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研究を母国の変革につなげるには?貝塚研究員がJICA開発大学院連携プログラムのワークショップを開催

2026.08.18

JICA開発大学院連携プログラム は、開発途上国の将来のリーダーとなる人材を日本に招き、日本独自の近代化・発展の経験や、戦後の援助国としての日本の歩みについて学ぶ機会を提供しています。本プログラムのもと、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は国際大学と連携し、教員・学生向けの教材 開発を行っています。

その一環として、JICA緒方研究所の貝塚ジェームズ 研究員は2025年にケース教材「How can your knowledge and research from Japan create wider impacts at home? A case study of educational robotics in the Rwandan national curriculum 」を執筆しました。同ケース教材では、アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ) の参加者であるルワンダ出身のガブリエル・バジラムワボ氏を取り上げています。神戸情報大学院大学で教育ロボティクスを学んだバジラムワボ氏は、プログラミング教育を一部のエリート層だけでなく、より多様な子どもたちが受けられるようにすることを目指し、日本での研究成果を母国で国家レベルの教育改革に発展させました。このケースは、海外で得た知識を現地の状況に合わせて応用し、社会全体に広がるインパクトを生み出す可能性を示しています。

研究から国家レベルの教育改革へ

2026年6月24日、同ケース教材をもとに、貝塚研究員は国際大学でワークショップを実施し、日本で学んだことをどのように自国の発展に生かせるかを留学生とともに議論しました。

まず、オンライン参加したバジラムワボ氏が自身の経験を紹介し、ルワンダで教育ロボティクスを導入するには、プログラミング教育が英語を前提としていること、既存技術の導入コストの高さ、インフラ整備や教員研修を必要とすることによるアクセスの制限、学習を始めたばかりの子どもたちの関心を十分に引き出せない既存の教育手法など、さまざまな課題があったと振り返りました。こうした課題に対応するため、バジラムワボ氏は日本留学中に、低コストの教育用ロボット「Benax」と、現地語であるキニャルワンダ語をベースとしたプログラミング言語「BenaXcript」を開発。これにより、ルワンダの子どもたちにとって言語面や経済面での障壁が低減され、プログラミング教育をより身近で魅力的なものにすることが可能となりました。

2018年にルワンダに帰国したバジラムワボ氏は、教育現場での指導やカリキュラム開発を通じて、研究成果をさらに発展させます。ルワンダの幼稚園・初等・中等教育機関であるニュー・ジェネレーション・アカデミーで実施されたパイロット事業で有望な成果が確認された後は、9年間にわたる教育課程の開発や、26校を対象とした全国的な試行プログラムへとつながっていきました。この事例は、地域の実情に根差したイノベーションが拡張可能な教育改革へとつながり得ることを示しています。また、成功の要因は技術そのものだけではなく、カリキュラム設計、教員研修、現地での生産体制、関係機関との連携といったイノベーションを支えるエコシステムの構築にあったと強調しました。

写真:日本での研究をルワンダの教育改革へと発展させた経験を語るガブリエル・バジラムワボ氏(右上、オンライン参加)

日本での研究をルワンダの教育改革へと発展させた経験を語るガブリエル・バジラムワボ氏(右上、オンライン参加)

研究成果を活用して社会にインパクトを

次に行われたアフリカやアジア出身の留学生とのディスカッションでは、貝塚研究員が進行役を務め、大学からの支援の役割、ルワンダにおける教育ロボティクス導入の課題、研究成果と国家開発との関係などについて意見を交わしました。議論は、ケース教材で提示された以下の6つの問いを中心に進められました。

1. バジラムワボ氏が修士論文のテーマとして教育用ロボティクスを選んだ背景には、どのような要因があったか。
2. マーコン博士(※神戸情報大学院大学の指導教官)からの支援は、日本滞在中やルワンダ帰国後にどのような形で役立ったか。
3. これまで教育用ロボティクスをルワンダに導入する取り組みを制約していた要因にはどのようなものがあったか。
4. Benaxロボットのどのような特徴がルワンダのニーズに適していたか。
5. バジラムワボ氏の研究は、ルワンダの国家戦略とどのように合致していたか。
6. バジラムワボ氏の事例から、あなた自身の日本での研究に応用できる要素は何だと思うか。また、彼のように自国の発展に貢献するために、あなたはどのような貢献ができると考えるか。

留学生たちは、プロジェクト管理やガバナンス、ITなど各自の専門分野において、それぞれの国が抱える課題やニーズに合わせて研究成果を活用していく重要性について意見を述べたほか、ケース教材の設問1~5 について検討した後、設問6 「今回のワークショップから得た教訓を、自国でどのように生かすことができるか」について議論しました。バジラムワボ氏の取り組みに触発されたという声が数多く寄せられ、「修士論文の研究成果を学術誌に投稿したい」「帰国後にさらに研究を発展させ、政策決定者の関心を集めたい」「政策担当者に直接研究成果を発信したい」といった意見が挙がりました。

今回のワークショップでの重要な教訓は、「研究を生かし続けること(keep the research alive)」。留学生たちの研究には学位取得だけではない価値があるからこそ、適切に発展・活用することで社会に実質的なインパクトをもたらす可能性があることを認識する機会となりました。

JICAは、日本全国の大学と連携し、約100ヵ国からの留学生を受け入れています。JICA緒方研究所は、教材開発やワークショップの実施を通じて、母国の発展を担う次世代リーダーの育成に引き続き取り組んでいきます。

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