JICA緒方研究所

研究活動紹介

強制移住をめぐる人道アクションの進展に関する研究

災害、自然環境の悪化、紛争、不安定化、貧困そして新型コロナウイルス感染症の世界的流行に起因する近年の人道危機により、多くの人々が強制的に住む場所からの移動を迫られています。強制移住により生じる人々のニーズと不安は、さまざまな地域の文脈を超え、危機に対応する人道アクションの方向性と内容を決定づけます。他方、人々の移動とそれに関連する人道アクションそれ自体は、地域社会とグローバルなレベルでの交流をこれまでと異なる形に変化させ得ると考えられます。強制移住を強いられた人の状況、また強制移住させられた人への支援や保護はどのように進展し、ニーズを満たすことができるのかは、全ての社会において根源的な人道および開発課題であります。

強制移住にはさまざまに異なる状況があります。短距離の国内移動、長距離の国際移動、短期的、長期的あるいは恒久的な強制移動、計画されたあるいは計画されてない場所への移動を含み、さまざまなアクターから多様な支援を受けます。強制移住者の具体的な経験からは、人道に携わる多様なアクターとの関わり合いと相互作用を通じて、強制移住における不確実性と不安性を共に乗り越えることが裏付けられています。人道アクターは、組織の制度的な位置づけ、権限や能力がそれぞれ異なるものの、短期的には人々の生命を救い、苦しみを軽減すること、長期的には人々の尊厳を守り回復を支援し、強制移住に対して持続的な解決を果たすことに貢献するという、共通の目標を有しています。危機が広がるにつれて、持続し、進展する強制移住者の懸念に合わせ、異なる人道支援者の責任も同様に、この変化に適応し対処することが求められます。したがって、本研究プロジェクトは、多様な強制移住の状況下で絶えず変化するさまざまな人々のニーズに対応するための、人道アクターの進展する役割に焦点を置いています。

本研究プロジェクトは、近年の強制移住の状況に対して行われた人道アクションについて、以下のような問いを含め探求するものです。
(1)強制移住者に対して、既存の、必要とされていた支援の種類と方法はどのように変化したのか。
(2)既存の支援に十分なアクセスが難しい強制移住者の状況に対してはどのように認識し対応しているか。

人道アクションと強制移住が交わることは、強制移住させられた人とその人のニーズが、人道支援と全ての人道支援システムの中核をなすものであるという重要な意味を生み出します。そのため、本研究プロジェクトは「人道支援者は強制移動者に支援を提供するため、常に進展する役割にどのように対応してきたか?」という問いに特化しています。この全体的なアプローチにより、強制移住を経験したさまざまなグループへの人道アクションの変化を特定し、説明することに焦点を置いています。

本研究プロジェクトでは、強制移住における子ども、女性、障害者、高齢者、移住労働者という5つのケーススタディーを通じて、強制移住者への人道アクションの進展を探求します。各ケーススタディーは、特定の強制移住の状況や、特定の強制移住グループへの人道アクションの進展を紹介するものです。

他の開発や人間の安全保障に関する研究と同様に、本強制移住研究はアドボカシー、政策そして政策に関連しています。本研究プロジェクトは、国際移住レビューフォーラム(International Migration Review Forum)や、 国連移住ネットワーク(UN Migration Network)の取り組みを通じて提示された移民および難民に関するグローバル・コンパクト(Global Compacts on migration and refugees)、また、国内避難民に関するハイレベル・パネル(High-Level Panel on Internal Displacement)や、最近の 国連事務総長による Action Agenda on displacementなどを通じて明示された、現在の世界的に認められた強制移動に関する政策の優先順位に即しています。さらに、パリ協定(Paris Agreement)採択後の気候変動交渉において人間の移動に注目が集まっていることや、ワルシャワ国際メカニズム(Warsaw International Mechanism)において移住に関するタスクフォース(Task Force on Displacement)が設立されたことなど、他の政策分野における近年の進展とも合致しています。

本研究プロジェクトは、セクターを超え世界的な議論の中心となっているこの分野の学術的で政策的な取り組みに寄与すると共に、強制移住を強いられた多様なグループを支援する人道アクターの活動への具体的なサポートと情報の提供を試みるものです。本研究プロジェクトの成果は、強制移住という現象についての理解を深め、この重大な問題に対する具体的でより効果的な対応に貢献することを目指しています。

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