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【今月の研究ピックアップ】9月12日は国際南南協力デー

2025.09.08

(写真:JICA/久野真一)

開発途上国が、技術や知見の共有を通じ、他の開発途上国の開発を支援する南南協力。開発途上国間での技術協力の促進を目指し、1978年に「ブエノスアイレス行動計画(Buenos Aires Plan of Action: BAPA)」が採択されたことを記念して、国連は9月12日を「国際南南協力デー 」に制定しました。

日本が国際協力を開始したのは、日本自身がまだ戦後復興の途上にあった1954年であり、南南協力の先駆けであったと考えることもできます。そして、1975年にタイで開始した第三国研修を皮切りに、JICAは50年以上にわたり、開発途上国間の南南協力を資金・技術・運営方法などで支援する三角協力を推進してきました。近年では、新興ドナーとの連携強化にも力を入れ、国際機関などと協力しながら開発協力の効果を最大化する取り組みを進めています。

JICAの取り組みの概要はこちら↓

JICA緒方研究所では、南南協力・三角協力や新興ドナーについてのさまざまな研究を行ってきました。その研究成果の一部を紹介します。


持続的な開発成果の発現に向けた効果的な開発協力アプローチとして、南南協力・三角協力への関心が高まったことを受け、以下の3本のレポートをまとめました。

レポート『Scaling Up South-South and Triangular Cooperation』(2012年)

21世紀の国際協力と南南・三角協力についての考察や、南南・三角協力による「気候変動と災害リスク管理」、「キャパシティ・ディベロップメント」、「スケーリングアップ」について紹介しているほか、アジア、アフリカ、中南米地域での多様なJICA協力事例が掲載されています。

レポート『Triangular Cooperation Mechanisms: A Comparative Study of Germany, Japan and the UK』(2014年)

三角協力に関わっているDAC加盟国の仕組みを解説し、特に三角協力を積極的に活用しているドイツ、日本、英国を事例として取り上げながら、計画、資金調達、予算編成に焦点を当てて比較分析を行っています。

レポート『Japan's Triangular Cooperation Mechanism: With a Focus on JICA's Activities』(2014年)

JICAにおける三角協力の形態と活動メカニズムの主要な特徴と実績を主に論証しています。

近年は、さまざまな新興国が国際社会での存在感を増し、自身の開発経験を生かして他の開発途上国を支援するなど、新たな開発協力の担い手として注目されています。そうした新興国の動きについても、以下の研究を実施してきました。

ワーキングペーパーNo.2 「How Do "Emerging" Donors Differ from "Traditional" Donors?—An Institutional Analysis of Foreign Aid in Cambodia—」(2010年)

新興ドナーを“一枚岩”のように捉える傾向があった既存研究に対し、カンボジアという援助の受け手に焦点を絞り、中国、インド、韓国、タイが、それぞれどのような援助を展開しているのか現地調査に基づいて解明しています。

研究プロジェクト「開発協力戦略の国際比較研究:G20新興国を中心に」(2012~2014年)

中国、インド、インドネシアなどの新興国による開発協力の多様な実態を解明したほか、日本の開発協力によって移転された知識や経験をタイなどの新興国がどのように自らの開発協力に活用しているかの解明も試みました。さらに開発途上国間の知的交流の潜在的可能性も指摘しています。

研究プロジェクト「新興国の開発協力とその影響に関する研究」(2016~2024年)

新興国の台頭による既存の国際的な開発協力規範の変化、新興国による開発協力に対する被協力国の対応、開発協力の拡大に伴う新興国の国内体制整備といった点を中心に、新興国による開発協力の実態とその影響について考察しました。

同研究プロジェクトの成果を踏まえた政策提言は、こちらのポリシー・ノートにまとめられています。↓

「新興国との知識共創」研究会(2025年~)

新興国の開発協力の特徴的な理念やアプローチ、取り組みへの理解を深め、それを通じて日本の開発協力アプローチを相対化して検討することで、国際場裡で打ち出すべき日本の開発協力の特徴や、アジェンダセッティングにおける新興国との連携可能性について示唆を得ることを目指しています。

この他、JICAプロジェクト・ヒストリーシリーズにも、開発途上国間での技術・経験の共有を通じ、各国の技術・能力向上や、JICAの協力成果の拡大につながった事例が出てきます。その例をいくつかご紹介します。

プロジェクト・ヒストリー『プノンペンの奇跡 世界を驚かせたカンボジアの水道改革』

カンボジアがタイなどから技術指導を受けた様子を紹介。その後、カンボジアも東ティモール や南スーダン などに対する研修を実施。

プロジェクト・ヒストリー『流域コモンズを水銀汚染から守れーウルグアイにおける統合的流域水質管理協力の20年』

ウルグアイが中南米諸国に対し、河川流域管理、水質管理、水銀汚染対策の研修を実施。

プロジェクト・ヒストリー『TAMPOPOの綿毛が風に飛んでいくーブラジルろう者「当事者主体」の奮闘の軌跡』

ブラジルがモザンビークやアンゴラに対し、障害当事者による非識字層の障害者へのHIV/AIDS教育の経験を共有。

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