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英文書籍『Cambodian Dollarization: Its Policy Implications for LDCs’ Financial Development』発刊セミナー開催

2024.01.11

2023年11月10日、カンボジア国立銀行(National Bank of Cambodia: NBC)とJICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、カンボジア・プノンペン市内のホテルで書籍発刊セミナーを共催しました。

本セミナーは、JICA緒方研究所の研究プロジェクト「カンボジアにおける自国通貨利用促進に関する実証研究 」の研究成果として、JICA緒方研究所の奥田英信 客員研究員(帝京大学教授)とNBCのChea Serey総裁が編者を務めた英文書籍『Cambodian Dollarization: Its Policy Implications for LDCs’ Financial Development 』が2023年9月にRoutledgeから発刊されたことを記念して行われたものです。本書は、近年に急速な経済・金融発展を遂げたカンボジアにおけるドル化の実態と構造を包括的に明らかにした最初の学術書です。

左から、讃井一将JICAカンボジア事務所長、Chea Serey NBC総裁、Chea Chanto NBC名誉総裁、谷内一智公使、Sum Sannisith NBC副総裁

会場には約150人のカンボジアの関係省庁や大学関係者が来場したほか、約700人がオンラインで参加し、多くの関心を集めるセミナーとなりました。

会場にも多くの関係者が来場

冒頭、JICAカンボジア事務所の讃井一将所長とNBCのChea総裁から開会あいさつが行われました。讃井所長は、NBCとJICA緒方研究所と約10年にわたる共同研究において関わった研究者への多大なる貢献について謝辞を述べました。Chea総裁は、カンボジアのドル化の状況の説明やコロナ禍におけるドル化の不安定性を踏まえ、自国通貨を促進することの重要性についての所見を述べました。

開会あいさつを行うNBCのChea Serey総裁

つづいて、奥田客員研究員が、本書が出版された背景、特筆すべき貢献、今後の研究の展望について発表しました。本書で利用されているデータはNBCとJICAによるカンボジアの全州をカバーしたドル化に関する初めての大規模調査から得られたものであることのほか、本調査から明らかになったこととして、カンボジアのドル化は従来考えられていたほど単純な現象ではなく見方によってさまざまな構造を持つこと、そして本書ではカンボジアのドル化の実態を踏まえてリエル(自国通貨)の使用拡大に向けた具体的な政策提言を行っていると説明しました。政策提言の例として、カンボジアのドル化は金融システムの発達と一体化しているため、金融システムが発達すればするほどドルが使われるようになるという特徴があり、リエルの使用を促進するためには、リエルの使用を前提とした金融システムの整備が必要であること、またカンボジアの経験は同様の問題を抱える多くの開発途上国にとって有益な情報を提供していることを述べました。

その後、JICA緒方研究所の相場大樹 客員研究員(JICA専門家)、NBCのLay Sok Heng氏(Director, Economic Research and International Cooperation Department)とChey Sovvaney氏(Deputy Director, Economic Research and International Cooperation Department)がそれぞれ執筆した家計、企業、銀行のドル化に関するチャプターについてプレゼンテーションを行いました。Q&Aセッションでは、他国のドル化の経験について質問があり、相場客員研究員から他国の経験から言えることとして脱ドル化は慎重に行うべきであること、また自国通貨による金融インフラを整えることの重要性についての所見が述べられました。

左から、JICA緒方研究所の相場大樹客員研究員、NBCのChey Sovvaney氏、NBCのLay Sok Heng氏が参加したQ&Aセッション

最後のパネルセッションでは、NBCのMichel Dabadie氏(Director, Center for Banking Studies)がモデレーターを務め、NBCのKhou Vouthy氏(Deputy Director General, Central Banking Directorate)、JICA緒方研究所のソワンルン・サムレト 客員研究員(埼玉大学准教授)、Nizamuddin Arshad氏(IMF専門家)、In Channy氏(Acleda銀行グループ総裁)がパネリストとして参加し、ドル化による問題、脱ドル化における課題などを議論しました。Khou氏は、カンボジアのドル化は都市部が中心であり限定的であること、また都市部でも徐々にドル通貨からリエル通貨の利用に移行していることを述べました。また、Arshad氏は多くの家計や企業が外国通貨による資産を持たず外国通貨による借入を行っている状況について、金融危機が起きた際のリスクが大きいということを指摘しました。

左から、Micheal Dabadie氏、Nizamuddin Arshad氏、Khou Vouthy氏、In Channy氏、JICA緒方研究所のソワンルン・サムレト客員研究員が参加したパネルディスカッション

セミナーの様子は、Khmer Times、Phnom Penh PostやFresh newsなど、多くの現地のテレビやニュースなどのメディアに取り上げられました。以下のリンクからご覧になれます。

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