『Introducing Foreign Models for Development: Japanese Experience and Cooperation in the Age of New Technology』

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オープンアクセスの本書は、今日の開発途上国が外来の経済発展モデルをいかに効果的に学び、自国の開発政策の策定に適用させるかに焦点を当てた研究の成果です。後発国が工業化に成功する前提条件として、政策能力と社会的学習の重要性が強調されるようになってきています。しかし、各国が社会の固有性を生かしながら、どのように外来知識・技術を学び、内生化していけばよいかは十分に解明されていません。

本書は、日本の過去の開発経験や、日本がアジア、アフリカ、中南米における広範な開発協力で培った視点をもとに豊富な事例分析を行い、この実践的な問いに答えるものです。19世紀後半以降、日本は欧米から先進的技術やシステムを導入し、その過程で独自の哲学と方法を培ってきました。こうした哲学や方法は、今日の日本による開発途上国への開発協力にも投影されています。

キーコンセプトは、ローカルラーニングと翻訳的適応です。ローカルラーニングは、開発において受容側の国・社会が主体的なマインドセットをもち、援助からの卒業を目標にして取り組むことを求めます。一方、翻訳的適応とは、外来のモデルを導入する際に、現地の実情に応じて、自らの社会に内在的な視点で読み替え、適応させることを意味します。開発プロセスには、外来モデルのコピー&ぺーストではなく、受容側の国・社会の主体的な取り組みが求められます。ローカルラーニングと翻訳的適応は、日本に発展をもたらしただけでなく、あらゆる国の開発にとっても成功の鍵となり得ます。本書はまた、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)とデジタル化の時代において、こうした方法は有用であり続けるか、何を見直すべきかについても問いかけています。

本書は、翻訳的適応の概要を紹介した上で、日本と各国の実際の事例を数多く紹介しています。一般的な理論とは対照的に、これらの事例は、それぞれの国の成長の「中身」に細心の注意を払いつつ、具体的な取り組みを説明しており、政策立案を成功させる上で極めて重要です。本書は、開発途上国の指導者や実務家、開発学を学ぶ学生に有益な示唆を与えるものです。

編者
大野 泉、 神 公明、 天津 邦明、 森 純一
発行年月
2023年10月
出版社
Springer Singapore
言語
英語
ページ
354
関連地域
  • #アジア
  • #アフリカ
  • #中南米
開発課題
  • #日本の開発協力
  • #民間セクター開発
研究領域
開発協力戦略
ISBN
978-981-99-4238-1 (eBook)
DOI
https://doi.org/10.1007/978-981-99-4238-1
研究プロジェクト