世界的パラダイムシフト下でのアジアとアフリカの連携について日本アフラシア学会で議論
2025.12.22
2025年10月11日、日本アフラシア学会(Japan Society for Afrasian Studies: JSAS)の年次大会が広島大学で開催されました。今年はテーマに「Enhancing Asia-Africa Partnerships in the Global Paradigm Shift」が掲げられ、世界で進む地政学的・経済的な変化に対応するため、アフリカとアジアの地域間連携の重要性が高まっていると言えます。
同大会には、アジアとアフリカの連携強化を目的として、アフリカの研究者や開発実務者が参加しました。JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)からは、アフリカとアジアを結ぶ地域フレームワーク「アフラシア」の概念を提唱する峯陽一 研究所長がパネルディスカッションに参加したほか、同研究所の貝塚ジェームズ 研究員も発表を行いました。
同大会はパネルディスカッション「Peace and Conflict in Afrasia: Seventy Years after the Bandung Conference」にて幕を開け、アジアとアフリカの連携の歴史的側面や現代的側面が検討されました。
まず、立命館大学のマスワナ・ジャンクロード教授が、1955年以降のアジア・アフリカ間の経済協力を振り返りました。「非植民地化」「平和」「相互経済発展」というバンドン会議の原則が、日本の「アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development: TICAD)」(1993年)、中国の「中国・アフリカ協力フォーラム(Forum on China-Africa Cooperation: FOCAC)」(2000年)、インドの「インド・アフリカフォーラムサミット(India–Africa Forum Summit: IAFS)」(2008年)、インドネシアの「インドネシア・アフリカ・フォーラム(Indonesia-Africa Forum: IAF)」(2018年)という4つの主要な協力フレームワークへと発展した経緯が説明されました。それ以降、アジア・アフリカ間の貿易は大幅に拡大したものの、依然として構造的な不均衡があることを指摘。ネットワーク分析と計量経済分析により、中国の支配的な影響力と持続的な非対称性が明らかになっていることから、マスワナ教授は新たな「バンドン2.0」の必要性を訴えました。
次に、広島大学在学中のピーター・オケロ氏は、日本、インド、中国といったアジア諸国が南スーダンの平和構築にどのように貢献してきたか考察。内戦、強制移住、飢餓、経済破綻など、南スーダンで現在も進む危機について説明し、バンドン会議の「協力と連帯」の原則がアジアの関与にどう反映されているかを示しました。こうしたアジア諸国による取り組みは、構造的・政治的課題が絶えず存在する中で、アフリカにおけるアジア諸国の役割が変化してきたことを示しているとしました。
こうした発表に応え、峯研究所長は出席したJICA留学生たちに感謝を示しながら、開発と平和の課題を一体化させる重要性を強調し、たとえ小規模であってもアフリカとアジアをつなぐ集まりは将来の世界の秩序を変える力を持ち得ることを指摘しました。また、アフリカによるイニシアティブに応じて、アジア諸国の活動を連携させる可能性についても言及しました。
パネルディスカッションに参加したJICA緒方研究所の峯陽一研究所長
平和構築と地域協力に関する議論を踏まえ、同大会では、アジアとアフリカの結束を強化する上で教育とビジネスが果たす役割についてもテーマとなりました。
貝塚研究員の発表では、「日本のビジネス慣行への適応」という観点で日本企業がABEイニシアティブ(正式名称:アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(JICA留学プログラム))をどのように評価しているかを検討し、それが日本とアフリカの相互利益にどう寄与するかを考察しました。その中でも最も有益なケースは、ABEイニシアティブ参加者が「文化の翻訳者」や「道筋の探索者」として、日本のビジネス慣行を現地の労働環境に導入・ローカライズしたり、関心のある日本企業のためにビジネスチャンスを見極めたりすることだと主張しました。そして、ABEイニシアティブ参加者は日本と母国の双方に関する深い知識を有する人材であり、その独自のスキルと立場を最大限に生かすことが重要だと強調しました。
続いて行われた名古屋大学のクリスチャン・オチア准教授と坂本龍一助教によるパネルディスカッションでは、日本企業が実際にアフリカでビジネスを推進するための方策について議論されました。アフリカへの投資をためらわせる固定観念を克服するために、アフリカと日本の文化交流を拡大し、アフリカのビジネス環境への理解を促進する必要性などについて意見が交わされました。
発表したJICA緒方研究所の貝塚ジェームズ研究員
貝塚研究員の発表で紹介された研究プロジェクトについては、以下の関連リンクからご覧になれます。
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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