プロジェクト・ヒストリー『TAMPOPOの綿毛が風に飛んでいく—ブラジルろう者「当事者主体」の奮闘の軌跡』出版記念セミナー開催
2026.01.27
2025年11月28日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、プロジェクト・ヒストリー『TAMPOPOの綿毛が風に飛んでいく—ブラジルろう者「当事者主体」の奮闘の軌跡』 出版記念セミナーを開催しました。同書では、2008~2013年までブラジルで行われたJICA草の根技術協力事業「ろう者組織の強化を通した非識字層の障害者へのHIV/AIDS教育」(通称TAMPOPOプロジェクト)の軌跡が描かれています。
オンラインのほか、会場でも障害当事者も含め多くの参加者が来場
冒頭、JICA緒方研究所の亀井温子 副所長が開会のあいさつに立ち、「障害は、ろう者や車椅子利用者の側にあるのではなく、多様な人々を考慮しない社会によってつくりだされたものと言える。まず私たち一人一人が心の中にあるバリアを取り除く努力をすることが必要」と述べました。
次に、TAMPOPOプロジェクトを実施した特定非営利活動法人DPI日本会議 の西村正樹副議長がプロジェクトについて紹介。プロジェクトが始まった2008年当時、ブラジルはHIV/AIDS予防対策を進めていたものの、正しい情報が聴覚障害者には届いていなかった状況に触れ、「そうした課題に直面している障害当事者たちこそ、自らのニーズをよく知っているし、解決に向けた役割を担うべき。そこでTAMPOPOプロジェクトでは、障害がある人にもきちんと情報が届く“情報保障”を基本とし、障害当事者が中心になって手話を新たにつくったり、寸劇や道具を駆使したりと、伝えたいことを伝えるための手法を開発して取り組みを進めていった」と振り返りました。
TAMPOPOプロジェクトについて紹介した特定非営利活動法人DPI日本会議の西村正樹副議長
実際に障害当事者として活動したTAMPOPOメンバーの手話によるビデオメッセージ(日本語字幕と手話通訳者による読み上げ)も上映され、「TAMPOPOで多くの人と連携して多くを学び、成長できた」「TAMPOPOは私の人生の最高の経験」という声が紹介されました。
続いて、TAMPOPOプロジェクトからの学びや、それを踏まえて障害と開発にこれからどう取り組んでいくか、さまざまなトピックでパネルディスカッションが行われました。モデレーターは、TAMPOPOプロジェクト実施時にブラジル事務所に勤務していた同書の著者の一人、JICAコスタリカの吉田憲所長が務めました。
TAMPOPOプロジェクトに参加した社会福祉法人AJU自立の家の伊藤秀樹理事は、「ブラジルに派遣された時は迷いもあったが、自分が日本で障害者運動をどう進めてきたかを踏まえて伝えるようにした。例えば、車椅子で介助者と共に移動していると、駅では駅員が自分を相手にせずに介助者とばかり話をしてしまう。そこで介助者と連携して駅員が自分とコミュニケーションをとってくれるように試行錯誤した経験をTAMPOPOメンバーに共有した。活動を進めるにつれて、TAMPOPOメンバーがどんどん自信に満ち溢れていったことに感動した」と振り返りました。
モデレーターを務めた同書の著者の一人、JICAコスタリカの吉田憲所長
TAMPOPOプロジェクトに参加した社会福祉法人AJU自立の家の伊藤秀樹理事
初の聴覚障害当事者の海外協力隊員としてドミニカ共和国に赴任した経験を持つ特定非営利活動法人 YES, Deaf Can! の廣瀬芽里代表理事は、コロナ禍にTAMPOPOプロジェクトのフォローアップとして予防啓発活動に参画した経験を共有。また、本セミナー直前に閉幕した東京2025デフリンピックに陸上競技の運営委員として参加したことを振り返り、「審判員やドーピング検査員にろう者がいなかったり、通訳者がいないために選手とのコミュニケーションがとれなかったりと、聞こえる人を中心とした運営になっていた。今後は、運営側にも当事者を巻き込んで一緒に活動することが大事。それは国際協力の分野でも同じで、当事者を省いて決めるのではなく、一緒に企画から参画できるように進めてほしい」と想いを語りました。
本書の著者の一人で、TAMPOPOプロジェクトに携ったDPI日本会議国際部会員の盛上真美氏は、「障害当事者と活動していると、自分が当たり前だと思っていることが、それは本当にみんなにとって当たり前なのか?と日々考えさせられる。最も課題に精通している当事者が課題を解決しないと、インクルーシブな社会にはならない。世界中どこでも、障害があるゆえに困っていることはみな同じ。当事者は当事者のニーズが分かる。これほどの強みはないので、これからも世界の当事者同士が出会ってエンパワーし合える活動に関わりたい」と抱負を述べました。
初の聴覚障害当事者の海外協力隊員としてドミニカ共和国に赴任した経験を持つ特定非営利活動法人YES, Deaf Can!の廣瀬芽里代表理事
本書の著者の一人で、TAMPOPOプロジェクトに携ったDPI日本会議国際部会員の盛上真美氏
JICA人間開発部高等教育・社会保障グループの小林英里子企画役は、JICAが全ての事業で進めている「障害主流化」について、「障害主流化は障害者だけのものではなく、全ての人が事業の恩恵を受けるために必要なもの」とし、障害に細分化したデータの収集・活用、基礎的環境の整備、合理的配慮の提供、障害者の事業参画の推進といった取り組みを説明。2023年には「社会保障・障害と開発プラットフォーム 」を立ち上げ、障害と開発 の分野に携わるJICA内外のネットワーク形成を進めていることを紹介しました。
「障害主流化」について説明したJICA人間開発部高等教育・社会保障グループの小林英里子企画役
質疑応答では、識字率の低さや障害の種別にかかわらず多くの人を巻き込むコツ、世界的な手話通訳の不足やAIの活用、多様な障害当事者の声を聞くための工夫などについて質問があり、活発な議論が行われました。
最後に、吉田所長は「本日のセミナーでは、情報保障として手話通訳・文字通訳がされている。『障害は本人の身体の欠損から生まれるものではない、社会が障害者に対して不利を押しつけてくることから生じる環境の問題だ』ということを、西村さん、盛上さん、TAMPOPOの皆さんから学ぶことができた。より良き社会を目指して、少しずつ前進できればと考えている」と閉会あいさつをし、セミナーを締めくくりました。
JICA緒方研究所では、インクルーシブな社会を目指してさまざまな研究を実施しています。その一部を以下からご覧になれます。
このセミナーの動画は以下からご覧になれます。
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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