『マダム、これが俺たちのメトロだ! インドで地下鉄整備に挑む女性土木技術者の奮闘記』
JICA研究所では、これまでに行ってきたJICAの事業を振り返り、その軌跡と成果を分析してまとめた書籍「プロジェクト・ヒストリー」シリーズを刊行しています。本シリーズの第20弾として、『マダム、これが俺たちのメトロだ! インドで地下鉄整備に挑む女性土木技術者の奮闘記』を刊行しました。
急速な経済成長に伴い、インフラ整備が進むインド。しかし、広大な国土を結ぶ中・長距離の鉄道網は早くから整備されていたものの、人々が通勤などで都市部と郊外を移動するための短距離の鉄道路線網は未整備でした。近年、大都市では自家用車の急増による交通渋滞、それによるバスなどの公共交通機関の遅延、排気ガスによる大気汚染といったさまざまな問題が浮き彫りに。その打開策として持ちあがったのが地下鉄(メトロ)の建設です。鉄道技術の知見を持つ日本が協力し、1997年に始まった首都デリーでのメトロ建設事業であるデリーメトロの成功が、その後、バンガロールやコルカタといったインド各都市でのメトロ整備へとつながっていきます。
本書は、そのようなメトロ建設事業の現場で奮闘する著者である阿部玲子氏の活動の様子と、日本でさえ男性社会といえるこの土木業界を志すに至った経緯を描いたものです。著者は土木コンサルタントとして、デリーメトロをはじめインド各地の工事現場を担当していますが、安全管理が徹底されておらず、ヘルメットをかぶらず裸足で歩きまわる作業員がいたり、スケジュール管理の意識が低く、工期が遅れるのは当たり前だったりと問題が山積みでした。そこで、当初のコンサルタント業務には組み込まれていなかった安全対策や環境対策といった活動を提案し、人脈をフル活用して課題解決に取り組んだのです。「女性だから」という理由で味わった理不尽な経験を乗り越え、着実にインドの人々の信頼を勝ち取っていった奮闘の日々が、満載のエピソードと共につづられています。
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