書籍『途上国の産業開発と日本の経験 翻訳的適応から国際協力を考える』発刊セミナー開催
2026.01.28
2025年12月11日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、書籍『途上国の産業開発と日本の経験 翻訳的適応から国際協力を考える 』発刊セミナーを開催しました。本書は、研究プロジェクト「日本の産業開発と開発協力の経験に関する研究:翻訳的適応プロセスの分析 」の成果として2023年に刊行した書籍『Introducing Foreign Models for Development: Japanese Experience and Cooperation in the Age of New Technology 』を日本の読者向けに再構成し、新たな章を加えた最終研究成果です。
開会のあいさつに立ったJICA緒方研究所の峯陽一 研究所長は、同書のキーワードである「翻訳的適応」について、開発途上国が外国の制度や技術を取り入れる際に、単なる模倣ではなく自国の特性や能力に応じて主体的に選択し、適用していくプロセスを意味すると説明し、「この視点こそ、日本自身が実践してきた学びのスタイル」だと強調しました。
次に、本書の編者である政策研究大学院大学(National Graduate Institute for Policy Studies: GRIPS)の大野泉 名誉教授(JICA緒方研究所シニア・リサーチ・アドバイザー)が本書について概説。産業開発に焦点を当てた本書の狙いは、日本発の知的貢献の在り方を考え、「開発を学ぶ、伝える」方法に着目しながら研究と実践の架け橋となることだと説明。翻訳的適応の枠組みとして、①さまざまな国から選択的に経験を学ぶ「学習段階」、②実証しながら検討し適応させていく「適応・内部化段階」、③自国のモデルを構築して国内で展開し、他国とも共有していく「普及段階」という三段階のプロセスを示しました。また、本書から得られる主要な示唆として、産業開発のために開発途上国が重視するべき点、日本の産業開発協力の特徴、翻訳的適応を可能にするためのポイントなどを指摘し、さらに産業開発協力の高度化に向けた提言も示しました。
本書の編者である政策研究大学院大学(National Graduate Institute for Policy Studies: GRIPS)の大野泉名誉教授が書籍について概説
続いて、立命館アジア太平洋大学の山形辰史教授がコメントし、日本の協力(特に技術協力)は翻訳的適応を伴ったという本書の主張に同意しつつも、日本の開発協力全体が必ずしもこの考え方に基づいていないのではないかと指摘。特に、インフラ事業にみられる本邦技術活用条件(Special Terms for Economic Partnership:STEP)やオファー型協力といったスキームでは翻訳的適応の要素が薄いため、開発途上国がインフラ事業を日本の主要な開発協力と認識している場合には、翻訳的適応モデルを日本の開発協力の典型的な形態として受け入れにくい可能性があることを示しました。
また、筑波大学の前川啓治名誉教授は、本書が「経済人類学と経済学の節合の事例を扱っていることを評価し、自身の理論と関連付けて翻訳的適応の概念を解説。経済学が扱うマクロな国家レベルと人類学が扱うミクロな村落レベルの開発をつなぐ概念としてフラクタル(相似形)な視点を示しました。そして、現地の視点から外部の影響を捉える意味的アプローチとして翻訳的適応の意義を述べた上で、開発援助の文脈では、ドナー側と受け手側の関係性や相互作用を対象化し、伝統と近代化を双方向で捉える「存在論」的アプローチの重要性を論じました。
なお、セミナーでのコメントを補足するため、前川名誉教授よりご寄稿をいただきました。以下のリンク先をご覧ください。
コメントした立命館アジア太平洋大学の山形辰史教授
コメントした筑波大学の前川啓治名誉教授
後半では、同書の執筆者の一人でもあるJICA管理部の山田実審議役がモデレーターを務め、「共創の時代の翻訳的適応、これからの開発協力」をテーマに掲げたパネルディスカッションが行われました。
本書の第3章「国家の工業化ビジョン 明治政府の学習プロセス」などを執筆した立命館アジア太平洋大学の天津邦明教授は、低所得国の工業化失敗の要因として、工業化ビジョンと現実のギャップがあると指摘。工業化ビジョンの修正を繰り返した明治日本の工業化の歴史を分析し、その経験から導かれた成功要因と現在の低所得国への含意を解説しました。
第9章「カイゼン・プロジェクト支援の10年 チュニジアとエチオピアの比較」を執筆したJICA南アフリカ品質生産性向上プロジェクトの神公明チーフアドバイザーは自身が携わるアフリカ各国でのカイゼン・プロジェクト を振り返りつつ、「翻訳的適応を促す鍵は、より多くの人の意見を聞き、巻き込こんでいくこと。それにより、カウンターパートの中に翻訳的適応のプロセスが生まれてくる」と述べました。
第7章「産業界と連携した職業教育訓練と開発協力 ベトナムでの成果と課題」などを執筆したJICAエジプト・日本高専プロジェクトの森純一チーフアドバイザー・共同プロジェクトダイレクターは、ベトナムのハノイ工業大学による企業向けの短期職業訓練コースの形成と実施を成功事例として紹介。日本や西欧諸国の訓練プロセス手法を取り入れつつも、現地に合わせた独自の新たなモデルを生み出す翻訳的適応が見られたことを強調しました。
産業政策を実施に移す支援を行う実務者の視点から参加したJICA経済開発部民間セクター開発グループの奥本恵世参事役は、「開発協力の実務者は、現場で意識せずに翻訳的適応プロセスを実践しているのではないか」と自身の経験を踏まえて語りました。また、産業政策形成には民間企業の参加が不可欠であること、また、組織間の連携を進める上でもその国の文化的背景を理解することが重要だと強調しました。
立命館アジア太平洋大学の天津邦明教授
JICA南アフリカ品質生産性向上プロジェクトの神公明チーフアドバイザー
JICAエジプト・日本高専プロジェクトの森純一チーフアドバイザー・共同プロジェクトダイレクター
JICA経済開発部民間セクター開発グループの奥本恵世参事役
質疑応答では産業開発や開発協力の今後の展開をテーマにさまざまな議論が続き、最後に山田審議役が「我々自身がしっかり学び、翻訳し、さまざまなパートナーと共創していくことが成功の鍵となると確認できた」と述べてセミナーを締めくくりました。
モデレーターを務めたJICA管理部の山田実審議役
このセミナーの動画は以下からご覧になれます。
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
scroll