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包摂的な平和構築の中心に女性と若者を据えたアフリカのガバナンスを再構想―マケレレ大学でシンポジウム開催

2026.04.20

持続的な平和と成長を実現するには、女性や若者のような社会的に取り残されがちな人々を含んだ、社会全ての構成員を包摂するガバナンスが欠かせません。しかし、アフリカを含む世界各地の社会は、依然としてこの分野で大きな課題に直面しています。

2025年12月9日、“アフリカ型”のガバナンスの未来を探るため、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)、マケレレ大学、野村財団は、「Revisiting African-style Governance: Fostering an Inclusive Society Where Women and Youth can Thrive 」と題したシンポジウムをウガンダのマケレレ大学で共催しました。100人を超える研究者、若手リーダー、女性、学生らが参加し、JICA緒方研究所からはアデム・セイフデイン 研究員、長辻貴之 研究員、今井夏子 客員研究員が登壇しました。

写真:研究者、若手リーダー、女性、学生ら100人余りがシンポジウムに参加

研究者、若手リーダー、女性、学生ら100人余りがシンポジウムに参加

アフリカの人口・ジェンダー革命―アリ・マズルイ氏の考察から

アデム研究員はオンラインから基調講演を行い、ケニアの政治学者アリ・マズルイ氏による「数値主義(大きな数字が価値を持つとする考え方)」の概念や、この概念がアフリカにもたらす重要な意味について述べました。アフリカ大陸の人口構成は世界で最も若く、30歳未満が全体の70%を占めるほか、2050年には世界人口の4人に1人をアフリカが占める見通しです。アデム研究員は、この人口急増は単なる統計ではなく、アフリカに並外れた成長と影響力をもたらし得る戦略的資産であるとしつつ、数の多さ自体が発展を保障するわけではなく、女性や若者の力を引き出し、主体的に活動できるようにするためのエンパワメントこそが不可欠だと強調しました。

アデム研究員はマズルイ氏の思想に基づき、「戦争のジェンダー」「ジェンダーのパラドクス」「段階的な制度変革」という相互に関連する3つのテーマについて言及。歴史的に戦争の最も顕著で持続的な特徴は「男性性」であり、技術革新、フェミニズム運動、女性解放闘争により女性の戦闘参加は拡大したものの、マズルイ氏は「目立つようになっても、力を持てるとは限らない」と警告しており、女性たちが勇敢に戦っても紛争後のガバナンスから排除されることが多かったことを指摘しました。

マズルイ氏が提唱した包摂的ガバナンスへの道筋は、段階的な制度変革(すなわち女性のみを対象とした選挙制度から、ジェンダー中立の制度へと移行するプロセス)を通じて、文化に配慮しつつ徐々に公平性を確保していくことを目指すものです。アデム研究員は、こうした考えを「女性・平和・安全保障(Women, Peace and Security: WPS)」や「若者・平和・安全保障(Youth, Peace and Security: YPS)」といった国際的なアジェンダと結び付け、アフリカのガバナンス、正義、そして平和を支えるのは、単なる「人口の多さ」ではなく、エンパワーされた若者や女性の想像力と主体性であると改めて強調しました。

写真:シンポジウムにオンラインで参加し、基調講演を行ったJICA緒方研究所のアデム・セイフデイン研究員

シンポジウムにオンラインで参加し、基調講演を行ったJICA緒方研究所のアデム・セイフデイン研究員

リスクに直面する若者が平和構築の担い手になり得るか:リベリアでの現地調査から

「The Values and Institutions of Inclusive African Governance: From the Perspectives of Gender, Generation, and Regionality」と題するセッションでは、長辻研究員が共立女子大学の田中(坂部)有佳子 准教授、西南学院大学の淺野塁 准教授との共同研究*について発表しました。リベリアでのフィールド調査結果に基づき、同研究では「危険にさらされている若者」を他者との交流関係や他者への信頼感などの観点で、危険にさらされていない若者と比較してどのような特徴をもつ傾向にあるのかを検証しています。リベリア政府によれば、武装強盗、自警行為などの問題は、元戦闘員と関連しているとされます。その元戦闘員の大半を占めるのが、武装解除・動員解除・社会復帰(Disarmament, Demobilization and Reintegration: DDR)事業実施後に取り残された若者たちであり、社会的・経済的機会の拡大や、公共サービスと司法への公平なアクセスを通じて、この層を平和構築に巻き込むことが重要だと主張しました。

調査では、「寝る場所」「飲酒習慣」「慢性感染症」「内集団への所属」という4つのリスク要因を用いて分析を行いました。その結果、内戦終結から20年余りを経てもなお、脆弱な若者が広く存在することが明らかになりました。長辻研究員は、こうした「危険にさらされている若者」の状況を正確に理解することが極めて重要であり、彼らがコミュニティーに積極的に参加することが新たな人と人のつながりや集団間関係を育み、リベリアの平和構築に寄与する可能性があると強調しました。 

この研究に関するディスカッション・ペーパーは以下からご覧になれます。

*本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費JP24K00214とJICA緒方研究所の研究基金による助成を受けて実施されたもの。

写真:JICA緒方研究所の長辻貴之研究員

JICA緒方研究所の長辻貴之研究員

グッド・ガバナンスとアフリカの伝統的政治的価値をつなぐ―なぜ若者が重要なのか

今井客員研究員は「The Potential of African-style Democracy and Peacebuilding Unleashed by Women and Youth」と題したセッションに参加し、普遍的な原則とアフリカの伝統や文化に根ざした価値を結びつけることで、アフリカがいかに独自のグッド・ガバナンス(良き統治)のモデルを形成し得るのかについて考察しました。

今井客員研究員は、アフリカの伝統的制度がしばしば欧米型の代表的なガバナンスと対比されるものの、コミュニティーへの参加とコミュニティーによる合意形成など、アフリカ社会は独自の民主的特徴を備えていると強調。また、こうした慣行はアフリカにおける正統性、市民性、政治的帰属意識の在り方を体現しており、改めて着目する価値があると指摘しました。

さらに、アフリカのガバナンスをめぐる議論では、単に制度設計を取り上げるのではなく、アフリカ社会に適した政治の在り方そのものを見極めることが重要だと述べました。西洋モデルが個人の代表性を重視するのに対し、アフリカの伝統ではコミュニティーとしての参加や共同責任がしばしば重視される傾向があるとし、持続的で正統性のあるガバナンスを構築するには、こうした独自の価値観を理解することが欠かせないためです。

この文脈の中で、今井客員研究員は若者の包摂が不可欠であり、アフリカ大陸の人口の多数を占め、社会変革の主要な担い手として、若者はアフリカ政治の未来を形作る中心的な役割を果たさなければならないと論じました。

最後に今井客員研究員は、伝統的制度とグッド・ガバナンスは本来対立するものではないとし、アフリカのガバナンス改革は、外部からの介入によって現地の制度を置き換えるのではなく、内部での対話と参加型プロセスを通じて既存の制度を強化していくことこそが重要であり、アフリカのグッド・ガバナンスは文化に根ざした熟議的な対話と若者の参画によって形作られるだろうと結論付けました。

写真:JICA緒方研究所の今井夏子客員研究員

JICA緒方研究所の今井夏子客員研究員

シンポジウムの詳細は、以下のマケレレ大学ウェブサイトをご覧ください。

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