナーシップ(EJEP)-日本式教育を導入した包括的な支援へ

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ギザの小学校で校庭の清掃を行う生徒。共用施設の維持管理を通して、集団生活や共同作業を学びます

エジプトでは24歳以下が総人口約9,300万人の半数を占める一方、若者の失業率は42%(世界銀行、2014)と高く、2011年の政変の一因といわれる失業の解消、ひいては国の安定化に向け、若者の能力強化が求められています。エジプトのエルシーシ大統領は、日本人の勤勉性や規律・協調性はイスラム教の聖典コーランの教えを実践するものと評価し、日本に対し人材育成のための支援を要請しました。2016年2月の訪日時に両国間で「エジプト・日本教育パートナーシップ」が締結され、これに基づきJICAはさまざまな支援を展開しています。

このパートナーシップではJICA初の試みが2つあります。一つは主に基礎教育において、規律や協調性といった学力以外の能力の向上に重点を置き、日本の教育の特色である掃除や学級会等の特別活動を導入することです。もう一つは就学前教育から基礎教育、技術教育、高等教育に至るすべての教育ステージでJICAが専門家を派遣し、資金協力も活用した包括的かつ集中的な支援を行うことです。日本の教育の強みを活用したこれらの支援を通し、エジプトの若者の能力が強化され、エジプトひいては中東地域の安定と発展に貢献することが期待されます。

科学技術イノベーション・産業発展を担う人材の育成

アセアン工学系高等教育ネットワークプロジェクトフェーズ4-アセアンと日本を繋ぐ日本独自のネットワーク型高等教育支援、シードネットが次期フェーズへ

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マレーシア科学大学でのタイ、カンボジア、ミャンマーの学生の様子

アセアン工学系高等教育ネットワークは、東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10か国それぞれの国における工学分野のトップレベルの26大学と、日本の14の支援大学から構成されるアジアに広がる大学ネットワークとして、2001年に発足し、アセアン地域で進む産業構造と企業活動の高度化に対応できるグローバルな工学系人材育成を目指しています。

本プロジェクトでは、大学間ネットワークを活用し、高度な研究・教育実施体制の整備を支援するとともに、メンバー大学と産業界、地域社会との連携を強化しています。奨学金プログラム、共同研究支援、国際学術会議開催等を通して、これまでに1,400名が域内もしくは本邦大学への留学の機会を獲得し、200件以上の共同研究活動が行われています。同プロジェクトは、2018年3月にフェーズ4を迎えます。フェーズ4で新たに始める国際共同教育プログラムでは、メンバー大学が主体となりつつ、本邦大学や他のアセアンの大学とコンソーシアムを形成し、将来的に共同学位等につながる活動や産業界と連携した活動を支援します。従来の国内支援大学、メンバー大学以外の大学も参画可能で、これによって既存のネットワークの強化・拡充が期待されます。

アフリカ型イノベーション振興・JKUAT/PAU/AUネットワークプロジェクト-アフリカのための高度科学技術イノベーション(STI)人材育成

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JKUAT土木工学科水理実験

アフリカ連合委員会は、アフリカ域内の社会開発を担う人材を養成・確保するために域内の高等教育の強化を目指し、2008年汎アフリカ大学(Pan African University、以下PAU)構想を立ち上げました。PAUは5つの各地域(北部、西部、中部、東部、南部)に担当分野を定め、各々ホスト国・ホスト大学・支援パートナー国(Lead Thematic Partner、以下LTP)を設けています。

PAUの東部拠点(以下、PAUSTI)の担当分野は「科学技術イノベーション(Sciences, Technology and Innovation、以下STI)」、ホスト国はケニアと定められ、ホスト大学は競争的な選考プロセスを経てジョモ・ケニヤッタ農工大学(Jomo Kenyatta University of Agriculture & Technology、以下JKUAT)が選ばれ、LTPには日本が就任しました。

