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プロジェクト・ヒストリー『アフリカを緑に―ケニアと日本の森づくり40年の軌跡 半乾燥地での社会林業プロジェクト』出版記念セミナー開催

2026.08.03

2026年6月26日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)と森から世界を変えるプラットフォームは、プロジェクト・ヒストリーシリーズ『アフリカを緑に―ケニアと日本の森づくり40年の軌跡 半乾燥地での社会林業プロジェクト』 出版記念セミナー を共催しました。ケニアを皮切りにアフリカ各国へと広がっていった40年にわたる「緑の国際協力」について、本書の著者らとともに振り返りました。

写真:40年にわたる「緑の国際協力」を本書の著者や関係者とともに議論

40年にわたる「緑の国際協力」を本書の著者や関係者とともに議論

「社会林業」という概念が成し遂げたもの

開会のあいさつに立ったJICA緒方研究所の亀井温子 副所長は、本プロジェクトが単なる植林ではなく住民主体の森林づくりである「社会林業」という試みだったこと、そして技術の追求だけでなく、人・組織・制度づくりを通した相互の信頼関係の上に成り立った協力だったことを特徴として挙げました。本書に登場する故ワンガリ・マータイ氏の思想にも触れ、これまでの40年の森づくりの学びを未来へとつないでいく意義を強調しました。

次に、本書の著者である株式会社タック・インターナショナルの清水正主任調査員が本書を概説。試行錯誤だった40年を振り返り、1985年にケニアでプロジェクトが始まった際に、人々の暮らしを守りながら人口増加と燃料需要増加による森林劣化に対応するため、「社会林業」という概念をもちこむことになったと説明。森林を育てるための技術開発として、半乾燥地という過酷な環境に適した郷土樹種メリアに着目し、育種・育苗の体制を築いた過程や、カウンターパートとなったケニア森林研究所(Kenya Forestry Research Institute: KEFRI)の若手研究者らをオーストラリア留学や日本研修に送り出し、アフリカを代表する研究者へと育成したことも紹介。「人を育て、組織を育て、それが緑を育てることにつながっている」と述べ、日本とケニアの関係者が長期的に関わり続けてきたことが成果を生んだと強調しました。

写真:開会のあいさつに立ったJICA緒方研究所の亀井温子副所長

開会のあいさつに立ったJICA緒方研究所の亀井温子副所長

写真:本書の著者である株式会社タック・インターナショナルの清水正主任調査員

本書の著者である株式会社タック・インターナショナルの清水正主任調査員

長期的な協力で育った次世代リーダーが未来につなぐ

続いて、前JICA国際協力専門員の三次啓都氏がモデレーターを務めたディスカッションが行われ、プロジェクト関係者がさまざまな立場からプロジェクトの意義や成功した要因などについて語りました。

国際農林水産業研究センターの飯山みゆき戦略統括室長は、ケニアの国際アグロフォレストリーセンターに勤務した経験から、「木が足りないから植えればいい、という簡単な話ではない。乾燥地だから苗が育たない、土地保有制度があいまいだから隣の家畜が食べてしまう、といった不確実性がある中で、農家が木を植えるには経済的合理性が必要」と指摘し、ケニアを含めた乾燥地での植林やアグロフォレストリーがいかに困難かを説明しました。その上で、この社会林業プロジェクトが成功した理由として、住民の経済合理性に配慮し、需要がある現地に適した樹種を育て、長期的にKEFRIの人材を育成したことを挙げ、こうした教訓を世界の乾燥地における植林や気候変動対策などに生かすべきと述べました。

林野庁職員として在ケニア日本大使館書記官を務めた経験もあるJICA地球環境部の大仲幸作国際協力専門員は、ケニア駐在時に印象的だったエピソードとして、共に仕事をしていたケニア環境省の次官級・局長級といった高官に社会林業プロジェクトに携わった人材が多かったことを紹介。同プロジェクトが単なる技術移転にとどまらず、相手国政府の中核人材の形成にも寄与したことを指摘しました。また、日本の現場主義のプロフェッショナリズムが日本支援の強みであること、政府機関(林野庁)による関与が40年間という長期的なコミットメントにつながり、ケニアの森林行政・研究基盤の強化という大きな成果を生むことになったと述べました。

本書の共著者で、JICA長期専門家として本プロジェクトに関わった本庄由紀氏は「2016年が本プロジェクトの転換点」と述べ、現場の技術協力から地球規模課題に対応するため、①住民アプローチ普及/拡大、②材木育種、③森林政策、④REDD+(※)、⑤地域協力という5つの活動へと広がり、3つの機関と共同で行うようになったことを説明。地域協力を担当した中で、当初はケニア側の担当者に「このプロジェクトは自分たちのものではなく、JICAベビーだ」と言われて衝撃を受けた経験を共有。しかし、次第にKEFRIの若手研究者がオーナーシップを発揮し、ケニアがリードして他のサブサハラ地域に研修を提供する新しい協力モデルが形成されたことは、日本とケニアの長年の協力があったからこそだと述べました。

※REDD+: Reducing emissions from deforestation and forest degradation and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocksin developing countries/途上国における森林減少・森林劣化に由来する排出の抑制、並びに森林保全、持続可能な森林経営、森林炭素蓄積の増強

最後に清水氏は「社会林業プロジェクトは、人材育成やマネジメントといった文系的な要素と、林木育種や技術開発といった理系的な要素を、『社会林業』というコンセプトで融合させた国際協力の形」と述べ、住民参加を通してより持続的に未来へとつながっていく理想的な開発協力の在り方に近づいているのではないかと今後の活動に期待を寄せました。

写真:モデレーターを務めた前JICA国際協力専門員の三次啓都氏

モデレーターを務めた前JICA国際協力専門員の三次啓都氏

写真:国際農林水産業研究センターの飯山みゆき戦略統括室長

国際農林水産業研究センターの飯山みゆき戦略統括室長

写真:オンラインで参加したJICA地球環境部の大仲幸作国際協力専門員

オンラインで参加したJICA地球環境部の大仲幸作国際協力専門員

写真:本書の共著者で、元 JICA長期専門家の本庄由紀氏

本書の共著者で、元 JICA長期専門家の本庄由紀氏

参加者からの質疑応答を経て、閉会のあいさつに立ったJICA地球環境部の斎藤光範部長は、ケニアが2029年の国際森林研究機関連合(International Union of Forest Research Organizations: IUFRO) 世界大会をナイロビで開催するまでに成長したことや、ケニア政府が150億本植樹目標を掲げていることも紹介し、JICAが今後もアフリカ諸国と共に気候変動対策や自然環境保全の分野で継続的に取り組んでいく決意を示しました。

写真:閉会のあいさつに立ったJICA地球環境部の斎藤光範部長

閉会のあいさつに立ったJICA地球環境部の斎藤光範部長

このセミナーの動画は、以下からご覧になれます。

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【セミナー】『アフリカを緑に―ケニアと日本の森づくり40年の軌跡 半乾燥地での社会林業プロジェクト』(JICAプロジェクト・ヒストリー)

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