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【今月の研究ピックアップ】12月3日は国際障害者デー

2025.12.03

(写真:JICA/佐藤浩治)

12月3日の「国際障害者デー 」は、障害のある人々の権利と福祉の促進や、そのための理解促進を目的として、1992年に国連によって定められました。

障害者の多くは保健、教育や就労の機会が制限され、 さらなる貧困状況に陥りやすいという悪循環の中にあります。 JICAは「障害と開発 」の取り組みを通じ、すべての障害者の人権の尊重および 「完全参加と平等」並びにインクルーシブな社会を実現することを目指しています。

2025年11月に開催された耳が聞こえない・聞こえにくい人のためのオリンピックである「東京2025デフリンピック 」には、開発途上国で障害者の社会参画に取り組むJICA関係者も多く関わりました。

JICA緒方研究所も、インクルーシブな社会を目指してさまざまな研究を実施しています。その一部をご紹介します。

プロジェクト・ヒストリー『TAMPOPOの綿毛が風に飛んでいく―ブラジルろう者「当事者主体」の奮闘の軌跡』

たんぽぽの綿毛が風に乗って飛んでいくように、自分たちの活動も周囲に広がっていく―。そんな想いを込めて名付けられた「TAMPOPOプロジェクト」は、2008~2013年までブラジルで行われたJICA草の根技術協力事業「ろう者組織の強化を通した非識字層の障害者へのHIV/AIDS教育」のこと。本書では、さまざまな現場の声を織り交ぜながら、障害当事者団体Disabled Peoples’ International(DPI)の日本国内組織「DPI日本会議」によるTAMPOPOプロジェクトの軌跡が描かれています。

同書の発刊記念セミナー が2025年11月28日に開催され、デフリンピック東京2025運営に深く関わった元JICA海外協力隊員の廣瀬芽里さんも登壇しました。同イベントの詳細ニュースと動画は、追ってJICA緒方研究所ウェブサイトに掲載予定です。

プロジェクト・ヒストリー『車いすがアジアの街を行く―アジア太平洋障害者センター(APCD)の挑戦』

2002年、JICAとタイの労働福祉省がアジア太平洋地域における障害者の権利擁護とバリアフリー社会の促進を目指して開始した「アジア太平洋障害者センター(APCD:Asia-Pacific Development Center on Disability)支援プロジェクト」。プロジェクトの初代チーフアドバイザーである二ノ宮アキイエ氏を中心に、スタッフや障害者自身の言葉や目線で、その取り組みが描かれています。

書籍『Forced Migration and Humanitarian Action: Operational Challenges and Solutions for Supporting People on the Move』

本書は、強制移住者(移住を強いられた人)の刻々と変化する状況がどのように説明され、どのような人道支援を受けているかを考察し、彼らがより支援にアクセスしやすくなるよう目指したものです。アフリカ、アジア、ヨーロッパ、太平洋地域の事例を通じ、伝統的・非伝統的アクターがさまざまな方法・種類の支援によって、移住を余儀なくされた子ども、女性、障害者、高齢者、そして人身取引の被害者となった移民労働者の個別のニーズにどのように対応してきたかを見ていきます。障害者については、チャプター4「From Policy to Practice: The Evolution of Disability-Inclusive Humanitarian Action on Internal Displacement in Vanuatu and Nigeria」で取り上げられています。

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リサーチ・ペーパーNo.3 「Special Education Needs and their Multiplicity: Qualitative Analysis of Policy and Interview Surveys from the Communities Surrounding People with Hearing Impairments in Nepal」

多様な人々がお互いの個性やニーズを認め合い、社会の中で共に働き、生活している状態を指す「包摂性(インクルージョン)」。本ペーパーでは、人々が生活し、さまざまなニーズを持つ多様な文脈において、複数の意味を持つことを「多面性(multiplicity)」と定義し、現実の社会では、人々の特別な教育ニーズの多面性によって、ネパールにおける聴覚障がい者を取り巻く地域社会の政策分析と、聴覚障がい者自身、ならびにその教育関係者へのインタビューを通じた事例研究を行いました。

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インタビュー【JICA-RIフォーカス 第42号】伊芸研吾研究員に聞く

さまざまな分野で実施されている実証分析も、障害の分野ではまだあまり行われていません。この分野でこそ、実証分析でできることがある—。そのような想いで南アフリカ共和国の障害分野の研究を実施した伊芸研吾研究員(当時)に、その取り組みを聞きました。

ワーキングペーパーNo.204 「Does Learning the Social Model Improve Behavior towards Persons with Disabilities? A Randomized Experiment for Taxi Drivers in South Africa」

ランダム化比較試験の手法を用いて、障害の社会モデルに関する障害平等研修(Disability Equality Training, DET)のインパクト評価を行いました。南アフリカのタクシー運転手を対象に、質問紙調査で彼らの障害への理解のデータを、覆面調査を通じて障害のある乗客に対する実際のサービスのデータをそれぞれ研修の前後に収集し、分析しています。

ワーキングペーパーNo.168 「Were the Adverse Effects of Disability on Employment Mitigated during 2002-2015 in South Africa?: A Pseudo-Panel Approach」

疑似パネルデータアプローチを応用し、南アフリカにおいて障害が雇用に与える影響や、その影響の時間的な変化を推計しています。分析の結果、雇用される確率および労働市場から退出する確率に対して、障害が統計的に有意な影響を与えていることが分かりました。

ワーキングペーパーNo.142 「Untangling Disability and Poverty: A Matching Approach Using Large-scale Data in South Africa」

障害と貧困は、密接かつ複雑に関係していると考えられ、また障害自体複雑な概念であることから、その関係を解明することは容易ではありません。本ペーパーでは、マッチング法と南アフリカの大規模家計データを用いて、障害者と非障害者の多元的貧困状態を比較し、その差をより精緻に推定しています。

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開発協力文献レビューNo.6「障害とは何か-ケイパビリティアプローチの視点から」

障害分野の取り組みを考えるために、障害とは何かを改めて考え、近年注目を集めているアマルティア・センのケイパビリティアプローチの障害への応用に関する研究を紹介しています。

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