母子手帳

各国の事例(アフガニスタン、アンゴラ、インドネシア、ガーナ、パレスチナ、フィリピン、ブルンジ、ベトナム)

アフガニスタン

長年にわたる戦乱や自然災害によって、未だ母子の健康水準が低いアフガニスタン。2015年にJICAがインドネシアにて行った母子保健に関する研修に、アフガニスタン公衆衛生省からの研修員が参加したことがきっかけとなり、2016年6月からフォローアップ協力として母子手帳の作成・導入を支援することになりました。協力の中では、公衆衛生省を中心に複数の開発パートナーが一丸となって委員会を組織し、複数の民族が居住しているうえ、女性の識字率が10%台という社会的背景を踏まえ、イラストを多用した母子手帳を2言語(ダリ語、パシュトゥ語)で作成。その後、母子手帳の運用のための指針作成と保健従事者への研修を経て、パイロット地域で試行的導入を行いました。

今後、国際機関連携無償(UNICEF連携)などを通じて、全国への普及に向けて協力を進めていきます。

アンゴラ

アンゴラでは、妊婦用の「妊産婦手帳」と乳幼児用の「子ども健康カード」が使われてきましたが、産前産後の継続的な記録は行われてきませんでした。アンゴラ保健省の人材局長が2012年に日本で研修を受けた際に妊娠時から子どもが5歳になるまでの記録を1冊でカバーできる母子健康手帳に衝撃をうけ、導入を決意。JICAの協力により2013年から既存の妊産婦手帳や子ども健康カード等を統合する形で母子健康手帳を開発してきました。分かりやすいようにイラストを多く用いたり、「お産は女性一人の仕事」といった伝統的な考えが強いため表紙のイラストを夫婦と赤ちゃんにして父親の育児への参加も促したりという工夫をしています。プロジェクトでは、3つのモデル州への導入や医療従事者への研修を始め、将来的には全国展開を目指しています。

インドネシア

インドネシアでは、1993年からJICAの協力のもと母子手帳の開発を開始し、1997年には国の標準版が完成、2006年からは全州で導入されました。その後も約5年ごとに改訂し、2016年には約500万部の母子手帳が印刷されています。多様な社会文化背景を持つ方々に役立つよう、地域色ある表紙やイラスト、あるいは地域の感染症や離乳食情報などを加える工夫や、卒前教育や助産師協会などを通じた保健医療従事者への活用促進もされてきました。さらに2007年からは、国外からの研修生を受け入れ、他国の母子手帳に関する取り組みを支援しています(2017年までに9回開催し、アジア・アフリカの14ヵ国から135人を受け入れています。)。2018年度からさらに5年間の国際研修が計画されており、JICAも協力を継続します。

ガーナ

ガーナでは、妊婦用の「母手帳」と乳幼児用の「子ども手帳」が長年使われていましたが、母親の理解と行動を促す内容ではなく、また、新生児期の状態やケアが記録されていませんでした。JICAの協力により2018年3月に完成したガーナ母子手帳は、母子の健康を継続的に記録するとともに、母親や家族に向けた健康情報も多く含まれています。公用語の英語が読めない母親向けのイラストや、男性や若者に向けたメッセージもあります。プロジェクトでは、ヘルスワーカーが手帳を有効に活用して母子一人ひとりの状況に応じた治療や指導を行うことができるよう全国で研修を実施しています。ガーナ母子手帳は、家族全員の質の高い生活に寄与し「すべての人の健康」を目指します。

プロジェクト情報

論文・研究

記事・投稿

パレスチナ

域内外に多くの難民を抱えるパレスチナでは、JICAの協力により2005年にアラビア語版母子健康手帳作成の協力を開始し、2008年からはヨルダン川西岸のパレスチナ自治区の全公立医療機関、UNRWAやNGOの医療施設でも手帳の運用が開始されました。その後、ガザ地区と、ヨルダン、シリア、レバノンにあるUNRWAパレスチナ難民キャンプの診療所でも母子手帳が活用されています。JICAとUNRWAは、更にパレスチナ難民向けに母子手帳のスマートフォンアプリを開発し、2019年4月からヨルダンで運用を開始しています。このアプリを利用すればスマホから母子手帳の情報が確認できるほか、子どもの予防接種時期を知らせる通知も受信できます。

フィリピン

フィリピンでは、1990年代から地方分権の下で、母子手帳の支援も地方ごとに行われてきましたが、それぞれに興味深い発展をみせています。山岳地帯のコーディレラ地域では、町の分娩施設と村の保健施設をつなぎ、妊娠中に国民健康保険への加入を促す手段としても活用されています。東ビサヤ地域では、複数の言語で作成され、村落保健ボランティアや地域保健担当者が、きめ細かく一人ひとりの母子を見守る手段として活用されてきました。2013年にこの地を襲った台風ヨランダで、甚大な被害を受け一度は流されましたが、復興後すぐに再発行され、母子手帳の必要性が再認識されました。

ブルンジ

ブルンジでは、2010年に「成果に応じた保健財政(PBF)」という医療施設における財源確保の仕組みが導入され、医療ケアやサービスの質に基付いて資金が提供されるようになりました。これに合わせて、施設の医療記録様式を改訂し充実させる必要があり、この改訂という機を捉えて、2013年、家庭に保管する母子の健康カードを統合する形で母子手帳が開発されました。パイロット地域では、出生証明書所持率が改善し、産後ケアに関する説明を受けた母親の割合が増えました。また、産前から産後までの継続ケアの促進を担うツールとして国に認められ、2014年7月には母子手帳の国家承認が下りました。2015年に出された保健省と内務省の共同省令は、出生登録時を含めて母子手帳の活用の方向性を示しています。さらに、2017年4月からは、保健サービスのケアの質を評価する際に、母子手帳の運用状況も確認されることになりました。

ベトナム

2011年2月、母子健康手帳全国展開プロジェクトが、母子健康手帳の全国標準版の開発とその全国展開を目的として開始しました。同プロジェクト実施の過程で、ベトナムには母子健康手帳以外に、小児予防接種カードや小児成長モニタリングカード、さらには母子健康手帳と同様に母子の両者を対象とした記録用手帳などが多く存在することが明らかになりました。母親の中にはそれらのカードや手帳類を紛失してしまったり、保健スタッフは様式の異なる記録媒体への記入に混乱しつつも日々奮闘していることも分かりました。プロジェクトにより開発された全国標準化版の母子健康手帳導入により、これらの記録が一本化され、紛失リスクの低減や保健所等の保健施設における業務の効率化に貢献しました。ベトナムの母子健康手帳は、現在も全国展開に向け少しずつその歩みを進めており、近年中に全63省での導入が完了することが期待されています。

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