実施中プロジェクト
感染症危機において、ウイルスの拡散を食い止めるための検疫や検査、接触者追跡等の公衆衛生上の介入と共に、急激に増加する感染症患者を他の患者と分離しながら、症状の軽重に応じた治療を行える医療提供体制を迅速かつ柔軟に整備することは、すべての国にとって重要な課題です。
本研究は、医療提供体制の強靭性を高めるため、保健システムのなかでも特に重要な要素としてWHOが掲げているガバナンス、財政、資源に着目し、各国のCOVID-19流行における医療提供体制の改編に関する以下の諸点について比較分析します。さらに、感染症危機に強い医療提供体制とは何か、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に向けた医療制度・医療提供体制整備において、感染症危機に対する備えをどのように組み入れていけばよいかを考察します。
具体的には、以下の3点について検討します。
- 1 . COVID-19の流行、およびそれに伴う他の疾患の治療への影響に対応するため、どのような医療提供体制の整備をいつ行ったのか。整備にあたり法制度の見直し等を要したか。
- 2 . 迅速で柔軟に医療提供体制整備ができた国と、そうでない国では何が異なるのか。
- 3 . 既存の医療提供体制、ガバナンス、財政の仕組みが、対応の迅速性(病床再編や人材配置の着手時期、それらの実施に要した時間等)や、COVID-19(患者数)とその他の疾患を含めた死亡者数の増減(超過死亡、代替となりうる指標)にどの程度寄与しているのか。
本研究から得た教訓は、今後の感染症対策とUHCの実現に寄与する有用な国際公共財になりうると考えられます。
scroll