実施中プロジェクト

東アジアにおける人間の安全保障とエンパワメントの実践

人間の安全保障の概念は1994年にUNDP(国連開発計画)の『人間開発報告書』により紹介されて以降、2003年の人間の安全保障委員会最終報告書、そして2005年および2012年の国連総会決議など、さまざまな議論を経て共通理解が形成されてきました。一方で、概念をどのように実践に移していくのかは、今も重要な課題となっています。

本研究プロジェクトでは、前身の研究プロジェクト「東アジアにおける人間の安全保障の実践」に引き続き、人間の安全保障の概念を、「上からの保護と下からのエンパワメントを組み合わせ、人々が欠乏と恐怖から逃れて尊厳を持って生きること」と整理します。この共通理解に基づく前身の研究では、「国家からの保護」の実情と課題の多くが明らかになりました。そこで、本研究では、東南アジア地域と日本における、脆弱な人々のエンパワメントに焦点を当てます。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を受け、人間の安全保障のあらゆる分野で継続的にリスクが悪化する中、本研究プロジェクトは脆弱な人々やグループに対しての保護とエンパワメントに関する理解の促進に貢献していきます。現在の文脈に合うよう、本研究プロジェクトは2段階の連続的な分析を経て進めていきます。第1段階では、東南アジアの対象国の新型コロナウイルス感染症の状況を概説し、この危機に際して特定の脆弱なグループが直面するリスク悪化とその影響を、観察可能な保護とエンパワメントの戦略とともに明らかにします。第2段階では、人間の安全保障におけるエンパワメントの実践的な概念について、人間の安全保障のベストプラクティスだけでなく、現下の世界的な感染拡大において脆弱な人々のエンパワメントを阻む要因、または促進する要因に着目して分析を行います。

本研究プロジェクトでは、アジア地域から8人の研究者を招き、タイ、ベトナム、インドネシア、東ティモール、ミャンマー、フィリピンにおける脆弱な人口やグループの詳細な事例研究を通じて、高齢化社会や経済、食料、強制移住、ジェンダー、健康、紛争など多様な人間の安全保障上の問題について検討していきます。東アジア各国を総合的に包括しながら、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の観点から脆弱な人々に対する新型コロナウイルス感染症の甚大な影響に着目し、政策提案のための実践的な教訓を導き出します。

また、これらの研究を補完するため、日本の4つの県において、新型コロナウイルス感染症拡大における人々の情報へのアクセスやその利用に関して、短期調査を行います。この調査は、エンパワメントに関連する情報の共有や、それらにアクセスする人々の行動や能力について、各国での分析を進める上で参考とするものです。

これらの研究成果は、東南アジアの研究者と協働し、JICA緒方研究所のワーキングペーパーやレポート、書籍などでまとめる予定です。

キーワード:人間の安全保障、エンパワメント、東南アジア、新型コロナウイルス感染症

研究領域
平和構築と人道支援
研究期間
2019年12月06日 から 2024年03月31日
主査
石川 幸子峯 陽一
JICA緒方研究所所属の研究者
武藤 亜子リセット・ロビレス竹内 海人大星 翔太槌谷 恒孝
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #人間の安全保障

研究成果(出版物)

研究結果

研究進捗

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