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ブルッキングス研究所と書籍『Breakthrough: The Promise of Frontier Technologies for Sustainable Development』出版記念イベントを開催—大野シニア・リサーチ・アドバイザー

2022年2月14日

2021年12月9日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)とブルッキングス研究所は、書籍『Breakthrough: The Promise of Frontier Technologies for Sustainable Development』の出版を記念したオンラインシンポジウム「Breakthrough: Harnessing technology for a better future」を共催しました。

医学、農業、再生可能エネルギー、金融、自然保護といったさまざまな分野の専門家が執筆した全12章からなる本書は、今後10年以内に持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)を達成するために、いかに革新的技術を利用して開発分野に急速な変化を促せるか、その方法を探っています。本書で取り上げられている技術は、いずれもSDGs関連の成果に直接関連しており、世界の多くの人々や地域に影響を与えられる大規模な変化をもたらす可能性があります。2019年にBrookings Institution Pressから出版された書籍『Leave No One Behind: Time for Specifics on the Sustainable Development Goals』のフォローアップとなるもので、ブルッキングス研究所持続可能な開発センターのホミ・カラス・シニア・フェロー、同センターのジョン・W・マッカーサー・ディレクター、JICA緒方研究所の大野泉シニア・リサーチ・アドバイザーが編者を務めています。

ブルッキングス研究所持続可能な開発センターのホミ・カラス・シニア・フェロー

同シンポジウムでは、冒頭JICA緒方研究所の牧野耕司副所長によるビデオメッセージが放映されました。2010年に初めて書籍『Catalyzing Development:A New Vision for Aid』を共同で出版して以来、JICA緒方研究所とブルッキングス研究所が戦略的パートナーシップを築いてきたことを紹介し、共同研究の成果として6冊目となる書籍の出版に祝意を述べました。

JICA緒方研究所の大野泉シニア・リサーチ・アドバイザー

続いて、大野シニア・リサーチ・アドバイザーとカラス氏が書籍の内容について議論。まずカラス氏は、「共同研究プロジェクトを立ち上げた当時、SDGsを達成するには、従来通りの取り組みでは不十分だと私たち全員が感じていた。そしてこれまでの10年間の取り組みの中で、活用できる技術が本当にあるのかどうか、疑問に思い始めていた」と振り返りました。それに対し、大野シニア・リサーチ・アドバイザーは、「うれしい驚きが二つあった」とコメント。まず一つは、これまで指摘してきた課題、例えば深刻な貧困の罠、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、食糧不安、紛争と難民、都市、女性による金融と現金給付へのアクセスなどに取り組むための幅広い先端技術を今回の書籍で紹介できたこと、そしてもう一つは、各章の執筆者として、社会起業家やベンチャー投資家、技術革新に取り組む開発分野の実務家や研究者など、多様なバックグラウンドを持つ熱意ある専門家が参加してくれたことを挙げました。そして、「本書は、より良い未来のために革新的な技術を活用することが広く共有されたビジョンであり、能力と意欲のある多くの専門家の行動を促すことができることを示すものだ」と述べました。

また、「新技術を最大限活用できる課題は何か?」とカラス氏から質問された大野シニア・リサーチ・アドバイザーは、ワクチンおよび医薬品開発、再生可能エネルギーのコスト削減、新決済システム、レジリエントな スマートシティー、アグリテック(農業×技術)、バイオテクノロジー、森林保全のための衛星による監視技術、自然災害予測、人工知能を使用した人道支援など、さまざまな可能性を挙げました。

続いてカラス氏は、「本書を読んでよく分かったことの一つは、技術の変化は非常に複雑であり、特に10年という長期間にわたって予測するのは難しいということ。本書で紹介された技術とその活用は、どれも順風満帆に進んできたわけではなく、大きな前進と後退があり、過度の期待と失敗を繰り返してきた。時に人々はテクノオプティミスト(技術楽観主義者)とテクノペシミスト(技術悲観主義者)に分けられることがあるが、本書を読んだ人はみな、テクノリアリスト(技術現実主義者)になれるだろう。新しい技術とその活用によって可能になることがあり、同時に、技術だけで全ての課題を解決できるわけではないことも理解できるはずだ」と語りました。

パネルディスカッションに参加したジョン・W・マッカーサー氏(左上)、ブライト・シモンズ氏(右上)、レスリー・ゴー氏

15人の共著者が各章を説明した動画が上映された後、マッカーサー氏、執筆者の一人で世界銀行グループのレスリー・ゴー・シニアテクノロジーアドバイザー、mPedigree Networkのブライト・シモンズ社長によるパネルディスカッションが行われました。モデレーターを務めたマッカーサー氏は、革新が進む技術や構想する未来についてパネリストたちと議論を掘り下げ、イベント参加者にも質問や意見を求めました。その一つとして、「持続可能な開発を推進するため、地方自治体などのコミュニティーが新技術を活用した効果的な事業を選ぼうとするとき、助けとなる包括的な指標とツール を開発していくことが重要ではないか」というコメントが挙がりました。シモンズ氏は、「最近では、どんな種類の技術であっても、既存の技術に組み込んで使えるかどうかが技術開発の成功の鍵と見なされるようになってきた。どんな技術も単体では問題を解決できないため、今後も技術を他の技術とつなげることができるかが重要」と述べました。

書籍『Breakthrough: The Promise of Frontier Technologies for Sustainable Development』は2022年1月にBrookings Institution Pressから出版され、以下のリンクから無料でダウンロードできます。また、同シンポジウムの動画も以下のリンクからご覧になれます。

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