本プロジェクトは、JKUAT及びPAUSTIの研究環境整備と能力強化、アフリカ型イノベーションの実践力強化を目的として、2014年6月に開始されました。2018年1月現在、アフリカ40か国から474人を第1~5期生としてPAUSTIの修士・博士課程に受け入れ、既に2期生までの96人が修士号を取得・卒業しており、アフリカ域内の高度人材育成に貢献しています。2018年6月にはPAU初の博士号取得者が卒業予定であり、JKUAT/PAUSTIを拠点としたアフリカ域内全体の更なる高度人材育成・輩出が期待されています。

日越大学修士課程設立プロジェクト-日本とベトナムの協力で、グローバルに活躍する人材を育成

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日越大学2期生の入学式の様子(2017年9月)

日本とベトナムの懸け橋となり、世界で活躍できる人材を育成するために、両国政府の協力の下、日越大学を設立することが決定されました。2016年4月には、日越大学初代学長として、古田元夫東京大学名誉教授が就任し、同年9月に修士課程が開講しました。JICAは日本国内の大学の協力も得て、修士課程の開設準備から運営に至るまで幅広い支援を行っています。

高度化・複雑化する社会の問題を解決し、持続的な発展を実現していくためには、幅広い視野を持った人材の育成が必要です。日越大学では、ベトナムの新たなCenter of Excellence(最高水準の教育・研究・人材育成拠点)として、世界水準の研究大学を目指すと同時に、日系企業を含むベトナムの現地企業のニーズにこたえる実践的な人材の育成を重視しています。

修士課程に6つの専攻(地域研究、公共政策、企業管理、環境工学、ナノテク、社会基盤(注))を設け、学生が自身の専攻科目に加え、文理横断的に科目履修できる仕組みを構築しています。また、日本語教育や日本でのインターンの機会を提供することで、日系企業で活躍する人材の輩出にもつながることが期待されています。

将来的には、日本とベトナムの協力関係をベースに、アジアや世界に開かれた大学として広く学生を受け入れ、グローバルに活躍する人材を育成していく構想です。

(注)2018年度以降、気候変動、グローバルリーダーシップ等の分野で追加開講予定。

ウガンダ共和国 産業人材育成体制強化支援(TVET-LEAD)プロジェクト-ウガンダ民間企業とのWin-winの関係を目指す

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電気科:巻線の実習中の女学生

日本がアフリカで行った最も初期の職業訓練分野の支援である「ウガンダ職業訓練センター」プロジェクト(1968年~74年)において、「ナカワ職業訓練センター(NVTI)」が1971年に設立されました。その後、政治と経済の混乱により援助は約20年間中断されましたが、90年代には再開、指導員の育成に注力した結果、現在ではNVTIはウガンダ随一の職業訓練センターに成長しています。

しかし、NVTI設立から40数年が経過し、ウガンダの社会・経済の大きな変化に伴い、産業人材へのニーズの拡大、多様化、そして高度化に対応する人材の輩出に対応しきれない状況であり、ウガンダ人の若者の雇用機会の確保が大きな社会問題となっています。

こうした背景の中、JICAはウガンダ政府の要請を受け、2015年4月から5年間の予定で「ウガンダ共和国 産業人材育成体制強化支援(TVET-LEAD)」を開始し、自動車科と電気科のディプロマ(準学士)コース及びメカトロニクス分野の在職者訓練コースの設立を支援してきました。本プロジェクトでは、NVTIのマネジメント改善とNVTIによる他の職業訓練機関へのサポート機能の強化を通じて、NVTIがウガンダ国内外の産業人材育成の拠点となりウガンダ全体の職業訓練の質が向上することを目的とします。また、産業界と構築した協同体制を基に実践的なコースを設立することで、民間セクター主導の成長及び日系企業のウガンダ進出の基盤となるビジネス環境整備を促進することも本事業の一つの特徴です。

セネガル日本職業訓練センター組織能力改善プロジェクト-経済成長とともに高まるソフトスキル強化へのニーズに対応

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CEPTで学ぶ訓練生

1984年のセネガル日本職業訓練センター(CFPT)の創設以来、JICAでは30年に渡り、セネガルにおける産業人材育成を支援してきました。1980年代以降、セネガルの労働市場ではそれまでの農業人材に代わり工業人材に対する需要が高まっており、CFPTは不足する工業人材の育成を目的に設立され、経済の成長に伴う産業構造の変化にも都度柔軟に対応しながら、セネガルにおける職業訓練分野の最先端を担う存在としての役割を果たしてきました。

