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地域間ビジネス・ネットワーキングを再考する―貝塚研究員がRegional Studies Association年次大会でABEイニシアティブからの示唆を発表

2026.08.17

JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の貝塚ジェームズ 研究員は、2026年6月15~18日にかけてスウェーデン・ヨーテボリで開催されたRegional Studies Association年次大会 の分科会「Skills and Education for a Regional Workforce 」で発表を行いました。

同発表では、「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ (ABEイニシアティブ)」が、日本とアフリカ諸国の間の地域間ビジネス・ネットワーキングにどのように貢献してきたかを検証。ケニアとルワンダで実施したABEイニシアティブ修了生、JICA職員、日本企業関係者への約30件のインタビュー調査に基づき、ABEイニシアティブの成果と課題について多角的な分析が示されました。

写真:分科会で発表したJICA緒方研究所の貝塚ジェームズ研究員

分科会で発表したJICA緒方研究所の貝塚ジェームズ研究員

ABEイニシアティブは、人材育成と日本・アフリカ関係の強化を目的として開始され、これまでにアフリカ54ヵ国から2,000人以上が参加しました。参加者は、日本の大学院への留学に加え、日本企業でのインターンシップの機会が提供されています。貝塚研究員は、このABEイニシアティブが長期的な関係構築のための重要な基盤を築いてきた一方、ビジネス・ネットワークの形成に対する直接的な効果は、現時点では比較的限定的だと指摘しました。

そして重要な発見の一つとして、ABEイニシアティブの成果を左右するのは、地域や国ごとの状況よりも、むしろ組織的な要因が大きいことを挙げました。具体的には、企業の種類、ABEイニシアティブ参加者の組織内での職位、そして関係者間の期待の一致度が大きな影響を及ぼしていたことを明らかにしました。企業の種類については、中小企業が地域間ネットワーキングの可能性を最も有している一方で、資金や組織能力に制約を抱える場合が少なくありません。他方、大企業で勤務するABEイニシアティブ修了生は裁量権が限られる傾向にあります。組織内の職位も重要であり、より上位の役職にある人ほど、新たなプロジェクトを立ち上げたり、人的ネットワークを活用して日本企業の関心を引き付けたりすることが容易なことが分かりました。

その上で、「タイミング」が構造的な課題として浮かび上がったことを共有しました。ABEイニシアティブ修了生は、帰国直後には日本との強い結び付きがあるものの、それを十分に活用できる意思決定権をまだ持っていない場合が多く見られます。その後、キャリアの進展に伴って影響力が高まる一方、日本とのつながりは徐々に弱まる傾向があります。その結果、ビジネス・ネットワーク形成に最適な機会を逃してしまうことが少なくないと貝塚研究員は指摘しました。

こうした制約がある一方で、貝塚研究員はABEイニシアティブの潜在力を示すケーススタディーを提示。雷による被害が頻発するルワンダで、ABEイニシアティブ修了生と日本企業の協力により、JICAの支援を受けながら雷サージ保護技術の導入が実現 した事例を挙げ、制度的支援を通じた橋渡しの好例として紹介しました。また、ケニアなどでの事例でも、専門知識、制度的支援、そしてソーシャル・キャピタル(人的ネットワーク)が適切に組み合わされることで、構造的な障壁を克服できる可能性を示しました。

発表の締めくくりとして貝塚研究員は、認知度の低さ、資金面の制約、制度的な障壁などの課題は依然として存在するものの、成功事例から、必要な条件が整えば効果的な地域間ビジネス・ネットワーキングが十分に実現可能だと述べました。さらに、ABEイニシアティブのような研修・奨学金プログラムは、単なる人材育成の手段としてだけでなく、国境を越えた経済関係を形成する組織や人々の立場・役割に働きかける介入として捉えるべきだと指摘しました。

参加者からは、日本がABEイニシアティブ参加者から得られる学び、「後発性の利益(advantage of backwardness)」が開発に果たす役割、ルワンダのデジタル・プラットフォームとの関連、人と人との交流がもたらす影響などについて質問が寄せられ、活発な議論が行われました。

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