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パンデミックを安全保障上の重要課題と見据えて国際社会は新たな対応を─ナレッジフォーラム第8回開催

2021年8月2日

トークセッションにも参加したJICA緒方研究所の牧野耕司副所長

2021年6月29日、JICA緒方貞子平和開発研究所ナレッジフォーラム(第8回)「危機を繰り返さない国際システムにむけた改革を~WHO COVID-19対応検証独立パネルはどう取り組んだのか〜」がウェビナー形式で開催されました。世界保健機構(World Health Organization: WHO)は加盟国からの要請を受け、国際社会の新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)対策を検証する独立調査パネルを設立。同パネルは、元国家元首や保健衛生の専門家といった11人のパネルメンバーと、分析・提言のとりまとめを行う事務局で構成されました。WHOを含む国際組織や各国政府のコロナ対応を客観的に評価することで、パンデミックを二度と繰り返さないために必要な国際システムの改善を提案すべく、2021年5月に最終報告書を公開しました。このナレッジフォーラムでは、同パネル事務局の唯一のアジア人メンバーであり、ビル&メリンダ・ゲイツ財団シニアアドバイザーを務める馬渕俊介氏を招き、コロナ対応の問題点と、今後求められる国際的な取り組みについて意見を交換しました。

まず、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の牧野耕司副所長が開会のあいさつをし、「独立パネル内の取りまとめのプロセスなど、事務局メンバーだからこその話をうかがい、国際システムの改革について議論したい」と述べました。

独立調査パネルに参加した馬渕俊介氏が基調講演

馬渕氏による基調講演では、コロナが発見されてからの時系列のレポートやうまく対応できた国とそうでなかった国を比較した分析などが含まれる最終報告書の概要が紹介されました。馬渕氏はパンデミックになってしまった理由について、どの国・組織もパンデミックへの防備策をもともと準備しておらず、感染症の発見からWHOによるアラートの発令、そして各国での初期対応といったあらゆる段階で失敗の連鎖があったからだと説明しました。同報告書では、この状況を変えるため、パンデミックを安全保障上の国際的な重要課題だと認識を改め、危機を回避するための取り組みを牽引する新たな組織として、国家元首レベルが共同議長を務める協議会「Global Health Threats Council」の設置を提言していることを説明しました。

また、馬渕氏はパンデミック対応の迅速化に向けてWHOの権限を強化し、独立性を担保する組織改革が求められるとして、今後は保健衛生の観点からの戦略策定やガイダンスといった専門機能に特化し、その役割に集中させるべきだと指摘。資金面でも、各国が経済状況に応じて割り振られた分担金を拠出するなどして、WHOの財務的な独立性を保持することも必要だと述べました。さらに、「全ての国による事前準備の徹底、感染症の発見やアラートを出すまでのスピードアップ、ワクチンの不平等が起こらないように各国が大規模なお金をプールしておく資金面の対策まで、全ての面での改革をしないとパンデミックには太刀打ちできない。先日開催された世界保健総会やG7サミットですでに最終報告書についての議論が交わされ、多くの賛同を得ている。今後の国連総会やG20サミットで各国がどのような意思決定をするかに注目したい」とまとめました。

トークセッションのモデレーターを務めたJICA緒方研究所の牧本小枝主席研究員

続くトークセッションでは、モデレーターを務めたJICA緒方研究所の牧本小枝主席研究員が「独立パネルの事務局にアジア人メンバーが加わった意義や、参加してどんな学びを得たか」と馬渕氏に質問。馬渕氏は「コロナ対応が比較的うまく対応できたのはアジアの国々だが、こういった国際的なパネルにアジア人があまり参加できていないのが現状。今回参加して、それぞれのパネルメンバーが持つ異なるリーダーシップのスタイルを学べた。アジアのことを伝えるのは大事だが、そのためにはまず西洋式のリーダーシップを身につけなければならないと痛感した」と答えました。また、牧野副所長からの「独立パネルの提言はトップダウン形式が多いが、人間の安全保障の観点からするとボトムアップのアプローチも必要ではないか」という指摘に対しては、馬渕氏は「それは同感。私は世界銀行に在籍時、西アフリカでエボラ対策に関わった経験があるが、現地では非常に優秀な中央政府の人材がリーダーシップをとり、コミュニティーとの協働を強化していた。コロナ発生時にも、その実績が対策の土台になっている。アフリカやアジアでコロナ対応に成功した国は、マネジメントの調整力が優れ、かつコミュニティーレベルの活動が活発だったと言える」と述べました。

参加者からの質疑応答では、WHOの機能のスリム化、アフリカでワクチン接種が遅れている背景、パンデミックという新たな課題と既存の取り組みとの競合など、数多くの質問が寄せられ、活発な議論が交わされました。

【JICA緒方貞子平和開発研究所ナレッジフォーラム】
国際開発に関心をもつ多様な関係者が定期的に集い、自由闊達に議論する場として、JICA緒方貞子平和開発研究所が2019年1月に立ち上げました。国際開発動向や開発協力に関する内外の知見を多様な関係者で共有・相互学習し、新しいアイデアを生み出していくKnowledge Co-Creation Platformとして機能することを目指しています。

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JICA緒方貞子平和開発研究所ナレッジ・フォーラム(第8回)危機を繰り返さない国際システムにむけた改革を~WHO COVID-19対応検証独立パネルはどう取り組んだのか

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