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国際開発学会春季大会でJICA緒方研究所の研究成果を発表(その2:ラウンドテーブル)

2026.07.24

2026年6月27日に、国際開発学会第27回春季大会 が明治学院大学で開催されました。JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、新興開発パートナーとの知識共創、ODAレピュテーションの実証、インフラ開発とインパクト評価といったテーマでラウンドテーブルを開催しました。

【ラウンドテーブル】「包摂的な国際開発アーキテクチャー形成に向けた新興開発パートナーとの知識共創の可能性」

「新興国との知識共創」研究会 は、同研究会の成果を発信し、広く議論を喚起するため、ラウンドテーブルを開催しました。阿久津謙太郎 上席研究員は、新興開発パートナーによる南南協力の重要性の高まりと、非拘束で自発的かつ多様性を尊重する新しい国際開発アーキテクチャー(開発協力の全体的枠組み)の必要性を指摘しました。津田塾大学の鳴海ゆきの氏は、中南米地域における知識循環の実践を分析し、多様なアクターの間で知識や経験を相互に共有し、適応・展開する「サーキュラー協力」を知識共創の分析視角として捉える意義とJICAへの示唆を提示しました。遠藤慶 主任研究員(兼ネパール事務所次長)は、インドネシア・タイにおける新興開発パートナーの現状や援助哲学、課題などを包括的に紹介しつつ、日本がそれら新興開発パートナーとどのように協働を推進し得るかについて論じました。

上記の報告に対して、埼玉大学の近藤久洋教授は、知識共創が全ての新興開発パートナーに適合するとは限らないといった点を指摘しつつも、被援助国から援助国に転換した経験を有し、経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development: OECD)開発援助委員会(Development Assistance Committee: DAC)メンバーでもある日本が多様な開発経験をつなぐ媒介者となり得るとコメントしました。また、佐藤仁 客員研究員(東京大学教授)は、新興国内のODA支持基盤、援助受入国側の視点、援助機関の行政的制約や専門性形成の課題、開発経験の負の側面の共有などを今後の研究課題として指摘しました。

質疑では、ODA枠外での資金・政策枠組み(中銀預入金、通貨スワップなど)の重要性、国益と現場の声のバランス、ドナー多様化による受入国負担などが議論されました。最後に、大野泉 シニア・リサーチ・アドバイザー(政策研究大学院大学名誉教授)が、国際開発アーキテクチャーの多様化の中で日本の立ち位置を再考し、理論と実践知を往復させつつ負の経験も含めた知見共有を行うことが重要であるとコメントしました。

写真:大野泉シニア・リサーチ・アドバイザー(政策研究大学院大学名誉教授)

大野泉シニア・リサーチ・アドバイザー(政策研究大学院大学名誉教授)

写真:近藤久洋教授(埼玉大学)

近藤久洋教授(埼玉大学)

写真:佐藤仁客員研究員(東京大学教授)

佐藤仁客員研究員(東京大学教授)

【ラウンドテーブル】「ODAレピュテーションの実証研究:信頼構築に対するODAの効果可視化の試み」

長辻貴之 研究員が企画者となり、JICA緒方研究所が実施している研究プロジェクト「ODAレピュテーションの実証研究:信頼構築に対するODAの効果可視化の試み 」をテーマにラウンドテーブルを開催しました。

はじめに、本研究プロジェクトの主査である折田朋美 主席研究員がプロジェクト全体像を紹介し、長辻研究員がオンライン・サーベイの速報値データに基づきODA理解度とODAの評判の関係についての分析結果を発表しました。続けて、東京大学の阪本拓人教授からニュースメディアを通じた開発協力レピュテーションの測定に関する試行的分析が紹介され、最後に長辻研究員と駒澤大学の鈴木淳平講師が ODA供与額と政権支持率に関するオンライン・サーベイ実験に基づく分析を報告しました。本ラウンドテーブルでは、ODAの理解度が与える効果、ODA供与額の変化と支持率の関係などの発見についての説明もありました。

ディスカッサントとして、JICA企画部・室谷龍太郎審議役兼次長と大石晃史 研究員がそれぞれの専門的見地から、ODAのレピュテーションにつながるメカニズムを明確に示す重要性、被援助国からの評価と他ドナーからの評価の比較における妥当性、感情測定のスケールの理解などについてコメントや質問があり、 対面・オンラインあわせて約60人の参加者とともに活発な意見交換が行われました。

写真:(スクリーン)鈴木淳平講師、(前列左から)室谷龍太郎企画部審議役兼次長、阪本拓人教授、折田朋美主席研究員、長辻貴之研究員(肩書は開催当時)

(スクリーン)鈴木淳平講師、(前列左から)室谷龍太郎企画部審議役兼次長、阪本拓人教授、折田朋美主席研究員、長辻貴之研究員(肩書は開催当時)

【ラウンドテーブル】「グローバル化時代のインフラ開発とインパクト評価」

本ラウンドテーブルは、拓殖大学の徳永達己教授の司会・問題提起のもと、グローバル化の進展や開発課題の複雑化が進む中で、インフラ開発の効果をどのように評価し、事業形成や政策立案へ還元していくべきかを議論しました。

山田英嗣 主任研究員は、交通インフラ分野のインパクト評価研究の最新動向を概観した上で、JICAの運輸交通分野事業842件の事前評価表と、国際的なインパクト評価データベース(3ie)に収蔵の487本の論文を対象に、自然言語処理や機械学習を活用した比較分析の結果を紹介しました。実務と研究の間には着眼点や語彙に差異があるものの目的や介入手法が一定程度共通する事業・論文が数多くあるということが示されました。また、研究が多く集中していますが(JICA)事業での取り組みが薄い分野やその逆の分野があることも定量的に示され、前者の分野では既存エビデンスを活用した事業形成機会があること、後者では開発事業からエビデンスを形成する余地が大きいことなどが議論されました。

根岸精一 上席研究員は、本ラウンドテーブルの討論者として登壇し、JICAの徳織智美国際協力専門員による「地域統合プロセスが物理的・制度的連結性の進展に与える影響」に関する発表に対し、地政学的な緊張やパンデミック対応を踏まえた非関税障壁の新たな捉え方と、東部アフリカ共同体の北部回廊と大メコン圏の南部経済回廊のそれぞれの発展の形態に基づく支援の在り方について議論しました。加えて、拓殖大学の武田晋一准教授による「住民参加型インフラ整備(Labour Based Technology: LBT)における組織化と継続の諸条件」に関する発表に対しては、JICAが2017年に出版した地方創生リソースハンドブック で例示された住民参加の在り方を引用し、日本における広域連合の仕組みやホンジュラスでのJICA支援での実践のケースを紹介した上で、技術力の維持を含めた持続的なLBTの在るべき姿について議論しました。

写真:山田英嗣主任研究員 

山田英嗣主任研究員 

写真: 根岸精一上席研究員

根岸精一上席研究員

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