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JICA緒方研究所ナレッジフォーラム「新興開発パートナーと拓く新たな協力―知識共有から知識共創への転換―」開催

2026.09.01

2026年7月1日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、「新興国との知識共創 」研究会の成果発表の場として、ナレッジフォーラム「新興開発パートナーと拓く新たな協力―知識共有から知識共創への転換― 」を開催しました。研究成果であるポリシー・ノートNo.21「包摂的な国際開発アーキテクチャーに向けた知識共創の提案 ―新興開発パートナーと日本の役割―」 の提言や論点をもとに、東南アジア、中東、中南米、アフリカなどさまざまな地域における新興開発パートナーとの協力の機会と課題について、活発な議論が展開されました。

開会あいさつに立ったJICA緒方研究所の亀井温子 副所長は、地政学的な緊張の高まりや、伝統的な開発パートナーによる政府開発援助(Official Development Assistance: ODA)の縮小もあり、複雑さが増す世界情勢の中、新興開発パートナーとの協力の重要性が高まっていることを強調しました。また、開発とは相互に学び合うプロセスであると指摘し、従来のような一方向的な知識共有だけでは複雑化する開発課題に対応できないため、多様な主体が対等かつ相互的な関係のもとで学び合う「知識共創(Knowledge Co-creation)」への転換を訴えました。

続いて、JICA緒方研究所の大野泉 シニア・リサーチ・アドバイザー(政策研究大学院大学名誉教授)がモデレーターを務めたパネルディスカッションが行われました。冒頭で大野シニア・リサーチ・アドバイザーは、伝統的な開発パートナーと新興開発パートナーの間で知識共創を促進する上での主要な推進要因と障壁について、パネリストに意見を求めました。また、単なる知識共有を超えた知識共創を促進するには、三角協力がどのような役割を果たせるのかについても考察を促しました。

写真:JICA緒方研究所の亀井温子副所長

JICA緒方研究所の亀井温子副所長

写真:JICA緒方研究所の大野泉シニア・リサーチ・アドバイザー(政策研究大学院大学名誉教授)

JICA緒方研究所の大野泉シニア・リサーチ・アドバイザー(政策研究大学院大学名誉教授)

効果的な知識共創を支えるための信頼、開発成果、パートナーシップ

タイからオンラインで参加したタマサート大学政治学部のシリポン・ワチャワルク教授は、開発は最終的には「地域に根差した課題」であり、知識共創は受益国の開発に貢献するものでなければならないと述べました。また、協力を妨げる障壁として、伝統的ドナーと新興ドナーの間に存在する技術的・手法的な違いと、相互の信頼の不足という2点を挙げました。また、どちらか一方のアプローチが優れていると見なすのではなく、それぞれの違いを認識し、理解し、尊重することが重要だと指摘しました。ポリシー・ノートにおいても、信頼を築く基盤としての「多様性の尊重」をもっと明確に打ち出すべきだと提言しました。また、ポリシー・ノートが強調している人材育成の強化や、ポッドキャストや動画などのデジタル・プラットフォームを活用した連携拡大の重要性にも言及しました。

米崎紀夫JICA 中南米部三角協力ユニットアドバイザー/日本メキシコパートナーシッププログラム強化プロジェクトチーフアドバイザーは、ポリシー・ノートを評価しつつも成果やインパクトにより焦点を当てるべきだと指摘し、知識共創は知識を生み出すことだけでなく、それがどのように実践され、社会的成果につながるかに重点を置くべきだと述べました。さらに、中南米地域における南南協力や三角協力の豊富な経験を踏まえ、共創された知識を地域あるいは世界の公共財として位置付けるとともに、その価値や有効性を実証する評価の枠組みを一層充実させる必要があると訴えました。

JICA緒方研究所の佐藤仁 客員研究員(東京大学東洋文化研究所所長/教授)は、「相互かつ対等な学び」が実際には何を意味するのかという問いを投げかけました。信頼に基づく政治的関係こそが知識共創を可能にする最も基本的な要素であると指摘しつつ、その一方で、学びを既存の開発経験や実績を中心に置くと、豊富な経験を蓄積してきた日本が主導的な立場になりやすく、真に対等な学びの実現は難しくなると論じました。そこで、各国が協力して新たな開発課題を特定し、まだ答えが見つかっていない課題や未知の領域を共に探究していくアプローチを提案しました。

