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日本の産業開発と開発協力の経験に関する研究:翻訳的適応プロセスの分析

我が国は明治以降の近代化や戦後の経済発展過程において、欧米発の技術や知識を、自らのニーズに合わせて修正する「翻訳的適応」を通じて学習・内生化してきました。また、日本の産業政策の重要な特徴として、実体経済を重視する「中身志向」の発想にもとづき、産業構造や市場経済の担い手である産業人材、技術、企業の現場等への強い関心があげられます。JICAを含む日本が得意とする産業開発分野での開発協力の根底には、こうした経験や発想があると言われます。さらに、日本の開発協力は長年、相手国の主体性を尊重し、処方箋を押し付けず、共同作業を通じて選択肢を示す方法を目指してきました。こうした「寄り添い」型・「知識共創」型支援は、開発途上国において日本の経験の「翻訳的適応」と自立的な能力開発を支援する取組といえます。

しかし、こうした日本の開発協力の特徴が途上国政府や他ドナーに十分認識されているとは言い難い状況です。日本の開発経験が生かせるはずの産業開発分野においても、「枠組み志向」、もしくは先進国で形成されたベストプラクティスの直接的な採用を促す「規範型アプローチ」が主流となっています。

そこで本研究は、日本の産業発展や開発協力の経験の特徴を明らかにし、関心をもつ途上国の政策担当者・実務者や国際社会に対し、「翻訳的適応」のプロセスの分析に基づいて整理した形で伝えることを目指します。本研究では、①全体の方向性を定める産業政策策定、②工業化の基本的な手段であり、欧米型支援との相違が比較的顕著である産業人材育成、③カイゼンなどを通して企業の能力向上を目指す生産性向上の3分野に焦点を当てています。また、これら3分野での日本及び欧米諸国の開発協力が多く実施されている、東南アジア、サブサハラアフリカ、ラテンアメリカ地域を研究対象とします。中間成果物として英文報告書を出版し、その後英文・和文書籍の出版を目指します。

研究領域
開発協力戦略
研究期間
2019年07月24日 から 2025年03月31日
主査
大野 泉、 山田 実
JICA緒方研究所所属の研究者
天津 邦明、 細野 昭雄
開発課題
  • #日本の開発協力
  • #民間セクター開発

研究成果(出版物)

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