国際開発学会第33回全国大会でJICA緒方研究所の研究成果を発表

2022.12.22

国際開発学会第33回全国大会が2022年12月3、4日の2日間、明治大学駿河台キャンパスにて、対面およびオンラインを併用して開催されました。今年のテーマは「グローバル危機にどう立ち向かうべきか—紛争、食料危機、飢餓」。JICA緒方研究所の研究員らもそれぞれの研究成果を発表し、活発な議論が行われました。

途上国における海外留学インパクトに関する実証研究

セッション「教育」では、萱島信子シニア・リサーチ・アドバイザー、杉村美紀客員研究員(上智大学教授)、黒田一雄客員研究員(早稲田大学教授)、北村友人客員研究員(東京大学教授)、梅宮直樹氏(上智大学教授)が、JICA緒方研究所の研究プロジェクト「途上国における海外留学のインパクトに関する実証研究-アセアンの主要大学の教員の海外留学経験をもとに-」について報告しました。

この研究プロジェクトでは、カンボジア、インドネシア、マレーシア、ベトナムの主要10大学の教員に質問紙調査(約3,300人が回答)とインタビュー調査を実施しました。その結果、いずれの国でも教員の留学が大学の発展に大きな影響を与えてきたこと、近年の高等教育の国際化で教員の留学の意義が変化しつつあること、留学先国によってインパクトが異なることなどが分かりました。

さらに、国別の事例として、梅宮教授と萱島シニア・リサーチ・アドバイザーがインドネシアのバンドン工科大学における量的・質的調査に関する分析結果を報告。留学経験が教員の活動に多くの点で正のインパクトを及ぼしていること、異なる国から帰国した教員たちが国際的なネットワークを活用し、国際的な活動を展開していることなどを、事例を交えて紹介しました。

コメンテーターからは、ハイブリッド型教育の展開や留学のインパクトの国内への波及効果などについて言及があり、活発な議論が行われました。

発表を行う萱島信子シニア・リサーチ・アドバイザー

事例を紹介する梅宮教授

在外事務所による重複する制度的環境への対応

伏見勝利研究員は、一般口頭発表(英語)セッション「Aid Organization, Economic Growth and Poverty」に登壇し、「二国間開発協力機関の在外事務所による重複する制度的環境への対応に関する研究」の途中成果発表を行いました。在外事務所スタッフへのインタビューを通じて、本国と受け入れ国の二つの制度的環境下におかれた在外事務所では、組織の仕事の仕方(organisational practice)を表面的(ceremonially)に実践することで、本国のルールに従いつつ受入国の制度、文化、規範に適応している点を明らかにしました。表面的な仕事の実践は、通常避けるべきだと考えられていますが、重複する制度的環境下で事業を行う在外事務所にとっては、こうした行為がセーフガードとしての機能を果たしていると主張しました。

適応的平和構築:21世紀における持続的な平和への新しいアプローチ

研究プロジェクト「持続的な平和に向けた国際協力の再検討」の最終成果である学術書籍「適応的平和構築: 21世紀の持続的な平和への新たなアプローチ」の発刊前に、その一部の成果が国際開発学会のラウンドテーブルで発表されました。紛争の文脈に応じた適応的平和構築のアプローチと、シリア、パレスチナ、東ティモール、モザンビークの紛争における適応的平和構築の実践の事例について、それぞれ武藤亜子上席研究員、立山良司氏(防衛大学校名誉教授)、田中(坂部)有佳子氏(一橋大学講師)、ルイ・サライヴァ研究員が報告。討論者を務めた窪田悠一氏(日本大学准教授)、伏見勝利研究員、さらに会場からも質問が挙がり、現地の声に耳を傾けることの重要性など、活発な議論が交わされました。

南スーダンにおける全国スポーツ大会参加者から見たスポーツと女性

企画セッション「ジェンダーと開発」では、JICA緒方研究所の研究プロジェクト「スポーツと平和・開発に関する研究」に基づき、古川光明氏(静岡県立大学教授)が「南スーダンにおける全国スポーツ大会参加者から見たスポーツと女性」をテーマとした研究について報告しました。コメンテーターや会場からは、南スーダンにおけるスポーツの位置付け、選手たちの出自との関係性、女性がスポーツを継続する理由、男性の意識の変革などについて質問が寄せられ、有意義なセッションとなりました。

南スーダンで開催されたスポーツ大会に参加した女性たち(photo:久野真一/JICA)

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