JICA緒方研究所

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開発協力の担い手としての成果に注目-第5回青年海外協力隊研究セミナー開催

2015年5月29日

JICA研究所は2015年5月15日、第5回となる青年海外協力隊(JOCV)研究セミナーを開催しました。JICA研究所では、政治学、人類学、社会学など様々な学問の観点から青年海外協力隊(JOCV)事業を分析する研究プロジェクト「青年海外協力隊(JOCV)の学際的研究」を実施しています。

 

発表に聞き入る参加者
発表に聞き入る参加者

協力隊事業には、開発協力、日本と開発途上国間の相互理解、青年育成という3つの目的がありますが、今回は「隊員がもたらすもの-開発協力の担い手」と題し、その開発協力の側面に焦点を当てました。隊員がどのような役割を果たし、どのような成果を出したのか、また、成果をあげるためにはどのような条件が求められるのか、研究代表の岡部恭宜JICA研究所客員研究員(東北大学教授)の進行のもと、3人の研究者が考察しました。発表者や参加者からは「協力隊は開発協力の面でも大きな成果をあげている」との議論が相次ぎました。

 

JICA研究所の畝伊智朗所長は、冒頭のあいさつで、今年50周年を迎えた協力隊事業について「国民によく知られているにもかかわらず、充分な研究がされてこなかった。協力隊員が開発協力のアクターとしてどのように活躍しているのか、研究の視点から分析することは重要である」と述べました。また、司会の岡部客員研究員は、協力隊は青年育成のための事業であるとの理解も散見されるが、隊員はなによりも途上国に協力したい人たちであり、その担い手としての役割を正面から分析することが、今回のセミナーの目的であると紹介しました。

 

岡部研究代表(右)
岡部研究代表(右)ら

最初に、JICA研究所の細野昭雄シニアリサーチアドバイザーが、「青年海外協力隊とキャパシティ・ディベロップメント」について発表しました。取り上げられた事例はいずれも中米のプロジェクトであり、算数教育、藍染技術の復興、遺跡保存と観光振興という3つの分野で隊員が貢献したことを論じました。例えば、「算数プロジェクトでは、協力隊員と現地の教員の交流が教員の意識を高め、キャパシティ・ディベロップメント(能力向上)につながった。これは、協力隊員の活動がなければなし得なかった成果である」と評価しました。

 

続いての発表は、JICA青年海外協力隊事務局アジア・大洋州課の上田直子課長による、「『心』にはたらきかけた隊員たち-バングラデシュ予防接種、中米シャーガス病対策から考える」。ポリオの予防接種への理解を促すため、集会や戸別訪問を行ったバングラデシュでの取り組みや、シャーガス病を媒介するサシガメの生息数を減らすために行ったホンジュラスでの啓発活動の例を取りあげました。隊員が現場で行政と住民の双方に働きかけることで、それまで距離があった行政と住民との間でやりとりが生まれ、信頼を生むきっかけとなったと指摘。「隊員が地域の人々に寄り添うことで、行政と住民の関係性だけでなく、地域の人々の感情に変化を与え、社会の仕組みと機能を変えた」とまとめました。

 

徳島研究員ら
徳島研究員(右)ら

最後に、慶応大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボの徳島泰研究員が、「ルーラルエリアにおけるテクニカル・キャパシティへのエンパワメントとは-フィリピンFabLabプロジェクトの事例から」を発表しました。近年、社会の推進・変革の担い手として新しいものを創り出す人々「クリエイティブ・クラス」が着目されています。徳島研究員は、2014年12月まで協力隊員としてフィリピンの農村部に赴任し、クリエイティブ・クラスと協力した地域開発という前例のない取り組みを立ち上げました。この取り組みを事例に、協力隊員がキャパシティ・ディベロップメントの中でどんな活動ができるかを説明し「技術の向上やまったく新しい援助アプローチによる先進事例の取り組みでも、協力隊は開発協力に貢献できる」と分析しました。

 

50年の活動を紹介する写真も展示された
50年の活動を紹介する写真も展示された

発表後、討論者として参加したJICA研究所の下田恭美研究員は、「個人と社会を包括的に向上させるキャパシティ・ディベロップメントの実現には長い時間がかかる。協力隊が同じ分野で継続して活動していくことで、その実現が可能になるのではないか。他方で、前例のない柔軟な活動ができることも、協力隊の成果の土台になっている」とコメント。また、畝所長は、「アフリカのカウンターパート(協力相手)からは、日本人と一緒にやるとうまくいくと言われることが多かった」と述べ、その背景と協力隊の成功要因との共通性を示唆しました。

 

セミナーには、協力隊の経験者や学生をはじめ約70人が参加し、最後に行われた質疑応答では、協力隊の活動を継続させるためのJICAのバックアップ体制や、達成感や内発的動機の計測・比較方法、さらに日本社会やアジアの近隣国への波及効果などについて質問が寄せられました。

 

関連ファイル

発表資料:青年海外協力隊とキャパシティ・ディベロップメント(2.0MB)

日時2015年5月15日(金)
場所JICA市ヶ谷ビル



開催情報

開催日時2015年5月15日(金)
開催場所JICA市ヶ谷ビル

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