T20本会合開催:アフリカの発展に向け、長期的課題をいかに乗り越え前進できるか—タスクフォース5の共同議長にJICA研究所

2019.06.28

2019年6月28、29日のG20大阪サミットを前に、Think 20(T20)Japan 2019が5月26、27日に東京で開催されました。T20は、G20の「アイデアバンク」と位置づけられ、G20各国のシンクタンク関係者などで構成されています。T20 Japan 2019のテーマは「持続可能・包摂的・強靭な社会の実現に向けて」。T20に向けて立ち上げられた10のタスクフォースにおける政策提言が各パネルディスカッションで発表されました。

JICA研究所は、タスクフォース1「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」とタスクフォース5「アフリカとの協力」の共同議長を務めました。(タスクフォース1については、最下部の関連記事リンクからご覧ください)

タスクフォース5では6本のポリシーブリーフを作成

アフリカ諸国の多くは、近年発展を続けてきたものの、債務管理、農業開発、食料安全保障、産業競争力の不足など、その発展を阻む課題に引き続き直面しています。一方で、農業や産業におけるバリューチェーンの発達や革新的な技術の導入などといった新たなトレンドがアフリカの発展の可能性に大きな影響を与えています。

タスクフォース5では、アフリカが直面するこれらの課題と可能性を踏まえ、財政と債務の持続性、「アフリカとのコンパクト(Compact with Africa:CwA、ドイツのG20より始まった民間セクターとの協働やアフリカでの投資を促すイニシアチブ)」の推進や、産業開発、農業開発、食糧安全保障、ガバナンス、課税制度に着目し、課題解決に向けた議論を行ってきました。その成果を6本のポリシーブリーフにまとめ、本会合では以下の3つのパネルディスカッションを開催しました。

アフリカにおける財政・債務の持続可能性と国内資源の動員(Fiscal and Debt Sustainability and Domestic Resource Mobilization in Africa )

JICAの中田亮輔チーフエコノミストが司会を務めた本セッションでは、アフリカ開発銀行のカピル・カプール総局長が、G20は、債務データの迅速な公開、幅広い債権者を含めた効果的な債務問題解決の枠組み構築などの分野で、アフリカ諸国を支援するべきであると提言しました。また、アフリカ税務行政フォーラムのナラ・モンカム局長は、デジタルエコノミーにおける課税の新たなアプローチに関して言及し、アフリカの利益を考慮に入れたグローバルで包摂的な議論をG20が支持すべきだと強調しました。ブルッキングス研究所のブラヒマ・クリバリー上級研究員は、一部のアフリカ諸国が厳しい債務状況に陥っている問題を改めて指摘。質疑応答では、海外からの資金調達における透明性とリスクや、国内資源の動員、G20や国際開発金融機関の役割について議論しました。

司会を務める中田亮輔チーフエコノミスト(左)

ポリシーブリーフ
・Fiscal and Debt Sustainability in Africa

アフリカにおける民間セクターへの投資の推進と産業開発(Promoting Private Sector Investment and Industrial Development in Africa)

南アフリカ国際問題研究所のエリザベス・シドロポロス所長が本セッションの司会を務めました。アフリカ経済変革センターのロブ・フロイド局長が、CwAの進捗と課題を説明した上で、CwAをさらに発展させていくための提言を発表。また、東アジア・ASEAN経済研究センターのアニタ・プラカシュ局長は、テジタル化と情報通信技術(ICT)を重視したアフリカの産業開発について提案しました。紀谷昌彦外務省参事官・TICAD大使は、本ポリシーブリーフに期待を込め、G20とアフリカ開発会議(TICAD)の相乗効果により、アフリカへの投資拡大がさらに期待されると述べました。

ポリシーブリーフに期待を込める紀谷昌彦外務省参事官・TICAD大使(左から2番目)

ポリシーブリーフ
・G20 Compact with Africa

アフリカにおける農業ビジネス開発と食料安全保障(Agribusiness Development and Food Security in Africa)

ドイツ開発研究所のクリスティン・ヘッケネシュ上席研究員が議論の司会を務めた本セッションでは、アフリカ地域持続可能な開発目標センターのベライ・ベガショー 総裁が、高付加価値の食品市場と小規模農業者の結び付きの強化や、アフリカの食料安全保障の改善について提言しました。JICA研究所の藤田安男副所長はこれを補足し、アフリカの稲作における「米の緑の革命」や、日本の農業ビジネス企業が直面しているバリューチェーンの脆弱性などの課題について説明しました。また、中国農業大学のチャン・チュアンホン准教授は、不十分なインフラや技術がアフリカの農家にとって重大な制約になっていると指摘しました。その他、パネリストと参加者は、アフリカの農業の複雑な課題と将来の可能性に加え、G20の協調行動の必要性について意見交換しました。

アフリカの稲作における「米の緑の革命」などについて説明する藤田安男副所長

ポリシーブリーフ
・Linking Smallholder Production with Value-Added Food Markets

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