JICA緒方研究所

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T20本会合開催:多国間主義への信頼が揺らぐ中、SDGsを達成するために—タスクフォース1の共同議長にJICA研究所

2019年6月27日

T20本会合の様子

2019年6月28、29日のG20大阪サミットを前に、Think 20(T20)Japan 2019が5月26、27日に東京で開催されました。T20は、G20の「アイデアバンク」と位置づけられ、G20加盟国を含む各国のシンクタンク関係者などで構成されています。T20 Japan 2019のテーマは「持続可能・包摂的・強靭な社会の実現に向けて」。T20に向けて立ち上げられた10のタスクフォースにおける政策提言が各パネルディスカッションで発表されました。

JICA研究所は、タスクフォース1「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」とタスクフォース5「アフリカとの協力」の共同議長を務めました。(タスクフォース5については、最下部の関連記事リンクからご覧ください) 

SDGsの理念は、「誰一人取り残さない」。その実現には、国際的な協調と行動が必要とされます。しかし、イギリスの欧州連合離脱をめぐる混乱や欧米における選挙結果の傾向などにみられる多国間主義への揺らぎが、SDGsをはじめとするさまざまな取り組みの障害となっています。

オープニングセッションでは、安倍晋三首相がビデオメッセージで、国際社会が直面する課題についてG20として団結して対処すると語りました。また、同セッションに登壇した公益財団法人日本国際問題研究所の佐々江賢一郎理事長兼所長は、多国間によるアプローチを続けることの重要性について強調し、冨田浩司G20サミット担当大使は、G20はその構成国の政府最高レベルで互いに働きかける機会になると述べました。

大野泉研究所長(左)とケニアのアミナ・モハメド スポーツ・文化・遺産長官

続いて行われた基調講演では、ケニアのアミナ・モハメド スポーツ・文化・遺産長官が講演し、JICA研究所の大野泉研究所長がモデレーターを務めました。過去に世界貿易機関(WTO)一般理事会議長を務めたこともあるモハメド長官は、多国間主義の重要性を示す例として貿易に焦点を当て、貿易は経済発展・雇用創出・貧困削減の鍵であり、世界各国と開発途上国を結ぶものであるにも関わらず、その重要な接点が打撃を受けていると述べました。大野研究所長はG20の強みはG7に比べて関係国に多様性があることと述べた上で、G20の包摂性が十分であるかを質問。モハメド長官はこれに対し、南半球の国々の参加を増やすべきだとの見解を示しました。

タスクフォース1では11本のポリシーブリーフを作成

タスクフォース1では、SDGsの達成のための保健や教育、民間セクターの役割、ジェンダーなどのテーマで11本のポリシーブリーフをまとめ、本会合では以下の6つのパネルディスカッションを開催しました。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成と維持:G20と国際社会の役割(Achieving and Sustaining Universal Health Coverage (UHC): Role of G20 and International Community)

基調講演を行う北岡伸一JICA理事長

北岡伸一JICA理事長が「UHC, SDGs, and Human Security」と題した基調講演を行い、次に香港大学のガブリエル・ルン教授がUHCに関するポリシーブリーフの概要を発表しました。この講演と発表を契機に、パネリストがUHCを実現するためにG20と国際社会に何ができるのかについて議論。具体的には、国際社会の継続的なコミットメント、持続可能な金融、政府主導の国内パートナーシップ、移民の保健、医療関係者の移住、UHC向けのイノベーションとテクノロジーの効果的な利用について意見がありました。

ポリシーブリーフ

SDGsの実現を可能にする教育(Education as an Enabler to Achieve the SDGs)

萱島信子JICA上級審議役 (左) と広島大学の吉田和浩教授

萱島信子JICA上級審議役によるあいさつの後、広島大学の吉田和浩教授がポリシーブリーフの概要を発表。包摂的で成果重視の質の高い教育の必要性や、気候変動やデジタル化といった時流に対応する重要性を訴えました。田中紳一郎JICA国際協力専門員は、非認知能力の重要性を強調。保護者と地域社会の間でその責任を共有しながら、教師からの指導による学習よりも、生徒自身による学習を重視する方向に変えていくことを提案しました。その他、幼児教育の意義、教育開発における性別格差の解消、教師の質について意見交換しました。

