ブルッキングス研究所との共同研究による書籍『Leave No One Behind』ローンチセミナー(ニューヨーク)に登壇—大野研究所長

2019.10.17

JICA研究所と米国ブルッキングス研究所の共同研究の成果をまとめた書籍『Leave No One Behind:Time for Specifics on the Sustainable Development Goals』が2019年9月に刊行されました。それを記念したローンチセミナーが2019年9月23日にニューヨークのジャパン・ソサエティーで開催され、援助機関やNGO、研究者、コンサルタントなど、約60人が出席。JICA研究所からは大野泉研究所長、牧本小枝上席研究員、中村史職員が参加しました。

「Leave No One Behind(誰一人取り残さない)」の実現に向けて意見交換

ブルッキングス研究所とJICA研究所は2010年から共同研究を実施し、その成果として書籍が発刊されたのは今回で5冊目。本書では、「誰一人取り残さない(Leave No One Behind: LNOB)」を持続可能な開発目標(SDGs)のスローガンにとどめず、具体的な行動に移すための分析の枠組みとして、取り残されやすい人々(people)、場所(places)、これらの人々や地域が直面している課題(problems)を特定する必要性を提起し、すでに成果をあげているグッド・プラクティス事例を紹介し、スケールアップするための方策と課題を示しています。全13章のうち、JICA研究所は、1章「Getting Specific to Leave No One Behind on Sustainable Development」(大野研究所長)、7章「Vulnerable Populations and Universal Health Coverage」(牧本上席研究員)、8章「No Women Left Excluded from Financial Services」(山田英嗣研究員、村上エネレルテ研究員、村田旭招聘研究員)の執筆に参画しています。

ローンチセミナーでは、編者を代表してJICA研究所の大野研究所長が、ブルッキングス研究所のホミ・カラス国際経済開発局長に続いてあいさつし、「『誰一人取り残さない』はSDGsのスローガンとして広く認識されたものの、いまだどの国もこの野心的なゴールを達成するためのトラックにのっているとはいえず、SDGsの実施を加速するための変革的で大胆な行動が今般求められている。取り残されやすい人々、地域、これらの人々や地域が抱える課題を特定するための分析枠組みについてのこの書籍が、SDGsの実施に向けた効果的な行動の加速に貢献できることを願っている」と述べました。

編者の一人としてあいさつしたJICA研究所の大野泉研究所長

次に、バングラデシュなどで活動するNGOのBRAC(ブラック)InternationalのMuhammad Musa総裁、国際協力NGOのCARE(ケア)USAのMichell Nunn総裁、世界銀行のKoe Daviass理事が書籍に対して発言し、参加者も交えて意見交換が行われました。参加者からは、「LNOBの概念が叫ばれて久しいが、開発援助の実践者にとってスローガンで終わってはならず、LNOBは方法論であるべき。その意味で本書を評価したい」という書籍への意見や、「政府に対する信頼が崩れてきている中、国家政策としてLNOBを提唱しても実現できない可能性があり、伝統的アプローチだけでは不十分。国レベルの議論を超えて、困難に直面している人々や場所、課題などを詳細に特定することが必要ではないか」などの意見が挙がり、多岐にわたる議論が展開されました。

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