2015年の持続可能な開発目標（SDGs）や気候変動対策に関するパリ協定などを受け、サステナビリティへの世界的な関心が高まる中、近年、サステナブルファイナンス（持続可能な社会を実現するための金融）が注目を集めています。Global Sustainable Investment Review 2022 によると、とりわけ日本における増加は目覚ましく、サステナブル投資の額は2016年の0.48兆ドルから2022年の4.29兆ドルへと10倍近くに増加しています。しかし、サステナブルファイナンスの投資先は未だ先進国が中心であり、多くの開発課題と資金ニーズを抱える途上国向けのファイナンスをさらに増やしていくことが求められています。

そして、途上国の人口・経済規模が拡大する中、それらの国々が抱える多くの開発課題は、民間企業にとっては、自らの資金や技術、サービスを活かすビジネスチャンスでもあります。

2023年に改定された開発協力大綱 でも、民間企業との連帯の強化や、サステナブルファイナンスの取り組みの後押しを謳っています。その後、2024年に「開発のための新しい資金動員に関する有識者会議」 が外務大臣に提出した提言 では、ODAを触媒として多様な主体が連携し、民間企業・投資家による経済合理性に基づく投資が結果的に途上国の開発へとつながっていくような「エコシステム」作りが重要であると述べられています。

JICAは、これまでにも、日本の民間企業による優れた技術・製品の導入や海外でのビジネスへの参入を、海外投融資や中小企業・SDGsビジネス支援事業などにより支援 してきました。近年では、民間金融機関や他の開発金融機関との連携によるインパクト投資ファンドへの出資や、「企業共創プラットフォーム」 、「JICA PLACE」 （JICA海外協力隊員と企業のマッチング）などの場作りにも取り組んできました。

そして、2025年1月に発刊された書籍「For the World’s Profit: How Business Can Support Sustainable Development 」（JICA緒方貞子平和開発研究所とブルッキングス研究所の第7次共同研究 の成果）では、企業関係者、金融関係者、ポリシーメーカー・規制監督者の三部構成で、持続的な開発に向けた民間ビジネスの貢献を促進するための取り組みや課題を紹介し、提言を行っています。

本ナレッジフォーラムでは、同書籍の編者であるブルッキングス研究所 シニアフェローのホミ・カラス氏 を始め、編者や執筆者より同書籍の主要メッセージを紹介します。その後のパネルディスカッションでは、ビジネス界やアカデミアからの有識者もお招きして、途上国が抱える開発課題に焦点を当て、民間企業のリソースやイノベーションをそれらの課題解決につなげていくためには、どのような取り組みが必要か、企業関係者や金融機関、ポリシーメーカーや市民社会といった様々なステークホルダーがどのように協働していくべきか、といった点について議論します。

パネルディスカッションでは、外務省「開発のための新しい資金動員に関する有識者会議」の座長を務めた大野泉氏 （政策研究大学院大学 名誉教授）、同会議メンバーの渋澤健氏（シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 CEO／トリプルI共同議長）、高橋裕典氏（公益財団法人 味の素ファンデーション ガーナ駐在、ココプラスファンデーション カントリーダイレクター）、そして、JICAの平田仁上級審議役をパネリストに迎え、同書籍の編者を務めたJICA緒方研究所の牧野耕司客員研究員（京都大学 特定教授）がモデレーターを務めます。

16:00-16:05（5分）開会あいさつ
・宮原千絵 ：JICA緒方研究所 副所長

16:05-16:45（40分）書籍紹介
・ホミ・カラス：ブルッキングス研究所 シニアフェロー／ JICA緒方研究所 研究パートナー（ビデオメッセージ）　　
・松本勝男：JICA 上級審議役
・佐藤一朗 ：JICA緒方研究所 上席研究員
・牧野耕司 ：京都大学 特定教授／JICA緒方研究所 客員研究員

16:45-18:00（75分）パネルディスカッション「ビジネスの力を途上国のSDGs推進につなげるためのエコシステム作り」・質疑応答
パネリスト：
・渋澤健：シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 CEO／トリプルI共同議長
・高橋裕典：公財）味の素ファンデーション　ガーナ駐在
／ココプラスファンデーション カントリーダイレクター
・大野泉 ：政策研究大学院大学 名誉教授／外務省 開発のための新しい資金動員に関する有識者会議 座長／JICA緒方研究所 シニア・リサーチ・アドバイザー
・平田仁：JICA 上級審議役
モデレーター：
・牧野耕司 ：京都大学 特定教授／JICA緒方研究所 客員研究員

以下のリンクからお申し込みください。
※お申込みは2025年3月4日12:00（正午）で締め切らせていただきます。

JICA緒方貞子平和開発研究所（担当：梶野）
メール：dritrp@jica.go.jp