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No.24 Estimating the Carbon Footprint of Post-War Reconstruction: Toward a “Greener” Recovery of Ukraine

  • #ディスカッション・ペーパー

2022年2月に始まったロシアの侵略によって、ウクライナでは電力や運輸に関連する多くのインフラストラクチャーが破壊された。復旧・復興のためには、地雷の除去やがれきの処分に続いて、これらのインフラの再建が必要となる。世銀、国連、EU、ウクライナ政府は共同でRapid Needs Assessment(RDNA)を3度にわたって実施した。2024年2月に発表されたRDNA3によると、直接的な被害額は1,520億ドル、復旧・復興に必要となる費用は4,860億ドルと試算されている。再建に際しては、将来的なEU加盟も見据えつつ、侵略の前よりもより良いインフラを建設すること(Build Back Better)を目指し、より近代的で環境負荷の低いものとなることを志向している。

ロシアのウクライナ侵略が気候変動に与える影響に関しては、戦争によって増加した温室効果ガス(GHG)排出量を推計した文献、戦争によって復旧・復興後にいかにGHG排出量を抑制したエネルギーシステムや社会を実現できるかを論じた文献などが発表されているが、インフラ再建に伴って排出される二酸化炭素(CO2)についての研究は少ない。一般にインフラ建設では、建機等の稼働に多くのエネルギーが必要であることに加え、コンクリートや鉄鋼などの製造過程で大量のCO2を排出する建設資材を投入することが求められる。ウクライナのインフラ再建に当たっては、供用段階で排出するCO2(フロー)が少ない技術を導入していくことが重要であるが、これとあわせて建設段階で排出するCO2(ストック)についても可能な限り抑制していく必要がある。

本研究では、産業連関表を用いたライフサイクル評価によって、ウクライナの再建に伴って排出されるCO2量(「カーボン・フットプリント」という)を試算した。この結果、復興時のインフラ建設等には戦争開始前のウクライナの4.3年分のCO2排出量を伴うことが明らかになった。排出量の半分以上がウクライナの建設業界から排出されることから、当該業界の近代化と効率化が急務である。また、コンクリートや鉄鋼といった建設資材の製造に伴う排出量が約13%を占めることから、がれき等からの資材のリサイクルを進めることが、復興時のカーボン・フットプリントを抑制する上で効果的と考えられる。

キーワード:ウクライナ復興、カーボン・フットプリント、インフラ開発、廃棄物の再利用

著者
小早川 徹
発行年月
2024年9月
言語
英語
ページ
15
関連地域
  • #欧州
開発課題
  • #環境管理
  • #気候変動対策
研究領域
地球環境
研究プロジェクト