ポリシーブリーフ

SDGsに対するビジネスインパクトの強化(Scaling up Business Impact on the Sustainable Development Goals (SDGs))

ポリシーブリーフの概要を発表する大野泉研究所長

大野研究所長が、ポリシーブリーフの概要を発表。SDGsに対するビジネスインパクトの強化について述べたほか、開発途上国のグローバル・バリュー・チェーン(GVC)への参加を促すために、SDGsを企業の中核的なビジネス戦略や業務に組み入れ、「質の高い海外直接投資(FDI)」を促進する必要性を強調しました。次にオムロン株式会社の平尾佳淑サステナビリティ推進室長が、同社創業者のビジョンに基づく企業理念と持続可能な取り組みを説明した上で、中期経営計画に持続可能性を盛り込む企業努力についても紹介しました。その他、現在の経済構造と長期的なSDGsの考え方の矛盾について議論し、すべての人々にとって有益な「持続可能なエコシステム」構築の必要性について指摘がありました。

ポリシーブリーフ

開発のための持続可能な金融(Sustainable Financing for Development)

国際通貨研究所の渡辺博史理事長(左)とブルッキングス研究所のホミ・カラス副所長

公益財団法人国際通貨研究所の渡辺博史理事長によるあいさつに続き、ブルッキングス研究所のホミ・カラス副所長が基調講演を行いました。その中で、持続可能な金融の拡大や、開発資金の配分の改善のほか、各国の開発計画と関連し、首尾一貫した質の高いプロジェクトを提案できるよう、セクター別のプラットフォームで開発途上国を支援することの必要性が指摘されました。また、地球環境ファシリティの石井菜穂子CEOらのパネリストが、金融包摂や、環境の観点から金融がどのような方法でSDGs達成を支えられるかについて意見交換しました。

なお、本セッションは、タスクフォース1と2「安定と発展のための国際金融アーキテクチャー、暗号資産とフィンテック」の合同で行われました。

ポリシーブリーフ

SDGs、科学、技術、イノベーション:さらに先へ(SDG, Science, Technology and Innovation and Way Forward)

発表する政策研究大学院大学の有本建男客員教授(右)

インド開発途上国研究情報システムセンター(RIS)のサチン・チャタルべディ所長が、ポリシーブリーフの概要を発表し、科学・技術・イノベーション(STI)協力の強化や、開発途上国における技術力・資金力の増強について述べました。パネリストとして参加した政策研究大学院大学の有本建男客員教授は、「STI for SDGs Roadmaps」など多国間フォーラムにおける取り組みを紹介。その他、日本はどのように計画を政策に反映させるのか、「Technology Bank」のアイデア、このSTIの強化を支える上でのG20の課題と役割などについて活発な議論が行われました。

ポリシーブリーフ

女性の経済的エンパワメントの向上(Promoting Women’s Economic Empowerment )

司会を務めるWomen’s Economic Imperativeのマルゴ・トーマス代表

Women’s Economic Imperativeのマルゴ・トーマス代表が司会を務め、CIPPEC(平等のための公共政策実施センター)のホセ・フロリト氏がポリシーブリーフの概要を発表しました。また、北九州市役所女性活躍推進課の荒牧かな子氏は、女性の労働参加(起業および就業)支援や、上司と部下の両方のワークライフバランスを促進するための取り組み「イクボス同盟」を紹介。その他、教育達成度の不均衡や、科学・技術・工学・数学(STEM)教育の重要性、2025年までに就労率の男女差を25パーセント縮小する「25 by 25」達成へのモニタリング方法などについて意見交換しました。

ポリシーブリーフ

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