大阪・関西万博テーマウィークイベント「JICAと考える SDGsと途上国のいま、そしてこの先」開催
2025.11.13
2025年10月5日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、大阪・関西万博のテーマウィーク「SDGs+Beyond いのち輝く未来社会」イベントとして、「JICAと考える SDGsと途上国のいま、そしてこの先」を開催しました。
JICA緒方研究所の佐藤一朗 上席研究員が司会を務め、まず慶應義塾大学大学院の蟹江憲史教授が「SDGsの意義と課題 そして2030年の先 いのち輝く未来社会に向けて」と題した基調講演を行いました。蟹江教授は、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)は経済(カネ)・環境(地球)・社会(ヒト)の3つの側面から持続可能な成長を目指すものだと解説。期限の2030年までに達成が予想されているSDGsのターゲットは約35%に過ぎないものの、達成に必要な資金ギャップ3.9兆ドルを大きなビジネスチャンスと捉えることもできるとしました。ガバナンス、経済と資金、科学技術といったテコとなる条件を組み合わせることで変革が進んでいくSカーブモデル理論を紹介し、すでに人々や企業の行動の変化は始まっていると言及。2030年以降のビジョンに向けて始動したBeyond SDGsプロジェクトなどを紹介しながら、SDGs達成にはそれぞれの文化や地域に根差した取り組みが重要なエッセンスだと強調し、進める道は狭いけれども希望はあるとの考えを示しました。
基調講演を行った慶應義塾大学の蟹江憲史教授
続いて、JICA緒方研究所の亀井温子 副所長がモデレーターを務めた「SDGsを国や地域のアクションへ」と題したディスカッションが行われました。
まず、JICA緒方研究所の遠藤慶 主任研究員が、ローカル化が進む日本のSDGsの取り組みについて発表しました。日本では2025年時点で216の自治体が日本独自の制度である「SDGs未来都市計画」を制定し、SDGsと地方創生を結びつけた取り組みを進めているという特徴を挙げました。日本でのSDGsの認知度は91.6%(2023年時点)と高く、啓発面では国、地方自治体、企業、メディア、教育機関、市民が一丸となったローカル化が有効であること、実施面では各自治体がそれぞれ優先ゴールを設定し、関連する事業の立案と指標を設定することが有効だと分析。各自治体の優先ゴールの偏りやSDGsの進捗をモニタリングする手法の開発を課題とし、SDGsの新たな指標フレームワークを提唱するJICA緒方研究所での研究プロジェクト も紹介しました。
日本のSDGsの取り組みについて発表したJICA緒方研究所の遠藤慶主任研究員
次に、愛知県豊田市未来都市推進課の泉川雅子副主幹が、自動車産業が盛んな同市による先進的なSDGsの取り組みを発表。SDGs未来都市選定後も、約300の団体が登録する「とよたSDGsパートナー」登録制度や企業の取り組みを評価する「SDGs認証制度」といった独自の取り組みや、官民連携で幅広いステークホルダーを巻き込む仕組みなどを紹介しました。また、SDGsの達成状況を評価する取り組みとして、国連地域開発センターと共同開発した「自治体SDGs達成度評価指標」の策定や、「自発的自治体レビュー(Voluntary Local Review: VLR) 」の発表のほか、各部署の職員がSDGsを意識して政策に組み込んでいく工夫も示しました。泉川氏は、「地方自治体が主体となり、ボトムアップで世界を変えられるという強い使命感を持って挑戦していく」と述べました。
愛知県豊田市の取り組みを発表した未来都市推進課の泉川雅子副主幹
続いて、3人のJICA留学生が母国のSDGsの現状を報告し、パネリスト間で意見交換が行われました。
同志社大学に在籍するラオス財務省のモンペン・セシスラット氏は、「ラオスではSDGsが国レベルの開発計画に組み込まれているものの、地方自治体の取り組みはまだ弱い」と説明し、どう取り組みを進めるべきか質問。遠藤主任研究員は、「日本でも、まずは中央政府が指針を示し、地方自治体のSDGs未来都市計画の枠組みができてSDGs浸透につながった。また、取り組みが進んでいる地方自治体から知見や人材を共有するような地方自治体間の横のつながりも重要」と応じました。
大阪公立大学に在籍するウガンダで経済学を研究するリチャード・センパラ氏は、「ウガンダでは、コロナ禍に音楽や演劇などを使って若者向けにワクチン啓発活動を行った。日本でも音楽やゲームを活用して、効果的なSDGs啓発ができるのではないか」と提案。泉川氏は、「とよたSDGsマスター」と呼ばれる豊田市が開発したカードゲームなどにふれ、学校現場で子どもがゲームを通じて楽しみながら学ぶなど、地域の特色を取り入れた取り組みに賛同しました。
同志社大学に在籍するモザンビークのデニルソン・ジョゼ氏は、起業家として、学生団体AIESECでSDGsに携わった経験を踏まえ、同国が官民パートナーシップと技術革新の活用に重点を置いていることを紹介し、日本で官民連携がうまく進んでいる理由を問いかけました。泉川氏は「豊田市では、官民の異なるステークホルダー間の共通言語として、SDGsが機能しているからではないか。行政側が強みと弱みを公表することで、企業が課題に気づき、未達成の課題をビジネスチャンスと捉えて新たな提案が生まれることもある」と答えました。
モデレーターを務めたJICA緒方研究所の亀井温子副所長
ラオスからのJICA留学生モンペン・セシスラット氏
ウガンダからのJICA留学生リチャード・センパラ氏
モザンビークからのJICA留学生デニルソン・ジョゼ氏
ディスカッションを総括した蟹江教授は、「持続可能な開発という視点から見れば、全ての国が開発途上国。お互いに学び合う、そうした地道なつながりが分断を超えて大きな力になっていく」とまとめました。
閉会のあいさつに立ったJICA緒方研究所の峯陽一 研究所長は、「実は問題は私たちの目の前にあるからこそ、国ごとに比較するのではなく、地域ごとに可視化してボトムアップで課題に取り組まなければならない」と指摘。書籍『SDGs and Japan: Human Security Indicators for Leaving No One Behind』 『SDGs and Local Communities: How to Create Human Security Indicators in Your Town !』 などで示された宮城指標や愛知指標といった日本の地方自治体のSDGs指標データを紹介し、日本の地域づくりと開発途上国の課題解決を結びつける取り組みの重要性を強調しました。さらに、JICA緒方研究所においても現在、世界中の開発途上国が直面する人間の安全保障やSDGsの課題を可視化するための新しい指標の開発を進めていることを紹介しました。最後に、「一人一人の尊厳と権利が保障される世界をつくっていけるよう、今日をその一歩にしたい」と述べ、イベントを締めくくりました。
閉会のあいさつに立ったJICA緒方研究所の峯陽一研究所長
このイベントの動画は以下からご覧になれます。
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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