オンラインで参加した韓国開発研究院国際開発協力センターの金政昱所長は、効果的な知識共創の実現には、適切なパートナーの選定、共通の優先課題への合意形成、そして協力を実現するための効果的な仕組みづくりが必要だと述べました。こうしたプロセスを進めるためには、十分な資源、知識、人材、政治的リーダーシップが不可欠であり、共創された知識を実践的な成果へと結び付けるためには、関係者間の合意形成も重要と強調。これらの要素を今後のポリシー・ノートでより明確に示すべきだと結論づけました。

写真:タマサート大学政治学部のシリポン・ワチャワルク教授

タマサート大学政治学部のシリポン・ワチャワルク教授

写真:米崎紀夫JICA 中南米部三角協力ユニットアドバイザー/日本メキシコパートナーシッププログラム強化プロジェクトチーフアドバイザー

米崎紀夫JICA 中南米部三角協力ユニットアドバイザー/日本メキシコパートナーシッププログラム強化プロジェクトチーフアドバイザー

写真:JICA緒方研究所の佐藤仁客員研究員(東京大学東洋文化研究所所長/教授)

JICA緒方研究所の佐藤仁客員研究員(東京大学東洋文化研究所所長/教授)

写真:韓国開発研究院国際開発協力センターの金政昱所長

韓国開発研究院国際開発協力センターの金政昱所長

実践からの教訓:知識共創と三角協力のさらなる推進に向けて

大野シニア・リサーチ・アドバイザーは、知識共創や三角協力の実践に議論の焦点を移し、そこから得られた教訓について意見を求めました。

ワチャワルク教授は、日本、タイ、ASEANが関与する三角協力の事例研究を踏まえ、信頼構築、オーナーシップの強化、さらに受益国の文脈に即した知識の適用には、十分な対話が不可欠だと述べました。また、三角協力が地域統合の促進に貢献している点にも言及し、地域共通の基準づくりといった三角協力の強みをさらに積極的に発信すべきだと提言しました。

中南米の視点に立ち、米崎アドバイザーは従来型の三角協力から「サーキュラー協力(Circular Cooperation)」への進化について説明。これは、状況に応じて各国が知識提供国、受益国、あるいは調整役として柔軟に役割を担う協力体制を指しています。さらに、日本はこれまでのように知識や経験を提供する側だけでなく、学ぶ側としての姿勢をより重視し、平和構築や高齢化対策といった分野におけるパートナー国の知見から積極的に学ぶべきだと主張しました。

佐藤客員研究員は、開発協力は成功事例だけでなく失敗事例からも学ぶべきだと主張しました。そして、日本の比較優位として問題が深刻化する前に対応することを目指す「予防的開発(Pre-emptive Development)」を挙げつつ、さらに危機対応に関するパートナー国の経験から学ぶことも重要だと強調しました。

金所長は、実施を通じた知識ギャップの解消、文脈に配慮した評価手法の導入、そして新たな課題に対応できるよう知識パートナーシップを柔軟に適応させていく必要性を強調。さらに、人工知能(Artificial Intelligence: AI)が今後の評価手法の強化に貢献する可能性があるとの見解を示しました。

その後、開発協力の未来、知識共創、そして変化しつつある新興開発パートナーの役割について活発な議論が行われ、全体を通して、パネリストたちは効果的な協力の基盤として、信頼、相互尊重、そして長期的なパートナーシップの重要性を改めて強調しました。また、制度的能力の強化、相互学習の促進、そして新興開発パートナーと伝統的ドナーが対等な立場でそれぞれの知識と経験を共有できるプラットフォームの構築が必要という認識を共有しました。

本フォーラムの動画は以下のリンクよりご覧いただけます。

YouTube

動画: 【セミナー】新興開発パートナーと拓く新たな協力-知識共有から知識共創への転換-(ナレッジフォーラム)

【セミナー】新興開発パートナーと拓く新たな協力-知識共有から知識共創への転換-(ナレッジフォーラム)

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