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プロジェクト・ヒストリー『海外協力隊と大学院で国際協力の道を目指す―ザンビア特別教育プログラムの軌跡』出版記念セミナー開催

2026.01.30

2025年12月17日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、プロジェクト・ヒストリー『海外協力隊と大学院で国際協力の道を目指す―ザンビア特別教育プログラムの軌跡 』出版記念セミナーを開催しました。通称“ザンプロ”と呼ばれるザンビア教育特別プログラムは、広島大学大学院修士課程の学生がJICA海外協力隊の理数科隊員としてザンビアで活動しながら研究も同時に行う取り組みです。本セミナーでは、このザンプロの軌跡が描かれた書籍紹介に加え、ザンプロの意義やキャリア構築、今後の展望について議論が行われました。

写真:さまざまな視点からザンプロの意義などについて議論

さまざまな視点からザンプロの意義などについて議論

研究と実践をつなぐことこそザンプロの強み

まず開会あいさつに立ったJICA緒方研究所の亀井温子 副所長は、2025年にJICA海外協力隊が60周年 を迎え、これまでに5万8,000人を超える隊員が世界各地で活動し、現地の人々と信頼関係を築いてきた歴史を説明。その上で、研究と協力隊としての活動を同時に行うザンプロの価値を「理論と実践の往還」であると述べ、国際協力人材の輩出において重要な役割を担っていると強調しました。

続いて、自身も協力隊に参加した経験を持ち、ザンプロの発展に深く関わってきた本書の著者である広島大学大学院の馬場卓也教授が本書について紹介しました。馬場教授は、ザンビアの教育課題として、子どもたちの就学率が向上して学校に通えるようになっても、基礎的な読み書きや算数の能力を十分に身につけられない「学習貧困」が深刻であることを説明。その一方で、教室で垣間見た子どもたちの解答例から、「彼らは、時間はかかっても数の意味は理解している。もっと子どもたちの学力を伸ばせるのではないか?」というリアルな“気づき”があったことを挙げ、それこそが研究と実践を結びつける出発点になると強調しました。よく学生から問いかけられる「協力隊と大学院、どちらに先に行くべきか?」という質問に対して、「両方を同時にやったほうがいい」と回答し、協力隊員として現場にどっぷりと入って活動しつつ、研究として客観的に分析する視点を同時に育むことができるのがザンプロ最大の特徴だと強調しました。

写真:本書の著者であり、ザンプロの発展に深く関わってきた広島大学大学院の馬場卓也教授

本書の著者であり、ザンプロの発展に深く関わってきた広島大学大学院の馬場卓也教授

ザンプロがもたらしたキャリア形成とこれから

続いて、JICA緒方研究所の池田亜美 研究員がモデレーターを務めたディスカッション・セッションでは、馬場教授のほか、ザンプロ修了生とJICA海外協力隊事業の担当者も加わり、それぞれの立場からザンプロを振り返りつつ、さまざまなテーマで議論しました。

JICA青年海外協力隊事務局の三津間由佳課長補佐は、現在、団体が主体となって協力隊を派遣する連携派遣 は約70件あり、そのうち約50件の団体は大学であることを紹介。大学との連携により、タイムリーに、計画的かつ継続的な人材派遣が可能となり、知見が蓄積し、現地とのつながりが連鎖して活動が広がっていく強みを紹介しました。また協力隊の現場で培う突破力や問題解決力などの人間力が、グローバル人材として高く評価されているとも述べました。

写真:モデレーターを務めたJICA緒方研究所の池田亜美研究員

モデレーターを務めたJICA緒方研究所の池田亜美研究員

写真:JICA青年海外協力隊事務局の三津間由佳課長補佐

JICA青年海外協力隊事務局の三津間由佳課長補佐

また、ザンプロ修了生である辻本温史氏(笹川平和財団研究員)と島本史也氏(札幌旭丘高等学校教諭)は、自身の経験を振り返りながら、ザンプロがキャリア形成に与えた影響を語りました。

教育開発を専門として開発協力の実務に携わる辻本氏は、「ザンビアで理数科教師として目の前の子どもたちと向き合いながら、同時に研究として客観的に見ないといけないのは、正直、とてもしんどかった。そのような厳しさがありながらも、『なんでできないんだろう?なぜこうなるんだろう?』を問い続ける姿勢が培われたことが、実務と研究を往還するキャリアを歩む上で大きな財産になっている」と語りました。また、ザンプロ修了生同士のネットワークが強く、世代を越えて同志としてつながり続けている点もザンプロの強みとして挙げました。

スーパーサイエンスハイスクールや国際バカロレア認定校などで教員としてのキャリアを積み重ねている島本氏は、「ザンビアでの研究手法が、日本の教育現場での授業改善や探究的な学びの指導に生かされている」と述べました。さらに、ザンビアと関わり続けたいという想いを生かし、ザンプロ修了生らとともにネットワークを生かしてザンビアで授業を行ったり、ザンビアの学生を札幌に呼んで交流したりと、新しい取り組みに挑戦していることも紹介しました。

写真:ザンプロ修了生としてディスカッションに参加した辻本温史氏

ザンプロ修了生としてディスカッションに参加した辻本温史氏

写真:ザンプロ修了生としてオンラインで参加した島本史也氏

ザンプロ修了生としてオンラインで参加した島本史也氏

馬場教授は、「一つの国の理数科教育を20年ずっと研究してきた例は他にないのではないか。研究では、簡単に答えは見つからない。迷いながら、もやもやとした課題意識を抱え続けることが原動力になる」と述べました。また、「無からザンプロを生み出した中で感じたのは、しんどくても、やりながらだんだんおもしろくなっていくということ。変わり続ける世界で、国際協力も変わっていく。次の世代にも、ぜひ新しいやり方を生み出してほしい」と期待を寄せ、セミナーを締めくくりました。

このセミナーの動画は以下からご覧になれます。

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動画:【セミナー】『海外協力隊と大学院で国際協力の道を目指す―ザンビア特別教育プログラムの軌跡』(JICAプロジェクト・ヒストリー)

【セミナー】『海外協力隊と大学院で国際協力の道を目指す―ザンビア特別教育プログラムの軌跡』(JICAプロジェクト・ヒストリー)

また、JICA緒方研究所による海外協力隊に関連する研究については、以下からご覧ください。

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