2017年2月には、CFPTにとって4回目の技術協力プロジェクトとなる「セネガル日本職業訓練センター戦略性強化プロジェクト」が開始され、指導員能力の継続的強化やカリキュラムの継続的改善以外にも、これまで脆弱であったPDCAサイクルに基づく継続的な機能改善の体制の改善や学校運営マネジメント能力の強化が図られています。

2017年10月、CFPT校長を含むカウンターパートが来日し、職業訓練の運営・管理に係る研修でトヨタ自動車の製造現場の視察等を通じ、日本の製造技術の礎となる「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を始めとするマネジメント技能とその重要性を学びました。日本の比較優位とも言えるソフトスキルがCFPTに導入され、日経企業始め外資企業が求めるメンタリティを持った人材を輩出することで、10%を超える失業率を抱えるセネガルの雇用状況が改善し、外国資本を更に誘致することが期待されます。

インクルーシブで平和な社会づくりのための教育

パキスタン オルタナティブ教育推進プロジェクト(AQAL)-いつでも、どこでも、誰もが受けられる教育機会を

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プロジェクトで作成された教材の一つである栄養バランスについてのポスター

パキスタンの15歳以上の識字率は57%(UNESCO、2014年)と基礎教育へのアクセスおよび質が非常に低い水準にあります。女性に限定すると44%とさらに低くなり、ジェンダー格差も存在しています。このようななか、基礎教育の普及には現地の状況に柔軟に対応した「ノンフォーマル教育」が必要とされています。

そこでJICAはパキスタン国内の3州と連邦政府所管地域において、1)ノンフォーマル教育を推進する基盤(政策・実施体制等)の強化、2)データに基づくノンフォーマル教育のマネジメントシステムの導入、3)質の高いノンフォーマル教育の提供体制の整備を行っています。具体的には、現地ニーズに合ったノンフォーマル初等教育と成人識字教育のカリキュラム、教科書を開発し、学齢期の不就学児童と成人非識字者に良質な学習機会を提供しています。また、女児・女性の社会参加促進のため、女性が学習しやすい環境づくりと女性の生活ニーズに応えるよう、カリキュラムに健康、栄養と美容、生計管理、母子保健、各種公共機関へのアクセスなどの項目を加えています。このような学習機会を通して、女性たちが自信をつけ、積極的に家族や社会の問題に関心を示し、社会進出が一層促進されることが期待されます。

モンゴル 障害児のための教育改善プロジェクト(START)-モンゴルの障害児が学校に通い、質の高い教育を受けられるように

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知的障害児を対象とした特別学校の様子

モンゴルでは、子どもたちの発達の遅れや偏りを早期に発見し発達支援を行う体制が整っていないため、障害の発見が遅れて、必要な支援を受けられない子どもたちがいます。また、障害があることが分かっても、ニーズに合った教育を受けることができず、就学に困難を抱えている子どもも少なくありません。

本プロジェクトでは、パイロット地域において、教育・文化・科学・スポーツ省及び労働・社会福祉省と連携し、障害の早期発見・介入の体制を整備するとともに、教員をはじめとする関係者の能力強化を支援します。これにより、モンゴルの子どもたちの「教育へのアクセス」と「教育の質」の改善に寄与します。

「教育へのアクセス」の向上という課題に対しては、障害児の「教育的ニーズ」を正しく把握するためのアセスメントツールの開発と、乳幼児期から学校卒業後までを見据えた発達支援体制の構築を行います。「教育の質」の向上という課題には、知的障害児に対する指導力の向上をめざし、現地や本邦での研修などを通じ、首都ウランバートルの特別学校や通常学校の先生の能力強化を行います。また、様々な障害を持つ児童のニーズに合った教育効果の検証活動をおこないます。これら活動を通じて得られた知見は、セミナーを通じての共有や、学校のカリキュラムに反映させるなどの制度面への反映もおこなっていきます。

このプロジェクトを通じてインクルーシブ教育の実現を目指すモンゴル全土に、「ともに生きる=共生」の意識が育まれ、一人でも多くの障害児が学校に通えるようになることが期待されます。