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JICA地球ひろば主催「国際理解教育/開発教育指導者研修」開催報告

2021年3月8日

2021年2月6日(土曜日)、国際理解教育/開発教育指導者研修(後援:日本国際理解教育学会)の一部として公開セミナー「ジブンゴト化で世界とつながる」をオンラインで開催しました。株式会社 Ridilover/一般社団法人リディラバ代表 安部敏樹氏による基調講演に続いて、ミニレクチャーと研修参加者代表による授業実践事例の紹介のセッションも行いました。

ミニレクチャー「国際理解教育/開発教育に身近なリソースを活用する」

講師:中央大学文学部教授、日本国際理解教育学会長 森茂岳雄教授

森茂先生は、まず、国際理解教育や開発教育の授業を作る際に必要となるのは、学習者の思考を刺激することであると述べられました。続いて、学習者の主体性を喚起するために、魅力的なリソースや教材をどう活用するかという視点で、JICAが持つ豊富なリソースとその活用法について、具体的にご紹介いただきました。特に、生徒や子ども向けの教材としてのリソースに加え、指導者が授業作りの際に有効に活用できる資料もご紹介いただき、参加者からは、すぐに活用できるものを知ることができてよかったという声が多く寄せられました。
※森茂先生の資料からはJICAの教材に直接アクセスできます。ぜひご利用ください。

授業実践事例紹介&講評

ミニレクチャーに続き、本研修に参加された先生方を代表する4名の方に、自らの授業実践事例を発表していただきました。
この授業実践事例は、本研修において、「私たちと世界のつながり 〜持続可能な社会のジブンゴト化〜」をテーマに国際理解教育学会のアドバイザーの方々からの助言・指導を得つつ、作成した学習指導案によるものです。
学習指導案作成の過程において、添削やアドバイスを担当していただいた大津和子先生(北海道教育大学名誉教授、日本国際理解教育学会元会長)の講評とともに、各発表者が作成した学習指導案および関連資料を以下にご紹介します。他の教員の皆さまも早速授業に活かしていただけそうなヒントが満載です。ぜひご覧ください。

分科会1

仙波先生 発表資料表紙

発表者 仙波 千浩 氏 (宇都宮市立宮の原中学校)
教科/科目:総合的な学習の時間(3年)
単元名:暮らしを見つめよう!~SDGs for Utsunomiya~

●大津先生による講評
仙波先生は、中学校3年生の総合的な学習の時間で、「暮らしを見つめようSDGs in宇都宮」という単元を実践されました。授業づくりに当たっては、途上国の子どもたちの暮らしを取り上げて、児童の共感的理解を深めました。例えば、水運びをする子どもたちの暮らしとSDGsとのつながりを考え、学校に行けないということが、たくさんの問題に繋がるんだということを生徒達は気づいていきました。更に生徒たちは、新聞や本などからSDGsへの理解を深めて、最後にはポスターを作成して後輩に発信しました。
仙波先生は、教師5年目でこの研修に参加されました。指導案作成のプロセスでは、学習活動はねらいを達成するために有効でなければならない、つまり活動ありきのいわば活動主義に陥らないこと、そして自分ごとにするには、「胸が締め付けられるほど考えさせられる発問、これが大変重要だ」ということを気付かれました。 研修に非常に意欲的に取り組まれた様子が伝わってきました。

分科会2

発表者 石塚  和洋氏 (新潟青陵高等学校)
教科/科目:総合的な探究の時間(2年)
単元名:未来予創図 プラン:「それって持続可能?私たちの「責任」を考えよう」

●大津先生による講評
石塚先生は、高校2年生の総合的な探究の時間における単元、「それって持続可能なの?私たちの責任を考えよう」を実践されました。本時では、レジ袋の是非について議論したのち、生徒の自主的な取り組みから始まって、全校規模に広がったユニクロの「服の力プロジェクト」の振り返りを行ないました。そして、大量の衣類が廃棄されていることなどに着目して、企業に対する提言を考えるとともに、自分たちはどのようなことに責任を持って行動したら持続可能な社会づくりに貢献できるのか?についても考えました。授業での学びを企業との連携を通じた活動につなげ、自己と社会のいわば変容を目指している点にSDGsを生かした総合的な探究の良さが表れていると思います。

分科会3

発表者 脇田 佐知子 氏 (名古屋市立植田東小学校)
教科/科目:総合的な学習の時間(5年)
単元名:食とわたしたち~地球的な視野で食について考えよう

●大津先生による講評
脇田先生は、小学校5年生の1年間を通しての大単元「食と私たち。地球的な視野で食について考えよう」の中で、2学期の小単元「地域のお悩み解決プロジェクト〜食品ロスを解決しよう」に取り組まれました。本時の授業において、小単元の1時間目では、生徒たちは同年代の子どもの写真や動画を通じて、世界の飢えの問題を知った上で、食品ロスの問題が自分達とつながっているということに気づいていきました。そして、地域のお店がどんなことに困っているのかを予想し、お店の手助けをするためにアンケートを取り、その結果を元に地域のお店の問題について、その解決策を生徒自身が考え、それぞれのお店に届ける、といった活動を行ないました。小学生が身近な食から食品ロス問題を考え、地域とのつながりの中で学べる汎用性の高い実践であり、発達段階に適したカリキュラムマネジメントだと思います。

分科会4

中村先生 発表資料表紙

発表者 中村 祐哉 氏 (熊野町立熊野第一小学校)
教科/科目:社会科(6年)
単元名:世界の未来と日本の役割〜ラオス18番目のSDGs〜
(国際社会における「本当に必要な支援とは何か?」を問う構想型授業の構築)

●大津先生による講評
中村先生は、5年生の社会科「私たちの生活と工業生産」、6年生の社会科「世界の未来と日本の役割」、この2つをラオスの不発弾の問題とで繋げた授業を構成されました。2年間の授業を通じて、批判的に考える力、そして未来像を予測して計画を立てる力の育成を目指しました。これはまさしくESD(持続可能な開発教育)が目指している資質・能力でもあります。中村先生の実践の中で、「ラオスが示す18番目のSDGsは世界の取り組みとしてふさわしいのだろうか?」という問いかけはとても斬新でした。児童たちはまずSDGsありきではない、異なる観点から考えることができました。不発弾は世界各国の共通の問題ではないからSDGsに相応しくない、あるいは、SDGsというのは誰も置き去りにしてはいけないのだから、この18番目の目標はSDGsにふさわしいなどなど、この授業で児童は一生懸命考えました。そのことが今後、中学校や高校で学ぶ時によみがえり、さらに考えが深まっていくだろうと期待しています。

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