JICA緒方研究所

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ブルッキングス研究所との共同研究「サミットから解決策へ:グローバル目標達成のためのイノベーション」で執筆者会合

2017年3月21日

JICA研究所は、ブルッキングス研究所とこれまで、効果的な援助のあり方について、3フェーズにわたって共同研究を実施してきました。この度、第4フェーズとして「From Summits to Solutions: Innovations to Achieve the Global Goals(サミットから解決策へ:グローバル目標達成のためのイノベーション)」をテーマとする研究を開始、両研究所は2017年2月13日~14日、米国ワシントンのブルッキングス研究所本部で、書籍発行へ向けた執筆者会合を開催しました。

会合の進行を務めるホミ・カラス氏(左)と加藤理事
会合の進行を務めるホミ・カラス氏(左)と加藤理事

JICAからは、書籍の編者を務める加藤宏理事と、執筆者である審査部の富澤隆一次長、人間開発部の瀧澤郁雄次長、産業開発・公共政策部の馬杉学治課長(当時)が参加しました。加藤理事がセッションのモデレーターを務め、執筆者たちはそれぞれ担当する章について発表しました。ブルッキングス側からはホミ・カラス氏、ジョン・マッカーサー氏、ラジ・デサイ氏がモデレーターとして参加しました。

第14章「Building Statistical Capacity in Developing Countries(途上国の統計能力向上)」を執筆した富澤次長と馬杉課長は、持続可能な開発目標(SDGs)をモニタリングするうえで欠かせない統計とその技術は、途上国では一般的に脆弱であることから技術協力による能力強化やIT活用が有効であること(10年に亘るカンボジアの統計能力向上プロジェクトのほか、ネパールやエジプトにおける統計のIT活用を紹介)、着目を浴びるビッグデータやITを公的統計の元データとして活用しアウトプットを得るには様々な制度的・物理的・技術的な障壁を乗り越える必要があるが、その基盤となるのは統計担当部局と職員の能力向上や業務環境整備であること、統計実務とビッグデータ活用の双方当事者を結び付けることでビッグデータの公的統計への活用促進を図るべきことなどを紹介しました。

富澤次長らは、統計能力のコア・キャパシティが、実践型アプローチ、共同作業、試行錯誤を通じて向上したことを説明し、プロジェクト終了後の継続的な財源の確保や、データの公開などの課題があると述べました。国勢調査など公的統計でのICT、ビッグデータ、イノベーションの活用が、多くの途上国で限定的であることから、研究家と実務家、公共セクターと民間セクターの連携によって、新しい手法の開発やギャップ解消ができるのではないかと提言しました。

セネガルでの保健人材育成への取り組み (写真:今村健志朗/JICA)
セネガルでの保健人材育成への取り組み
(写真:今村健志朗/JICA)

第15章「Unity in diversity: reshaping global health architecture under the SDGs(多様性の中の統合:SDGs時代における国際保健枠組みの再構築)」を執筆した瀧澤次長は、保健分野の課題解決に向けて多くの新たな約束(コミットミント)が生まれ、当事者(アクター)も拡大するなか、保健分野での協調や世界的なガバナンスのあり方について検証しました。

瀧澤次長は、SDGs達成のためには、アクターのますますの多様化、相互理解に基づく包摂的(インクルーシブ)な関係が必要であり、保健分野での国際的なガバナンスの変革が求められていると指摘。一つの有効事例として、2030年までにユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(注)の達成を目指す援助協調枠組み「UHC2030」を挙げ、これにより、新たに生まれたさまざまな国際的な取り組み(グローバル・ヘルス・パートナーシップ:GHPs)の協調を促進できるのではないかと考えていると述べました。

今回の議論や編者による総括を踏まえて、書籍の内容の修正や追加が行われます。書籍は、共同研究の最終成果として、2017年秋にもブルッキングス出版会から出版される予定です。

(注)すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる、との意味。

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