実施中プロジェクト
都市洪水対策事業に関する気候変動適応効果の定量評価研究近年、気候変動の影響は、年を追うごとに明らかに感じられるようになっており、開発途上国の多くは、気候変動影響に対する危機感から、気候変動適応策への支援を開発協力に強く期待しています。
しかし、気候変動による気候条件や気象現象の変化は、地域的、時間的な差異・変動があり、特定の地域・時期における正確な予測を得ることは開発途上国において多くの場合困難です。さらに、ある国や地域が気候変動から受ける影響は、それらの国・地域の社会・経済的特性にも大きく左右されます。気候変動適応策は、それらの社会・経済的特性のうちの幾つかをコントロールすることによって、気候変動影響を軽減しようとする取り組みですが、適応策によってコントロールできない社会・経済要因もあり、それらの要因が時間と共に変化していくことが見込まれ、かつ将来の変化予測に困難を伴うことが少なくありません。そのように、不確実でコントロールできない将来の気候要因と社会経済要因が絡み合って気候変動影響が左右される状況においては、気候変動適応策の効果を予測することは極めて難しいと言えます。
ところが、開発協力を通じて気候変動適応策への支援を実施しようとすれば、何らかの方法で個々の開発協力事業の適応策としての効果を評価しなければ、効果的な支援を選択して実施することができません。このような問題意識の下、本研究は、不確実な状況における意思決定(Decision Making under Deep Uncertainty: DMDU)支援手法のひとつであるRobust Decision Making (RDM) Frameworkを用いて、気候変動適応策の効果を評価する手法を提案することを目指しています。RDMを気候変動への適応問題の分析に応用した研究事例は近年増えていますが、洪水氾濫・土砂災害等の極端現象における気候変動影響への適応問題に応用した事例が少ないことから、本研究では気候変動によって影響を受ける極端現象のひとつである都市洪水問題に着目してRDM分析を適用し、都市洪水対策の気候変動適応効果の評価を試みるケーススタディを実施しています。具体的には、気候の変化と都市化に伴う人口増加、土地利用変化の影響によって将来の洪水リスクの増大が懸念されているスリランカ国のコロンボ都市圏の流域を対象としてケーススタディを行っています。
- 研究領域
- 地球環境
- 研究期間
- 2023年02月01日 から 2026年03月31日
- 主査
- 成田 大樹、 佐藤 一朗
- JICA緒方研究所所属の研究者
- リンバ・アンディ・ベッセ
- 関連地域
-
- 開発課題
-
scroll