JICA緒方研究所

研究活動紹介

持続的な平和に向けた国際協力の再検討:状況適応型の平和構築とは何か

【背景および目的】
近年、暴力的な武力紛争が長期化および複雑化して再発を繰り返しています。これに伴い、紛争解決や平和構築のための新たな国際協力の在り方や、その課題および限界を検証することが急務となっています。このような背景のもと、国連は「平和の持続」アジェンダを立ち上げ、紛争の悪循環に対して開発と人道および包摂的な平和構築活動が協働し、総合的かつ長期的にかかわるという新しいアプローチ/考え方を提示しました。持続的な平和に関する安保理決議2282(2016年)および総会決議A/70/26(2016年)は、このアプローチ/考え方をさらに補強するものです。しかし、未だ紛争影響下という複雑な状況における国際レベル、国家レベル、地方レベルの関係者間の相互作用の多様さや特徴が明らかになっていないのと同時に、持続的な平和の実践は非常に限られています。

そこでJICA緒方研究所では、ますます長期化・複雑化・再発する紛争事例を取り上げ、平和のための新たな国際協力の在り方を検討するとともに、そうした協力がどのように持続的な平和へのプロセスを助長ないしは妨げているかを検証します。いくつかの地域で発生した多層的で多様な紛争事例を取り上げ、平和へのさまざまな道筋を精査します。本研究により、近年の紛争の動向を踏まえて提唱されているさまざまな平和構築のアプローチ(例:状況適応型平和構築)に貢献するとともに、持続的な平和やSDGsアジェンダの実践の助けとなることをも目指します。

【変化する紛争の動向】
2010年以来、武装紛争の動向は大きく変化しており、人道支援・開発・平和構築のアクターが危機を効果的に回避し対処するための能力を効果的に発揮できていません。近年のデータによると、国内での暴力的な武力紛争、難民および国内避難民の数と同様に、民間人の犠牲者、都市部での戦闘に関連した死者の数は、いずれも増加しています。さらに、近年の動向として、暴力的な武力紛争が長期化・複雑化して再発を繰り返しており、その性質が変化しているとされています。この背景を受け、多国間・二国間援助機関などの国際的な平和構築アクターや、非政府、国内、地域の平和構築アクターは、今まさに起こっている武力紛争にどのように対応し予防していくか、より正当で効果的な方法を模索しています。

【現在の平和構築の解釈についての認識】
「平和構築」は、これまで公共の場、また政策や学術的な言説において、さまざまな理解と見解のもとに提示されてきました。今日でも、平和構築は共通の定義がない曖昧な概念であり、学者と実務者の間でも認識が一致していません。これまで実践されてきた平和構築も、さまざまなアプローチや捉え方を包含してきました。持続的な平和に関する安保理決議(2016年)では、平和構築は暴力的な紛争の予防・終結・変容のため、紛争前、紛争中、紛争後に取られるすべてのアクションを含む、とされています。しかし、いまだに関わる全てのステークホルダーの解釈によって進化し続ける概念であり、さらなる研究が求められています。

【文脈に応じた状況適応型の平和構築アプローチ】
状況適応型の平和構築アプローチとは、平和プロセスを持続させるためには現地の主体が重要だとするノン・リニア(non-linear)平和構築モデルと同義です。これは、複雑性理論やレジリエンス、現地のオーナーシップといったコンセプトに基づいて生まれました。ノルウェー国際問題研究所(The Norwegian Institute of International Affairs: NUPI)の平和・紛争・開発研究グループ上級研究員を務めるセドリック・デ・コニング氏によると、状況適応型の平和構築は、紛争の影響を受けた現地のコミュニティーや人々を含む平和構築アクターが、実験・学習・適応を反復するプロセスを用いながら、平和を維持するための構造的なプロセスに積極的に関与する、複雑性に配慮されたアプローチです。適応的かつ文脈に応じたアプローチは、紛争の影響を受けた側のシステムが持つ自己組織化の能力を重視し、平和は地域の中から生まれ、現地の主体や文化、社会経済的な文脈を考慮に入れる必要があることを示しています。

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